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松本白鸚さんが『十月大歌舞伎』に出演中!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯20】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月ご紹介するのは、ご存知、松本白鸚(はくおう)さん。現在、歌舞伎座で『十月大歌舞伎』に出演中で、第二部『双蝶々曲輪日記 角力場(ふたつちょうちょうくるわにっき すもうば)』で、濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)を勤めています。先月行われた合同取材会では、久しぶりの舞台にかける熱い思いを語ってくださいました!!

松本白鸚さんの十月大歌舞伎取材会

↑9月、合同取材会に臨む白鸚さん。久しぶりの取材会でしたが、とってもお元気そう。シックなお着物がよく似あっていて素敵♪ 

■ゴージャスで、気迫あふれる白鸚さんの濡髪長五郎

まんぼう部長 ちょっと小僧!! 原稿、さっぱり上がらないと思ったら、歌舞伎座に行ってたらしいじゃないの。

ばったり小僧 ハッ!! すすすすみません。第二部『双蝶々曲輪日記 角力場(ふたつちょうちょうくるわにっき すもうば)』がどうしても観たくて行ってしまいました……。

部長 人気力士・濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)と、素人力士・放駒長吉(はなれごまちょうきち)の因縁を描いた場面よね。今月は濡髪を松本白鸚(はくおう)さんが、放駒を中村勘九郎(かんくろう)さんが演じていることで話題になってるけど、で、どうだった?

松本白鸚さんの十月大歌舞伎の濡髪長五郎

↑『双蝶々曲輪日記 角力場』濡髪長五郎=松本白鸚(H26.10国立劇場)。これまで何度か濡髪を演じてきた白鸚さん。かつらは大銀杏で、衣裳にも自身の細かなこだわりがあるとか。当時最高位だった大関らしい風格があって、めっちゃ強そう。

小僧 めちゃくちゃ良かったです!! 白鸚さん、出てきただけで錦絵のようなんですよ。衣裳も凝った作りだし、お化粧のせいか、目力もすごくて迫力満点で。濡髪って、怪力で器の大きい男なんですけど、そういう大物感が漂いまくってました。

部長 わかるわ~。重厚で風格のある雰囲気、さすが白鸚さんよね。

小僧 一方の放駒は、やんちゃでお調子者というキャラ。勘九郎さんが演じると愛嬌があって小気味よくていいんです。勘九郎さんは、もう一役、山崎屋の与五郎っていう若旦那役もやっているんですけれど、そっちもコミカルでかわいらしくて素敵でした♪ 最後に濡髪と放駒がそろって大見得をするところはかっこよかった~!!

部長 ああ、もうそれ以上、言わないで! 私は来週、観に行くんだから、もう黙って!!

■コロナ禍で「もう歌舞伎はできないかも」と思った時期も

部長 それにしても白鸚さんは、御年78歳なのに、お元気に舞台を勤められていて、すごいことよね。

小僧 本当に。年齢など感じさせないほど、気迫がみなぎっていました。じつはワタクシ、9月に白鸚さんの合同取材に出席いたしまして。エッヘン!!(←『図夢歌舞伎』口上人形風)

部長 そうだったわね。私はスケジュールが合わなくて、残念ながら行けなかったのよね、チッ。

松本白鸚さんの十月大歌舞伎合同取材会にて

↑含蓄のあるお話から、ユーモアあふれるコメントまで、とっても話上手。まるでお芝居をみているようで、思わず引き込まれました!!

小僧 そのとき、白鸚さんがコロナ自粛中、かなり落ち込んでいた時期があって、自分の年齢を考えると、「もう歌舞伎はできないかなと思う時期もあった」と話していたんですね。

部長 なんですって!? コロナ自粛中に、バイラ歌舞伎部で若い役者さんを取材したときは、みんな比較的前向きに考えていたけれど、経験を重ねた俳優さんたちは、かなり切実に危機を感じていたということね。

小僧 だと思います。「歌舞伎というのは、衣裳やかつらに対抗できるだけの体力や気力、そして声量が要求されます」とおっしゃっていたように、歌舞伎俳優って、私たちが思う以上に肉体的にも精神的にもタフさが必要とされると思うんですよね。

部長 そうね。毎日、舞台に立っていれば、それが日々の鍛錬となるけれど、今回は半年以上、舞台に立てなかったわけで、ベテランほど、「もとに戻れるだろうか」って、そのブランクの重みを感じていたに違いないわ。

