国立新美術館で『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』開催! トルコの芸術品はチューリップ祭

2019-03-02 18:00
  • 国立新美術館で3/20~5/20まで、『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』を開催。貴重な宝飾品、美術工芸品に触れるチャンスです。それにしてもトルコの芸術品にはチューリップのモチーフが多いような…? その理由を紐解きました。
  • うっとりため息♡ トルコの芸術品はチューリップ祭
    左右にスライドしてチェック
  • 『詩集表紙』18世紀前半 トプカプ宮殿博物館蔵
    『宝飾手鏡』16世紀末 トプカプ宮殿博物館蔵
    『儀式用カフタン』6世紀中期 トプカプ宮殿博物館蔵
    『タイル』6世紀後半 トプカプ宮殿博物館蔵
    『ターバン飾り』 17世紀 トプカプ宮殿博物館蔵
    『射手用指輪』 オスマン帝国 16〜17世紀 トプカプ宮殿博物館蔵

    『詩集表紙』 18世紀前半 トプカプ宮殿博物館蔵
    飾っておきたいくらい美しく精緻に描かれた詩集の表紙。詩集の表紙を拡大してみると、中央にはやっぱりチューリップが。「このチューリップの形は18世紀」とトルコ文化研究の第一人者・ヤマンラール水野美奈子さん。

    『宝飾手鏡』 16世紀末 トプカプ宮殿博物館蔵
    財力と彫金技術の高さがうかがわれる手鏡

    『儀式用カフタン』 6世紀中期 トプカプ宮殿博物館蔵
    大柄のチューリップが全体に施された民族衣装のカフタン。チューリップモチーフだけでなく、赤い色にも宗教的に特別な意味があるらしい。

    『タイル』 6世紀後半 トプカプ宮殿博物館蔵
    オスマン帝国らしい表現のハタイ(中国風の小花・草・蔓文様)。花をデザイン化するセンスが絶妙。

    『ターバン飾り』 17世紀 トプカプ宮殿博物館蔵
    オスマン帝国ではスルタン(統治者)は各種芸術の実践者でもあった。「大工仕事が得意なアブテュル・ハミト2 世に明治天皇は大工道具セットを献呈されました」と、国立新美術館学芸員の有木宏二さん。

    『射手用指輪』 オスマン帝国 16〜17世紀 トプカプ宮殿博物館蔵

  • トルコではチューリップにどんな意味が?

  • 上の華やかな品々は、トルコ共和国の前身・オスマン帝国の皇帝や宮殿の人々の所持品や建物のタイル。すんごく豪華絢爛でキュートなデザイン。特にチューリップモチーフが多くない?

    「チューリップは帝国領内に自生する花で、15世紀ごろから栽培が盛んになり、16世紀半ば以降は品種改良もずいぶん行われました。チューリップは、花として好かれていただけでなく、国家的・宗教的にも重要な花だったのです」と、教えてくれたのは元龍谷大学教授でトルコ文化研究の第一人者・ヤマンラール水野美奈子さん。

    なんでも、チューリップはイスラム教の神様アッラーと深くて微妙な関係があるんだって。

    「イスラム教は厳格に偶像崇拝を禁じていて、神は姿形がないとされています。だから、初期の段階では神の啓示であるコーランも口伝だったのですよ。しかし、預言者ムハンマドが亡くなってから、口伝による間違いを防ぐために、文字による筆写だけは認められるようになりました。つまり、イスラム世界の芸術の大前提は『書=神の啓示』なのです。だけど、文字だけのコーランは味気ないと感じる人がいたのでしょうね。次第に文字の周りを無機質な文様で飾るようになりました。また動植物学や医学、天文学などの学問の発達とともに、図解や絵解きが必要になったのでしょう。こうして挿絵としての絵画が生まれました」
  • チューリップは神と関係が深い大事な花なんです

  • 先生によると、オスマン帝国の美意識は文様命。後発のイスラム教国ゆえに、先輩イスラム教国の文様よりも美しくて、なおかつひと目で「オスマン帝国のものだ」とわかるデザインを目指したらしい。

    「上のスライダーでタイルを見てください。これは『ハタイ』と呼ばれている、小さな花と葉、蔓からなる中国風文様です。ハタイはイスラム全土にありますが、オスマン帝国では帝国内で最も好まれた花のチューリップやカーネーション、バラ、ヒヤシンスを写実的に取り込み、より装飾的で独自性のあるデザインを創り出しました。このようにオスマン帝国の文様は他のイスラム世界のものとはまるで異なります」

    新興国の国家戦略としてデザインに特化していたわけね。首都の宮廷内には各地&各分野の優れた工人や工芸家が集まっている工房があり、中央集権的に統一感のあるデザインを創り出していたんだって。なにしろ領土はアジアの端から地中海・黒海まであるわけだし、金も宝石も高価な顔料も人材も集め放題。そりゃあ、ハイレベルな文化が生まれるよね。
  • で、チューリップは?
    「チューリップはトルコ語で『ラーレ』といいます。この綴りの文字列を入れ替えると『アッラー』となり、それぞれの文字に対応する数字を全部足すと、アッラーを示す66になる……。こうした理由があってチューリップがとりわけ重要視されたのでしょうけど、神を象徴するものがあってはならないのがイスラム教。そこは暗黙の了解で、誰もはっきりとは理由を言わないのです」

    おお、なんて奥深きオスマン帝国の美。でも、トルコの人たちにとってチューリップが特別な花であることはよーくわかった。
  • このアートはここで見よう!
    トルコ文化年2019『トルコ至宝展チューリップの宮殿 トプカプの美』
    イスタンブルのトプカプ宮殿博物館所蔵の貴重な宝飾品、美術工芸品約170点が来日。オスマン帝国の美意識や文化、芸術観、日本とのつながりがわかる展覧会。3/20~5/20 国立新美術館 東京都港区六本木7 の22の2  10時~18時(金・土~20時、4/26~5/5〜20時) 休館日/火曜(4/30開館) 観覧料/¥1600 問い合わせ 03(5777)8600(ハローダイヤル)
    https://turkey2019.exhn.jp/
取材・文/KAORU ※BAILA2019年3月号掲載
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