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シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で幸四郎に酔う!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い#09】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月紹介するのは、11月8日(金)より全国公開されるシネマ歌舞伎『女殺油地獄』(おんなごろしあぶらのじごく)。昨年、大阪松竹座で行われた十代目松本幸四郎襲名公演を撮影した記念すべき作品。公開に先駆けて、先日行われていた東京国際映画祭にてワールド・プレミアが開催され、主演をつとめた松本幸四郎(まつもとこうしろう)さんがレッドカーペットを歩いたほか、舞台挨拶にも登場。バイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧がその様子をリポートします!!

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で幸四郎に酔う!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い#09】_1

↑シネマ歌舞伎『女殺油地獄』はポスターも刺激的。与兵衛の幸四郎さん、お吉の猿之助さん、ともに美しい!!

■シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で殺人を目撃した気分に!?

ばったり小僧 部長!! 東京国際映画祭の幸四郎さんのレッドカーペットを見に行ったって本当ですか!? 

まんぼう部長 そうなのよ。一般の観客として行ったから全然見れないかと思ったけれど、ほら見て。写真もバッチリ撮っちゃった♪

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↑東京国際映画祭でレッドカーペットに颯爽と登場する幸四郎さん。洋装の多い中、着物姿が抜群に光ってました。 高麗屋!! (※これはまんぼう部長の写真ではありません!)©2019 TIFF

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で幸四郎に酔う!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い#09】_3

↑報道のカメラの前でにっこり。たくさんのギャラリーに囲まれて楽しそう。イベントを満喫しているようでした。(これまたまんぼう部長の写真ではありません(笑))©2019 TIFF

小僧 写真って……なんというか、盗撮みたいな感じですけど。

部長 そんなことないって!!  結構近かったんだから。幸四郎さん、お着物姿がとっても素敵で、ひと際キラキラしてたわ。観客から「高麗屋!!」って大向こうがかかったりして、すごく盛り上がってて、私も興奮して一気に100枚くらい写真撮っちゃった(笑)。もう大満足。

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↑こちらまんぼう部長が撮影したもの。スクリーンに姿は写れど、ホンモノはどこに………? ©まんぼう部長

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↑いたー!!  人混みをかき分け、ついに幸四郎さんを発見するまんぼう部長。©まんぼう部長

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↑レッドカーペットで取材を受ける幸四郎さんに接近(あくまでもまんぼう部長談)し、一気に連写。それにしてもすごい数の報道陣。©まんぼう部長

小僧 それにしてもなんで東京国際映画祭に幸四郎さんが? なにかの映画に出演したんですか?

部長 そうよ。幸四郎さんが主演しているシネマ歌舞伎『女殺油地獄』のワールド・プレミアが東京国際映画祭で開催されたの。

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↑レッドカーペットに用意された舞台で、見得を切ってみせる幸四郎さん。十代目!!  日本一!! ©2019 TIFF

小僧 シネマ歌舞伎? 歌舞伎を映画にした作品ってことですか?

部長 そうそう。 歌舞伎の舞台を何台かのカメラで撮影して、それを編集して映像化したものをシネマ歌舞伎というの。東京だと東銀座の東劇で、よく上演されているけれど、映画館の大画面で見ると、舞台ではわからない俳優さんの繊細な表情が良く見えるし、値段も舞台より安価だし、歌舞伎ファンの間では人気なのよ。で、今回は、昨年夏に大阪松竹座で幸四郎さんが主演した『女殺油地獄』を映像化した作品が全国公開されることになったわけ。

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↑東京国際映画祭にて開催されたワールド・プレミアで舞台挨拶に登場。じつは11月は歌舞伎座で公演中。舞台挨拶前には『研辰の討たれ』に出演し、舞台挨拶後には息子の染五郎さんと『連獅子』に出演。幸四郎さんに働き方改革が訪れる日は来るのか……?

小僧 そのインパクトありすぎるタイトル、私、覚えてます!!  この連載でもとりあげましたよね。中村獅童(なかむらしどう)さんがオフシアター歌舞伎で上演した演目ですね。油屋を営む河内屋の放蕩息子・与兵衛(よへい)が、借金を重ねて、親にも勘当されて、ついに同業の豊嶋屋の女房・お吉(おきち)を殺すという怖~いお話でした。 で、部長はそのプレミア上映、観たんですね?

