『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら) 「渡海屋・大物浦」(とかいや・だいもつのうら)で、平知盛(たいらのとももり)を演じるが、以前、仁左衛門さんの知盛を観て、歌舞伎沼に落ちたというバイラ歌舞伎部のまんぼう部長は大興奮!! ばったり小僧への解説もいつもより熱が入ってるぞ!
■碇(いかり)を体に巻き付けて自害する知盛の姿に心を打たれて歌舞伎沼へ
まんぼう部長 好き♪
カメラ・とみやん 好きです‼
ばったり小僧 好きだ―っっ!! ……って、みんなどうしちゃったんですか!?
仁左衛門さんの会見を取材して、目がハートじゃないですか。まあ、私もですけど。
「ひとことだけね」と言って、みんなに受けてうれしそうな仁左衛門さん。やさしそうな笑顔が超キュート! かわいさの一本道!!
部長 そう、あれは確か2年ちょっと前。場所は歌舞伎座だったわ。当時は、ほとんど歌舞伎の知識もないまま観てたんだけど、最後に平知盛が重い碇(いかり)を体に巻きつけて、後ろ向きに海にダイブして自害したとき、気づいたら号泣していたの。そんなに物語に入り込んでいたことに自分でも驚いたわ!!
部長 そもそも『義経千本桜』は、源平合戦で功績をあげながらも兄の頼朝と対立して、都落ちした源義経にまつわる物語を描いた壮大な歴史ファンタジー。全五段という長いストーリーの二段目に、知盛が活躍する「渡海屋・大物浦」の場面があって、物語のラストにちなんで、通称『碇知盛』(いかりとももり)とも言われる人気の演目よ。歌舞伎は、長いお芝居の場合、人気の場面だけ、独立して上演することが多々あるのよね。
部長 そうなのよね。「渡海屋・大物浦」では、知盛が船宿の主人になりすまし、安徳帝を娘としてかくまいながら、義経への復讐をうかがっているのだけど、結局、義経との船いくさに敗れてしまうの。でも、義経が安徳帝の命を守ると約束してくれたおかげで、憎しみから開放されて、潔く消えていく……というせつないお話。戦いに負けてボロボロになって花道から登場する姿、そして覚悟を決めて海に飛び込む姿は、「悲壮美」という言葉がぴったりで、涙なしでは観れません!!
小僧 それを仁左衛門さんが演じるのは、本当にかっこいいんでしょうね。これは観たくなってきた!!
しゃべるときには、手をひらひらさせて、表現力豊かな仁左衛門さん。また、その手は美しく、指もきれいで目が釘づけに
■「ハンコを押したようにやることだけが伝統じゃない」と仁左衛門さん
小僧 「戦いがいかにむなしいことか、その苦しみを知盛が語るところが好きですね」って言ってたけれど、本当にむなしいですよ~。帝が無事なのはうれしいけれど、平家再興の野望はついえたわけで。なんのために自分は闘ってきたのか……って思いますよね。
「グレーのピンストライプのスーツにグレーのドットのネクタイ。ジャケットの袖口から趣味のいいシルバー色のカフスリングがのぞいていたのよ! なんて素敵!」とまんぼう部長はうっとり。
部長 「ハンコを押したようにやることだけが伝統じゃない」「心を伝えていくことが大事」と言っていたわね。「かといって、何でもアリではいけない。歌舞伎という枠の中で、その色を崩さずに訴えていくことが大切」とも。芸に対しては真摯だけれど、エンターテインメント性も大事にする。仁左衛門さんの舞台は、それが両立しているから、観ていて楽しいんだと思う。
小僧 部長、いつにもまして暑苦しい……いや、熱いですね。ところで7月の大阪松竹座は「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念 七月大歌舞伎」とのことですが、仁左衛門さんは、普段は大阪で活動されているんですか?
1か月(25日間)続く公演にどう向き合うか聞かれて、「1/25じゃない。1/1の積み重ねが25回あるだけ。1日1日、刹那刹那、入魂するだけ」。
小僧 そうなんですね。東京と大阪では、何か違いがあるんですか?
部長 江戸で発展した江戸歌舞伎に対して、大坂・京都を中心に発展した歌舞伎を上方歌舞伎(かみがたかぶき)と言ったりするわ。江戸歌舞伎が「荒事」(あらごと)と呼ばれる豪快な芸が特徴なのに対して、上方歌舞伎は、「和事」(わごと)と呼ばれ、柔らかさのある芸が特徴。碇知盛は勇壮な演目だけれど、色男の若旦那みたいな甘えん坊キャラとかを演じても仁左衛門さんは最高にかわいいのよ!!
小僧 えーっ、かわいい仁左衛門さんも観てみたい!
小僧 はいっ、私も歌舞伎沼に落ちに行きます~!!
知盛の白装束姿、カッコイイ!! また夜の部では、『弥栄芝居賑』(いやさかえしばいのにぎわい)「道頓堀芝居前の場」にも出演。華やかなにぎわいが楽しめそう。
『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)「渡海屋・大物浦」(とかいや・だいもつのうら)
出演:片岡仁左衛門、片岡孝太郎、尾上菊之助、市川猿弥、坂東彌十郎、中村鴈治郎
日程・場所:2019年7月3日(水)~27日(土)大阪松竹座
ストーリー:平知盛は、女官の典侍の局(すけのつぼね)を女房・お柳に、安徳帝を娘・お安として、船宿を営みながら、義経に復讐する機会をうかがっていた。しかし義経に企みを見透かされ、海上の船いくさで敗れてしまう。典侍の局は自害するが、帝は義経によって守られることがわかると、知盛は自分の役割を終えたことを悟り、重い碇(いかり)の綱を身体に巻き付け、雄々しく海中へ沈んでいく。
チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほかで発売中。
取材・構成/バイラ歌舞伎部
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。
バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。