自他ともに認めるインテリア大好きカメラマンの3人が、最近手に入れた“推しもの”について嬉々として語る座談会。ビギナーでもすぐに自宅をセンスアップできるワザも聞いてみました。

カメラマン
魚地武大さん
数々の女性誌から引っ張りだこの静物カメラマン。平日は東京、週末は軽井沢の2拠点生活を送る。トレードマークのメガネは実は度なし。愛犬家。
写真集から家づくりまで。“推す”きっかけは三者三様
―そもそもお三方がインテリアに興味を持ったのは何がきっかけですか?
須藤 僕は『美しいインドア・グリーン』という本に出会ったこと。室内で植物を育てて美しく飾るアイディアが書かれているんだけど、植物ってこんなに表情豊かで、インテリアのようにおしゃれなのか!と衝撃を受けたんだよね。

本(カロ・ラングトン&ローズ・レイ 著 孕石 直子訳)/須藤さん私物
「選び方から育て方まで網羅されたバイブル的な本!」(須藤さん)
三瓶 僕の場合は、なにげなく訪れた二階堂明弘さんという作家さんの個展です。それまでは作家にこだわらず気に入った器をたまに買う程度だったけれど、二階堂さんの作品を手に取った瞬間、琴線に触れたというか、自分の人生とどこかシンクロしたような感じがした。
―すごい。運命の出会いですね。二階堂さんの器のどんなところに惹かれたんですか?
三瓶 ひと言で説明しにくいのですが、土の風合いを感じる、ざらざらした手触りで見た目に反してとても薄い。これはれっきとしたアートだなと思いました。
須藤 魚地君は去年、軽井沢にセカンドハウスを建てたんだよね。
―素敵な家具が並んでいると話題の魚地邸ですが、住まいをつくることでインテリア熱は高まりましたか?
魚地 そうね。東京の家はとにかく物が多かったから、新居の家具は必要最小限にしぼってすっきりとさせたくて。だからたくさん情報を収集して、時間をかけて吟味したかな。以前よりもインテリアの知識はぐっと増えましたね。
―そして2匹の犬と暮らす新居はなんとドッグファーストな作りだとか。
魚地 犬嫌いの愛犬たちのためにドッグランつきの家にしたのもそうだけれど、愛犬たちが寝室のベッドに簡単に上がれるように、脚が短いローベッドをつくってもらったり。
器だけにとどまらず、プロ仕様の包丁に魅せられて
―ところで皆さん、最近、手に入れてよかったと思うインテリア用品はありますか?
三瓶 パリに行ったときにライフスタイルショップの「マラン・モンタギュ」で買ったグラスがお気に入りです。

「マラン・モンタギュ」のグラス/三瓶さん私物
―これロゴも花冠もすべて手描きなんですね。めちゃくちゃ可愛い〜。
三瓶 それと僕は器以外に包丁をコレクションしているんですが……。
須藤 えっ。なんで包丁なの?
三瓶 元剣道部だからか、刀に惹かれるんです(笑)。鉄の包丁も素敵なんですが、メンテナンスを考えてステンレスの包丁のみにしぼっています。
―どんなものを持っているんですか?
三瓶 「高村刃物製作所」の打雲シリーズです。美しい波状の模様が入った刃と独創的な柄が特徴的で、様々な組み合わせをそろえています。
魚地 三瓶君、料理しないのに実際に使うことはあるの?
三瓶 この包丁、実はそうそうたる有名シェフたちが愛用しているほど切れ味が素晴らしく、どんなに柔らかく切りにくいものでも極薄にカットできるんですよ。僕はもっぱら、これでトマトをスライスして食べてますね。
一同 贅沢すぎる!(笑)

「高村刃物製作所」の包丁
「トマトしか切らないけれど美しいたたずまいに惚れ惚れ」(三瓶さん)
―須藤さんは園芸系のアイテムをたくさん購入していそうですね。
須藤 大好きなラタン素材の花器類は好みのものを見つけるとつい買っちゃう。特に鉢カバーは今扱うショップがどんどん増えていて、手頃で可愛いものがたくさんあるよ。


「ラタン素材はグリーンと絶好の相性を発揮」(須藤さん)
植物・花器類/すべて須藤さん私物
魚地 須藤さんはどこで見つけることが多いんですか?
須藤 「ザラホーム」や「イケア」もおすすめだけど、最近、購入したお気に入りの鉢カバーと花器は実はどちらも「メルカリ」で見つけたもの。
―えっ、それは意外です!
須藤 「メルカリ」には花器から古い絵やアートまで結構ユニークな掘り出し物が多くて。「今まで見たことがないものを見たい」という気持ちに押されて、しょっちゅうパトロールしてる。もうトータル500回以上は利用しているんじゃないかな。僕の性分として基本は“園芸おじさん”なんだけど、“蚤の市おじさん”としての顔もあるんだよね(笑)。
一同 爆笑
魚地 僕はテラス用に買った「HAY」のスチールチェアかな。あと、我が家はカーテンをつけず間接照明だけにしているから、夜は家の中が結構暗くて。だから持ち運べるポータブルランプが欲しいなと思って、先日「ルイスポールセン」のラジオハウスポータブルを買いました。ベランダで過ごすときや入浴中に使っているけれど、明るさを4段階に調整できるから便利。

PALISSADE DINING ARM CHAIR¥171600/HAY TOKYO(HAY)

