今年4月、宝塚歌劇団雪組をトップスターとして率いてきた望海風斗さんが退団した。卓越した歌唱力、繊細な表現で観る者を魅了し、唯一無二の存在として宝塚を牽引してきた彼女。不安定な情勢の中でも前を向き、駆け抜けた退団秘話や、現在の心境、これからへの思いを聞いた。望海風斗さんのインタビューを全3回でご紹介。
「ただ、前向きに。進み続けることを選びたい」
休演、退団延期…たび重なる困難を越えて
舞台では圧倒的な歌唱で空間を満たし、丁寧な役作りで幾度も難役を乗り越えてきた望海さん。惜しまれつつ退団を発表して以降、コロナ禍によるたび重なる休演、延期を経験。昨年10月予定の退団は延期となり、トップスター恒例のサヨナラパレードも自粛に。まさに暗中模索の中、“公演のLIVE配信”などエンターテインメントの新たなかたちへの挑戦も果たした。異例尽くしで迎えた4月、サヨナラ公演の千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団。激動の時期や現在の思いを、あらためて聞いた。
「大変な状況下での退団で色々なことができなくなり、皆さん、私の気持ちを考えてすごく心配してくださって。確かに大変ではあったけれど、退団は私自身が決めたこと。それに宝塚だけではなくて、世界的に大変な状況です。そんな中でもどうにか公演をしていく方法を考え、試行錯誤して、宝塚全体が前向きに進んだ時代に自分もいられたことはよかったと、ポジティブに受け止めています。トップになったときから作品ごとに組のみんなで壁を乗り越えて成長したいという思いもあったし、あの時期を皆でなんとか乗り切れたことは幸せに思います」
当たり前だったことの大切さに気づけた
退団の日を無事迎えられたことで得たものは、“いちばん大切なこと”への気づき。
「コロナ禍の公演では、ファンの方々に近くでお会いして、きちんとお礼を伝えられなかったことがつらかったですし、皆さんも寂しかったと思います。ですが、見送るイベントがなくても皆さんの思いは充分に感じられた。いちばん大切なのは、ちゃんと千秋楽を迎えられること。皆さんに観ていただけて、劇団の仲間もともにいること、なんですよね。色々できなかったからこそ、逆にいちばん身近なことのありがたさに気づけた気がします」
ブラウス¥38720・ベルト¥32670・パンツ¥43560/エム(ウジョー) イヤカフ¥33000・リング(左手)¥20900・(右手)¥22000/フォーヴィレイム
望海風斗
のぞみ ふうと●10月19日生まれ、神奈川県出身。2003年、宝塚歌劇団に入団。花組に配属され経験を積んだ後、2014年、雪組に組替え。2017年、雪組のトップスターに就任。2021年4 月11日、『「fff-フォルティッシッシモ-」~歓喜に歌え!~』『シルクロード~盗賊と宝石~』の東京千秋楽でトップ娘役・真彩希帆さんとともに退団。
望海風斗コンサート『SPERO』
構成・演出・振付/川崎悦子 企画・制作/梅田芸術劇場
日程/2021年8月2日~10月5日
チケット一般発売日/ 7月17日(大阪・福岡)、9月4日(愛知・神奈川)
宝塚退団後初となるコンサートを大阪・福岡・愛知・神奈川の4都市で開催。宝塚の楽曲のほか、ジャズやポップス、海外ミュージカルなどの名曲を歌い上げる。ラミン・カリムルー、井上芳雄、海宝直人と豪華ゲストとの競演も注目!
撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア&メイク/国府田圭 スタイリスト/菊池志真 取材・原文/櫻木えみ 構成/斉藤壮一郎〈BAILA〉※BAILA2021年8月号掲載