海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、サンフランシスコを舞台にしたヒューマンドラマ『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ 』を紹介。主演のジミー・フェイルズの実体験に基づく本作。街の住人たちの夢が入り交じる不思議な魅力に満ちた作品をチェックして!
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今 祥枝
海外エンタメが大好きなライター。一年365日、映画&ドラマざんまいの日々。
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『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ 』
ゴールデン・ゲート・ブリッジや坂道を走る路面電車で知られる、アメリカ西海岸の大都市サンフランシスコ。移民を多く受け入れてきたため、さまざまな文化が混在する街はアートやファッションの発信地でもある。なかでも街の景観として目を引くのが、19世紀後半から20世紀初頭に建てられた、優雅で可愛らしくもあるヴィクトリアン・ハウスだ。
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は、フィルモア地区にあるヴィクトリアン様式の家をめぐる物語。祖父が建て、かつて家族と暮らした思い出の家が売りに出されたことを知ったジミーは、再びこの家を手に入れるべく奔走する。そんなジミーのかたわらに、そっと寄り添う友人モント。彼らの日常は、黒人の暮らしやストリートのリアルを伝える一方で、まるで大人の絵本を眺めるかのような、どこかファンタジーのような印象も。
実は本作は、主演のジミー・フェイルズの実体験に基づくと同時に、街の住人たちの夢が入り交じる不思議な魅力に満ちた作品だ。戦前は日系人が、戦後は多くの黒人が移り住み、この街や文化を作り上げてきたのだが、都市開発が進みシリコンバレーも近いことから、今ではビリオネアが住む街となった。そのため古くからの住人がハウスボートやワゴン車で暮らすなど、街から追いやられている様子が映画でも描かれている。
だからこそジミーは生まれ育った街や家、バラバラになった家族や失われた日々に憧憬を抱き、かなうことのないであろう夢を追い求める。そんなジミーの魂が、現実と夢を行き来しながらたどり着いたラストシーンの景色。それは思いがけずロマンチックで、胸を締めつけるほどの切ない余韻を残す。
監督・脚本・原案/ジョー・タルボット
出演/ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース
公開/新宿シネマカリテ、シネクイントほかにて10/9より
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©2020 「星の子」製作委員会
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©2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
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