平安時代から楽しまれていた伝統楽器である”箏(こと)”。
漫画『この音とまれ!』のページをめくると、想像を凌駕する音が、きこえてきます。
高校時代ははるか遠く、仕事やプライベートが慌ただしく、配信ドラマで気分転換している方々!
合奏に縁が薄くても、学園ものへの共感性が薄くても、不良が出てくる青春ものに興味が薄くても、
その後登場キャラクターが増え、来年で10周年を迎える、人気連載。異色の少年漫画『この音とまれ!』の、最初のクライマックスを含む3巻をまずは3巻読んでみてください。
ドラマを見るつもりだったその1時間。
気づけば読み終えています。
読み進めれば、聴こえるはずのない箏の音が聴こえてくるかも、しれません。
『この音とまれ!』はどんな漫画? 邦楽を知らなくても大丈夫?
漫画『この音とまれ!』の舞台となるのは時瀬(ときせ)高校。
とりたてて荒れているわけでもなく、エリート主義なわけでもないどこにでもありそうな普通の高校なのですが、この学校には実は歴史と想いが詰まった「箏曲部(そうきょくぶ)」があります。
この箏曲部に、各々の事情で集まってくる登場人物たちは、はじめは箏の初心者ばかり。弾けなかったり、コンプレックスがあったり、意欲もそこまでなかったりと、ゼロから箏と向き合う日々が始まります。
だから読み手のあなたに邦楽や箏の知識がなくたって大丈夫。彼ら彼女らと一緒に、箏の基本を少しずつ教えてもらえる”学び”の楽しさも!
漫画『この音とまれ!』の登場人物、いとおしい三つ巴
まず主人公は久遠愛(くどお・ちか)。左側の、制服の着こなしがちょっとルーズで、由来が気になる名前を持つ高1男子です。
中学では荒れ尽くしていたと評判の、いわば札付きのワル。同級生はもちろん先輩たちも恐れをなしているのですが、読者の私たちに見せる顔は男気があって優しく無邪気。
もう1人の主人公とも言えるのが倉田武蔵(くらた・たけぞう)。右側の、眼鏡をかけた真面目そうな彼はこう見えて高校2年生で箏曲部部長。気弱そうに見えて、芯があって頼もしい部長。
先輩が全員卒業し、箏曲部で一人になってしまった武蔵のところへ、傍若無人ともいえるふるまいで入部してきたのが、新入生の愛でした。
なぜ札付きの不良が箏曲部へ? その裏には、つっぱっているけれどまだ15歳の愛にとって重く苦しい事情があるのですが・・・ぜひ続きは本編で!
今作のヒロイン、鳳月さとわ(ほうづき・さとわ)。愛と同じく時瀬高校の新入生ですが、その正体は箏の家元・鳳月会のお嬢さま。
この場面のようにさとわが奏でる箏は流麗で見事。幼少期からあらゆる賞を総なめにしてきた跡取り娘ですが、彼女も苦しみや事情を隠して本拠地である家元の世界から普通の高校の箏曲部にやってきています。
この愛・武蔵・さとわの3人が、まず最初の人間関係。
育ってきた環境も箏の実力もバラバラ、相性がいいとは決して言えない凸凹トリオに共通するもの。
それは、箏への想い。
それぞれが抱える、人生の闇ともいえる出来事に、光を差し込んでくれたのが箏だから。
ピュアな情熱が化学反応を生む。まさに青春ストーリーの温かさがそこにあります。
『この音とまれ!』で大人が学ぶ「できないって言っていい」のチカラ
愛・武蔵・さとわをはじめとする登場人物たちの綾なす人間模様から、大人が学ぶことがありました。
それは”SOS”の出しかた。
気兼ねや遠慮、見栄などから、周囲へ正直に、”困った”、”辛い”、”助けて”のサインを出せないことはありませんか?
『この音とまれ!』のキャラクターたちもそれは同じなのですが、主人公・久遠愛のまっすぐなパワーが変化をもたらします。
「分かんねーことは分かんねーって言えよ
誰も怒りゃしねぇんだから」
こんな当たり前のことを、言ってくれる誰かが大人にはなかなかいないもの。
こんな気恥ずかしいことを、言ってくれる誰かが私たちにはなかなかいないもの。
こんな直球のことを、さりげなく言える場面は、大人になるとなかなかないもの。
こんなフツウのことを、堂々と言えること自体が、私たちにはなかなかないもの。
愛が発する箏や部員たちへのまっすぐな言葉を、読者である私たちにも届けてくれるのも、やっぱり箏なのです。
きっと多くのフツウの大人が想像する箏の音は、お正月にテレビからきこえてくるゆったりとした和音かもしれません。
『この音とまれ!』にもそういう”音色”は登場します。
しかし、3巻まで一気読みしてぜひ体感してほしいのは、そのイメージを塗り替えるド迫力の箏の音。
愛・武蔵・さとわの事情が絡み合いながら辿り着く、作中で初めての”本番”。
想いと音が一体となり、迸るような表現をぜひ体感してください!
info『この音とまれ!』を五感でたのしむ
ここまで読んでくださったあなたはきっと、もうその箏の音が聴きたいですよね?
なんと、実際に聴くこともできるのです!
ジャンプスクエア公式YouTubeでは、作中のオリジナル楽曲の演奏動画を公開しています。
作者であるアミューさんのご家族も協力しているというこちらも必見&必聴です!
編集ミツコ
好きな休日の過ごしかたは、はしごショッピングからの町中華でハイボール! メゾンブランドから古着までMIX主義のカジュアル派。北海道産強力粉で皮から作る水餃子には自信あり♪ 本誌ではファッションと美容、海外ドラマを担当。
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試し読みは2021年10月18日(月)~2021年10月31日(日)まで