部長 もちろん。凄かったわ~!! 上演前の舞台挨拶で幸四郎さんが言っていたけれど、普通のシネマ歌舞伎とは違って、この作品では、客席に人を入れない状態でお芝居をして、それも収録したんですって。だからお客さまがいたら絶対撮れないような角度から撮影されたシーンがあるんだけど、それがものすごく効果的で衝撃的だったわ。

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で幸四郎に酔う!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い#09】_9

↑本作では制作過程にもかかわり、「今出来ることのすべてが詰め込まれた作品に仕上がった」と幸四郎さん。これからのシネマ歌舞伎の可能性を感じさせる意欲的な作品に。

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↑司会は元フジテレビアナウンサーの笠井信輔さん。質問を受けながら、何かおもしろいことを言おうと考えている幸四郎たん。かわいいです♪

小僧 とくに印象的だったのは、どのシーンですか?

部長 たとえばクライマックスの殺しの場面。舞台上にカメラを3~4台上げて撮ったんですって。油まみれの凄惨なシーンもすごい迫力で臨場感があるから、まるで殺人事件を目撃しているような感覚になってくるの。

小僧 それはシビレますね。

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↑「昨年上演した実際の舞台よりも面白いです(笑)」と客席を笑わせる幸四郎さん。舞台の迫力は、また格別だけど、本作の完成度には自信たっぷり。

部長 それと舞台だと義太夫という音楽がずっと入っているんだけど、殺しの場面では、だんだんと音楽を消して、着物がすれる音とか、刀がヒュンってしなる音とか、緊迫した息遣いが聞こえるようにしたんですって。「最初は舞台を観ている感覚から、場面が進むにつれて、だんだん一人で観ているような感覚になって、最後には映画作品を観ているような不思議な気持ちになるのではないかと思います」って幸四郎さんが言っていたけれど、その通りだった!!

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↑与兵衛の幸四郎さん(左)と、お吉の猿之助さん(右)。二人が『女殺油地獄』をやるのは、2011年テアトル銀座での上演以来2度目。まだ襲名前の染五郎&亀治郎時代でした。あのときも素敵だったけれど、今まさに充実のときを迎えている二人のお芝居、見逃せません!! 写真/みなもと忠之

■油まみれの殺し場では、与兵衛の狂気に酔いしれる!?

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↑2018年7月大阪松竹座にて行われた舞台『女殺油地獄』より。家の金欲しさに家族をだまし、継父・徳兵衛(中村歌六)や妹・おかち(中村壱太郎)にも暴力を振るう超ロクデナシの与兵衛(幸四郎)。今の言葉で言うと、クズとかゲスって言葉がぴったりの男です。©松竹株式会社

小僧 それにしても与兵衛って、とんでもないヤツですよね。私もオフシアター歌舞伎で観ましたけれど、話の最初のほうは、甘やかされた油屋のぼんぼんっていう感じで憎めないところがあるものの、次第にとんでもない悪人になっていって、その豹変ぶりにぞぞ~っとしました。

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↑一方のお吉(猿之助)の家庭は、いたって円満。二人のかわいい子どもにやさしくて働き者の夫・七左衛門(中村鴈治郎)。まさかこの晩、凄惨な事件に巻き込まれるとは思っていない二人。©松竹株式会社

部長 幸四郎さんは、「与兵衛は破綻した人間だけれど、本能のまま、生きているところはある意味、魅力的」だと言っていたわ。「嘘をつくときも遊ぶときも謝るときも怒るときもすべて100%で中途半端がない。どの瞬間も与兵衛であることを意識して演じた」って。それと殺しの場では、「最初は恐怖を感じているけれど、それが次第に快楽に変わっていくという心の動きを表現した」と言っていたけれど、映像だと、与兵衛の細かい心理描写がとてもよくわかるの。ニヤッと微笑むのよ!!

小僧 なるほど。映像だとアップになるから、微妙な表情の変化が読み取れるんですね。

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↑与兵衛の継父・徳兵衛(中村歌六)と、母・おさわ(坂東竹三郎)。与兵衛を勘当したものの心配で、息子にお金を渡してくれと、お吉のところへやってくる。子を思う親の愛情に思わず涙。その様子を陰で聞いて、与兵衛も一度は改心の気配を見せるが、結局は悪へと突っ走る。©松竹株式会社

部長 そう。お吉に「いっそ不義になって、(お金を)貸してくだされ~」って迫るときの与兵衛の下心見え見えの目つき、生々しくてたまんなかったわ。キラリ~ンって目が光るの。それがドアップで写し出されるわけ。また幸四郎さんの関西弁がいいっ!! 揺れのある声に迷いと殺意が入り交じっていて。もう……好き♪

小僧 えええっっ、好き!? ヤバい男なんですよね!?

部長 ハア~、小僧もまだまだね。そのダメさとか、狂気の中に、色気とか美しさを垣間見るのが芸術ってもんよ。ただのダメ男じゃないのよ。色悪なのよ!!