VL45 ラジオ ハウス ポータブル¥88000/ルイスポールセン東京ストア (Louis Poulsen)
まず実用的な名作家具を取り入れるのもひとつの手!
―ここでインテリア好きの皆さんにズバリお伺いします。インテリアビギナーがセンスのいい家に手っ取り早く近づくためには、まず何を取り入れたらいいと思いますか?
魚地 家具おじさんとしては色々推したいものはあるんだけど……いきなり大きな家具を導入するのは勇気がいると思うので、まずは名作椅子から始めてみるのはどうかな?
三瓶 椅子界の名作と言われている「カール・ハンセン&サン」のCH24(Yチェア)は僕も持っていますが、座り心地もいいですよね。


CH24(Yチェア)¥156200/カール・ハンセン&サン 東京本店
「Yチェアは色違いを並べてもさまになります」(魚地さん)
魚地 色展開も幅広くて名作チェアの中でも比較的、手が出しやすい価格かと。あとこれも「カール・ハンセン&サン」なんだけど、PK1 チェアもめちゃめちゃ可愛くておすすめ。1脚あるだけで部屋が洒落るし、バイラ世代の皆さんも使いやすい気がする。脚がステンレスの椅子って戸建ての住宅よりも、マンションの雰囲気にしっくりくるイメージがあるから、都会のマンション暮らしにもぴったり。

PK1 チェア¥118800/カール・ハンセン &サン 東京本店
「主張がないようでしっかり存在感があるのが魅力」(魚地さん)
―椅子なら、生活スタイルや部屋の様式が変わっても、引き続き使えそうでいいですね。
須藤 名作家具は確かに信頼感はあるけれど、実用的であることは大事にしたいよね。デザインがいくらよくても、結局使いにくくて出番がなかったら、もったいないから。ただその実用性をも超えるほど、たたずまいそのものに魅力を感じるなら絶対に買うべき!
―なるほど、そうですよね。ちなみに器に関しては何からトライするべきですか?
三瓶 器は家具に比べたら買いやすいお値段のものが多いですが、大きいお皿だとそこそこ冒険だと思うので、まずは大きさも価格もちょうどいいマグカップやグラスから取り入れてみては。
魚地 お皿よりもカップのほうが頻度高く使いそうだし、直接肌に触れるものだから、より愛着がわきそう。
三瓶 好きな作家さんが見つかると、器を見るのがより楽しくなると思います。僕は個展に行ったことで二階堂明弘さんのファンになったので、読者の皆さんもアンテナを張ってぜひ、そういう出会いを見つけてほしい!
魚地 作家さんはSNSをやっている方が多いから個展の情報を得るのは意外と簡単だよね。気になる個展が近くで開催されていたら、ぜひ気軽に行ってみるべき。そして人気の作品はすぐに売り切れてしまうから、必ず初日に行ってください!

津坂陽介さんの グラス/三瓶さん私物

「アスティエ・ド・ヴィラッ ト」のカップ&ソー サー/三瓶さん私物
「アスティエのカップは初心者にもおすすめ」(三瓶さん)
三瓶 グリーンもおしゃれな人の家には必ずあるイメージですが、僕、虫が苦手なので、部屋に置けないのが悩みなんですよね。
須藤 虫が気になる人はポトスとかアイビーみたいに水だけで育てられる水耕栽培の植物を置くのがいいかもしれない。透明な花器に入れたら根の部分もカッコよく見せられるし、成長がスローペースだから育てるのもラク。
―園芸初心者にもぴったりですね。忙しくて枯らしてしまう人もいるので。
須藤 植物も家具のように見た目で選びたくなるけど、果たして自分の部屋に適した性質なのか、耐陰性や耐寒性を把握しておくことも大事。
―須藤さんのご自宅は、インテリアに温かみのある北欧らしさが見え隠れしますね。
須藤 北欧のインテリアは「アルヴァ・アアルト」の名作スツールも含め、ほかにはないポップな色使いが魅力なんだよね。さっき魚地君がポータブルランプの話をしていたけど、僕は「アンドトラディション」のフラワーポットを推したい。

Flower pot VP9 各¥39600/林物産(アンドトラディション)
「鮮やかでチャーミングなフォルムがまさに好み」(須藤さん)
魚地 おお、カラフルですね。
須藤 我が家はミニマルな魚地家とは真逆で、物が多くてにぎにぎしているんだけど、もしこっち方向を目指すなら、思いきってポップなカラーアイテムを取り入れてみるのもありだと思う。それを起点に「次はこれを置こう」「あれを並べよう」と家具や植物を足し引きしながら、徐々に調和させていくのも意外と楽しくておすすめです。

アルヴァ・アアルト ヴィンテージ チェ ア65¥110000/北欧家具talo
自分の“好き”を見つけることがセンスアップへの近道
―最後に、センスを磨くために皆さんは何が必要だと思われますか?
三瓶 審美眼って自分らしさを確立することで磨かれると思うので、まずはインテリアに限らず、自分の“好き”をちゃんと知ることが大事かと思います。
魚地 自分の基準を持っていないと、どこかで絶対にブレるよね。「好きなインテリアがわからない」という人は、とにかくお店にたくさん足を運んで、色々なものを見ることから始めたらいいと思う。必ず“好き”が見つかるはずだから。
須藤 自分の好きなものが見えてきたら、センスはあとからついてくるんじゃない? 他人の目線に惑わされず、自分が心地よくいられる空間をつくったほうが絶対に幸せだと思います。
イラスト/蔵元あかり 取材・原文/野崎久実子 ※BAILA2025年8・9月合併号掲載

























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