見えていないけれど、ジャケットの中は真っ赤なベスト。弁天小僧といえば、赤と黒!
ばったり小僧 なんですか、部長。息せききって。
部長 小僧が忙しそうだから、一人で尾上右近さんの記者会見に行ってきたんだけど。なんと竹馬に乗って登場したのよ。しかも黒×赤のスーツに額に傷までつけて。洒落が効いてるわー。
小僧 なんですか?黒×赤とか傷とか。それに竹馬って?
部長 弁天小僧よ! 右近さんが五回目の自主公演「研の會」に選んだ演目が「弁天娘女男白波(べんてんむすめめおのしらなみ)」と「酔奴(よいやっこ)」なの。公演のパンフレットを見て! ほら、弁天小僧の額に傷があるでしょ? あと酔奴、竹馬に乗ってるじゃない。しかもわざわざ弁天カラーの黒×赤のスーツまで、この日のために作ったという凝りよう。こんな記者会見、初めてよ(笑)。さすが右近さん、きっとこれも現代風の『かぶく』ってことだと思っているんじゃないかしら。
撮影タイムは各媒体のリクエストにこたえて、竹馬に乗ったまま右を向いたり左を向いたり。かなり長い時間乗っていたのに、全然ぐらつかない。歌舞伎俳優の体幹の素晴らしさ!
部長 若手の歌舞伎俳優が自ら座頭となって、本公演ではなかなかできない大役を演じるの。先輩にお稽古をつけていただいて勉強することはもちろん、すべて自分が中心となって公演を成功させるわけだから、よほどの熱量がないとできないと思うわ。それにまわりの協力も。大役に挑む若手俳優の頑張りを応援しつつ、彼や歌舞伎界の未来に思いを馳せるという、ファンにとってもたまらない会なのよ。
「研の會」は今年で五回目。今までは東京だけで開催だったのに、今年は8月末に京都の春秋座・9月頭に東京の国立劇場と二都市開催なんですって! 彼の人気のほどが分かるわね。
「もともと関西でもやってほしいという声はありました。毎年やるだけでもチャレンジなのに、二都市でやるのは自分のキャパを超える挑戦。でもキャパの中だけでやっていると楽しみもありがたみも段々と感じにくくなる。超えてみたかった。」そう。
端っこに脱いだ靴がきちんと揃えてお行儀よくおかれているのに気づいたまんぼう部長。思わす引きで撮影(笑)。
部長 右近さんは先月、博多座で尾上菊五郎さん(76歳)と一緒に舞台に立っていたんだけれど、その滞在中にお稽古をしていただいたと言ってたわね。菊五郎さんの当たり役だけに、すべてが小さい、もっと大げさに歌舞伎のにおいを出して、と貴重なアドバイスがいくつもあったそうよ。「小さい頃から憧れていたお役だけれど、見ているのと実際やるのとじゃ大違い。そのギャップに途方にくれた」とか。でも音羽屋にとって大切な演目。右近さんもきっと素晴らしいものをみせてくれると信じているわ!
小僧 自主公演って、若手の成長を感じられる会なんですね!
部長 あとね、「研の會」はグッズも楽しいのよ。初心者の小僧が行っても絶対に楽しめると思うわ!
研の會のパンフレット。洒落てる! 弁天小僧の額の傷に注目。
〈京都〉京都芸術劇場 春秋座 8月28日(水)夜の部・29日(木)昼の部 夜の部
チケット発売中
〈東京〉国立劇場 小劇場 9月1日(日)夜の部・2日(月)昼の部 夜の部
チケット予約開始 7月27日(土)10時~
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。
バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。