小僧 そういうもんですかねぇ。

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』で幸四郎に酔う!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い#09】_16

↑お吉を殺すことを考えはじめるものの、最初は恐れ、戸惑う与兵衛。それが次第に狂気へ駆り立てられ、躊躇なくお吉を襲う。その微妙な心の変化を目配りひとつ、視線ひとつで表現する幸四郎さんがすごいっ!! ©松竹株式会社

小僧 だけど裏切られた両親もかわいそうだし、あとに残されたお吉の小さな子どもたちもかわいそうだし、なんとも救いのない話ですね。

部長 江戸時代に上演されたときにはセンセーショナルすぎて、すぐに打ち切られたとか。もしかしたら油屋からクレームがきて上演が中止になったんじゃないかって、幸四郎さんが言ってたけど、ありえるわね(笑)。

部長 また、お吉役の市川猿之助さんが素敵なの。凛としていて、夫と子どもを大切にしている良き妻で、狂気とは無縁の人。だから最初は与兵衛を疑いもしないっていうところからの突然の恐怖がすごくリアルで。「死にとうない 死にとうない」っていうセリフが心に響いたわ。

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↑油まみれでくんずほぐれつ。ある意味、エロティックなニュアンスもある殺し場。見せ場だけど、拍手をためらうほど狂気を秘めたシーン。エンディングのタイトルバックで流れる音楽がメジャーコードで終わったのが、かえって切ない感じでした。©松竹株式会社

小僧 クレームで中止って、なんか今と変わらないですね。考えてみるとこの物語も家庭内暴力とか、息子で苦労する親だとか、借金背負って人殺しとか、人間って昔も今もあまり変わらないんだなって思いました。

部長 普遍的なテーマだから、今でも人気の演目なのかも。とにかく「監督と話し合って、今出来ることのすべてが詰め込まれた作品に仕上がった」と幸四郎さんが言っていたように、これからのシネマ歌舞伎の可能性を感じさせる意欲的な作品になっていることは確かよ。

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↑これからも数々の名舞台をうみだしていくに違いない幸四郎&猿之助のカップルから目が離せない!! ちなみに幸四郎さん、12月は国立劇場で、あの喜劇王・チャップリンの名作映画『街の灯』を原作としたチャップリン歌舞伎『蝙蝠の安さん』(こうもりのやすさん)に出演。こちらも楽しみ~♪ 写真/みなもと忠之

小僧 歌舞伎初心者でも大丈夫ですよね?

部長 初心者にこそ、シネマ歌舞伎はおすすめよ。とくに今回のシネマ歌舞伎は、幕間にストーリー解説が字幕で入っていたから、歌舞伎初心者のカメラマンのさとやんは、すごくわかりやすくて、映画を楽しめたと絶賛してたわ。だから小僧もシネマ歌舞伎『女殺油地獄』、絶対に観に行って!! 11月17日には、またトークショーつきの上映もあるんですって。

小僧 マジですか!!  行きます、それ!!  色悪の幸四郎さんに酔いしれたいと思います!!

■東劇にて松本幸四郎登壇『女殺油地獄』舞台挨拶開催決定!

 11月17日(日) 12:15より『女殺油地獄』本編上映後、

14:00頃よりトークイベント

場所:東劇(03-3541-2711)

東京都中央区築地4-1-1 東劇ビル3階

登壇者:松本幸四郎(予定)

料金:一般 2,100円/学生・小人 1,500円

東劇ホームページ、東劇窓口にてチケット発売中。

■シネマ歌舞伎『女殺油地獄』

監督:井上昌典(松竹撮影所)

舞台監修:片岡仁左衛門

出演:松本幸四郎 市川猿之助 市川中車 市川高麗蔵 中村歌昇 中村壱太郎 大谷廣太郎 片岡松之助 嵐橘三郎 澤村宗之助 坂東竹三郎 中村鴈治郎 中村又五郎 中村歌六

ストーリー: 油屋を営む河内屋の与兵衛は、放蕩三昧で借金の返済に困り、継父・徳兵衛や妹にまで手をあげる非道ぶり。見かねた母・おさわが勘当を迫ると自棄を起こして家を飛び出す。行き場を失った与兵衛は、同業の油屋・豊嶋屋の女房お吉のもとへ向かい、金を無心するが断られると態度を豹変。お吉に刃を向けるのだった。実在の事件を基に近松門左衛門が若者の孤独と狂気を描いた衝撃作。2018年7月大阪松竹座での公演をもとに、あらたに映像作品として蘇らせた。

■上映劇場・上映スケジュール

https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/42/

取材・構成/バイラ歌舞伎部 

舞台挨拶撮影/齋藤晴香

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 

バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、オーバー40歳の熟年役者好き。

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