20代から今もなお変わらない好青年キャラは殿堂入り。穏やかな雰囲気に爽やかな笑顔が印象的なアラフォー男子の小泉孝太郎さん。年齢を重ねるとともに自分の軸がどのように変わったのか、語ってくれました。
若い頃は“爽やかな好青年”のイメージが褒め言葉ではなかったと話す小泉孝太郎さん。44歳を迎えた今、思うことを伺うと。
「もう青年ではないですよ(笑)。ただ、『爽やかですね』と声をかけていただいたときは、素直にありがたいなと感じています。でも、若い頃は誰しも、“こうなりたい”“ああなりたい”と理想を描くじゃないですか。僕も、自分の“好青年感”が邪魔だった時代がありました」
評価されることで見えた自分の軸となる強み
転機になったのは、2013年放送の宮部みゆき原作の主演ドラマ「名もなき毒」だったという。
「30代半ばで、杉村三郎という人物を演じたんです。杉村はとても優しくて、無味無臭で色のついていない素直な男なんですが、『小泉さんにぴったりでした』と原作者の宮部さんはじめ、たくさんの方から褒めていただけた。そこで、役者として求められている軸が見えたというか。受け入れ難かった“いい人”イメージも腑に落ちたんです。続編『ペテロの葬列』でも杉村を演じることができ、思い入れのある作品になりましたね。
僕ね、最近お酒にたとえて話をするんですが、ワインやウイスキーは熟成期間がありますよね。僕という一人の人間がお酒だとしたら、現時点で44年もの。今、美味しくても、この先50年、60年ものになったときに美味しく飲んでもらえるかは、これからの熟成次第ですよね。積み重ねてきた経験を含めて、今後の生活の仕方や仕事への向き合い方、考え方で、熟成度合いが変わると考えるようになってから、昔の自分も今の自分も、すべてを受け入れ、大切にできるようになったと思います」
仕事の軸は尊重し合うこと。仲間との協調が基本姿勢
「世の中に一人でできる仕事って、少ないと思うんです。役者の世界も一つの現場に何百人もの人が関わるし、違う環境や生い立ちの人がたくさんいる中で、いかに“協調性”を持てるかはとても大切。そして、一つの目標に向かっているわけですから、自分の役割を理解して、“仲間”を信じて“素直”な気持ちで受け止めることが重要だと思っています。たとえば、演技プランをAだと考えて現場に入っても、監督の意図を聞くとBというケースもある。そこで僕は自分を通そうとは思わなくて。監督を尊重して、Bを表現するわけです。仕事に“野心”が必要な時期もあるかもしれませんが、それは表に出すものじゃないと僕は思うし、人に求めるものでもないですから。これは人間関係においても大事なことですが、“素直”に感謝できて、“素直”に謝ることができる人に、男女問わず惹かれますね」
プライベートの孝太郎さんは、聞き役に回ることが多いそう。
「自分の悩みは相談しないですね。行きつけのごはん屋さんで美味しいものを食べながら、大将と談笑するだけでリセットされるからかもしれない(笑)。自分で消化する癖がついちゃったんですよね。話を聞くことを苦に感じたことがないせいか、男女問わず友人から転職や恋愛の悩みを相談されることが圧倒的に多くて。性格を見て言葉は選びますが、大切な相手には、わりとストレートに伝えるほうだと思います。踏み出す勇気やとどまる決断など、悩みはそれぞれですが、苦悩が永遠に続くことはないから大丈夫だよ!と基本ポジティブに声をかけることが多いですよ」
気づかいを忘れない関係づくりが人間関係の軸に
人間関係で迷わず選んだのは礼儀と距離感。その理由とは?
「プライベートの深いところまで話ができて、気心許せる相手であっても、人間関係において、“礼儀”と“距離感”は大切にしたいですね。芸能界でもムロツヨシくんや上地雄輔とは親友として長くつきあっていますが、彼らとの間にも変わらずあります。『親しき仲にも礼儀あり』じゃないですけど、遠慮がなくなると不快な気持ちにさせるかもしれないでしょ。気持ちを正直にぶつけ合える仲であっても、いい関係を続けていくために必要だと思っています。
3つ目は“金銭感覚”かな。知ることで、長くつきあえる相手なのかが見えてくるポイントだと思うんです。ある金額に対して、高い安い、多い少ないという感じ方もそうだし、お金の使い方にも表れますよね。たとえば僕は、親しい関係の相手とは、菓子パンをほおばっているだけで幸せだって感じたい。もちろん、ときには立派なお寿司屋さんで食事をいただくこともありますが、高級=幸せとは限りません。百円をありがたく思えるかどうかの感覚は、コミュニケーションとして大切な食事や時間の使い方にもつながっているから、やっぱり外せないですね!」
恋人、結婚のキーワードに“間”を選んだ理由を聞いてみると。
「一人暮らしも長いので、おつきあいする女性には、僕の取説をお伝えしています。たとえば、時間の使い方とか心地よいスタイルを。恋人とは自立した関係がベストなので、自然と“間”が必要なんですよね。昔ほどこだわりも多くないですが、自分のペースで譲れない時間があるのは事実です(笑)」
こいずみ こうたろう●1978年7月10日生まれ、神奈川県出身、AB型。2002年、俳優デビュー後、数々の作品に出演。現在、「モニタリング」(TBS系 木曜20時〜)、「ポップUP!」(フジテレビ系 月曜11時45分〜)などに出演中。ラジオ「Antenna K」(bayfm 土曜18時〜)でパーソナリティを務める。
衣装協力/ビームス プラス 原宿
撮影/田形千紘 ヘア&メイク/石川 武 スタイリスト/北村彩子 取材・原文/木村真悠子 ※BAILAhomme vol.2掲載
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