いくえみ綾先生のファンはもちろん、初めての方にもお薦め! ままならぬ日常を生きる大人のための漫画です。

中学生の娘を育てながら、自身の母親と3人で暮らすシングルマザーでアラフォーのれみ。小さい頃からずっと一緒に育ってきた隣家の同級生、季(とき)が婿入り先から実家に出戻ってきたところから物語は始まります。
ふたりを軸に、悩みながらも成長していく思春期の娘・るり、いつまでも少女のような可愛らしさを残す祖母・りら。それぞれの思いと日常が丁寧に描かれています。そこに若くして亡くなったるりの夫であり、季の親友でもある忠の存在も色濃く……。
忠をふくめた3人の、三角関係とも言い難い微妙な関係が学生時代と現在と、時を前後して進み、きゅんとしたり、イライラしたり、ほっこりしたりしながら、いくえみワールドに引き込まれていきます。

ちょうどるりと同じ中学生の頃から、長くいくえみ作品に親しんできて、今はれみより年上。同じく思春期の子どもがいる私にとっては、なんとも感慨深い作品です。れみや季と同じように、無邪気だったあの頃からなんとも遠くまでやってきたな、という思いです。

一見、穏やかで淡々とした日々のなかでそれぞれが抱える悲しみや、言葉にはできない大切な人たちへの優しさが胸に迫ります。この、読んでいてなぜか目の奥が熱くなるような切なさこそがいくえみ作品の真骨頂です。
思うに任せないことがあっても続いていく日常を「まあ いいか」と歩いてく登場人物たち。そこにはちゃんと笑いやユーモアが溢れていて、柔らかなタッチの絵とともに軽やかに読み進められます。


近しい人たちに愛をもって日常を「まあ いいか」と生きることの強さ、そしてどこにでもある日常というものはどこにもないということを、この作品は気づかせてくれます。「1日2回」ふと心に浮かぶ、そんな距離感のれみと季。四十路を迎えたふたりのこれからに目が離せません。ままならない日常を生きる、大人にこそ読んでほしい漫画です。
※ココハナ連載中 コミックス2巻まで発売中

BAILA副編集長
副編N
主に本誌ファッション担当。BAILAで働く30代の服を見続け今年で12年。好きなのは、野球を観ること、本を読むこと、泳ぐこと。陸での運動は苦手だけれど、毎月近所のプールで5キロ以上泳ぐのがマイ・ノルマ。
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試し読みは2021年10月18日(月)~2021年10月31日(日)まで