松本白鸚さんの歌舞伎座での十月大歌舞伎

↑初めて濡髪を演じるときは、父・初代白鸚に教わったそう。「何度稽古しても『ダメだ』って言うんです。でもどこがどうダメなのかは言ってくれない。自分で稽古して、舞台を観て、先輩たちの間に入って……自分で考えてやれっていう人でした」。

小僧 白鸚さんは、3歳で初舞台を踏んで以来、こんなに長く舞台から離れていたことがなかったそうなので、急に日常を奪われてお辛かったと思います。でも、いろいろ考えた末に、「俳優っていうのは、やっぱり芸をお見せするしかない」「歌舞伎俳優は、歌舞伎をやるしかない」という結論に達したそうです。

部長 歌舞伎俳優にとっては、「NO KABUKI, NO LIFE」ってことね。

小僧 「裏方さんも表方さんも含めて、苦しみを勇気に、悲しみを希望に変えるのが私たちの商売。つい自虐的な言葉も申しましたが、どっこい心は負けるもんかという気持ちです」と力強くおっしゃっていました。「10月の舞台に自分の命をかける」とも。『角力場』には、そんな白鸚さんの凄まじい気迫を感じました。

■息子・幸四郎さんが手がけた『図夢歌舞伎』に対抗心!

小僧 取材会での白鸚さんは、真面目な話しもしつつ、ちょいちょいおかしみあふれるコメントをはさんでいて、そこも好きでした(笑)。今回、共演している勘九郎さんの話になったときは、高麗屋と中村屋との縁を感じるエピソードがおもしろくて。

部長 なになに?

松本白鸚さんの十月大歌舞伎での双蝶々曲輪日記

↑「(昔話をするたびに)家内に『過去の話はもうしなくていいから。前を向いて突き進んで』と言われております」と自嘲気味に笑いをとる白鸚さん。奥様との楽しい日常が垣間見えるひとときでした。

小僧 勘九郎さんの初舞台(1987年1月『門出二人桃太郎』)では、白鸚さんが家来の犬をやったそうなんですけど、勘九郎さんの長男・次男の初舞台(2017年2月『門出二人桃太郎』)では、白鸚さんの息子の幸四郎さんが犬をやったそうです。さらに勘九郎さんのお父さま、故・18代目中村勘三郎さんの初舞台では、白鸚さんのお父さんも出演されたとか。

部長 親子で犬のお役。それ、すごいご縁だね(笑)。

小僧 それと印象的だったのは、息子の幸四郎さんが手がけた『図夢歌舞伎』の話になったとき、幸四郎さんの健闘をたたえつつも、「自分にあれができないとは言いません。もっと飛んだ生き方をしてきましたから」ってライバル心を燃やしていたこと。まだまだ!と思いました。

松本白鸚さんの十月大歌舞伎の双蝶々曲輪日記 角力場

↑二代目松本白鸚/1942年、東京都生まれ。八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)の長男として生まれる。46年5月、 松本金太郎を名乗り初舞台。49年9月、六代目市川染五郎を襲名。1981年10月・11月、九代目松本幸四郎を襲名。2002年8月、「ラ・マンチャの男」が帝国劇場で上演1000回を迎える。2008年10月、「勧進帳」武蔵坊弁慶 奈良・東大寺「東大寺奉納大歌舞伎」で上演1000回を達成。2018年1月・2月、二代目松本白鸚を襲名。十代目松本幸四郎、女優の松本紀保、松たか子の父でもある。

部長 そりゃそうよ。白鸚さんは歌舞伎俳優でありながら、これまでさまざまなチャレンジをしてきた先駆者。ブロードウェイやウエストエンドで英語での公演に挑戦したり、演出家の三谷幸喜さんとタッグを組んで舞台やドラマに取り組んだり。ミュージカル『ラ・マンチャの男』では、50年に渡って主役を演じ続けて、昨年には通算上演1,300回を達成したというレジェンド。

小僧 そうですね。コロナ禍を超えて、今まで以上に凄みのある白鸚さんが観られそうです。

部長 ますます来週の歌舞伎座が楽しみになってきたわ!今月の歌舞伎座は、まだ4部制で、一部の時間が短く、お値段的にも初心者向け。バイラ読者のみなさんもこの機会に歌舞伎座へレッツゴー!

松本白鸚さんが『十月大歌舞伎』に出演中!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯20】_7

■「十月大歌舞伎」

2020年10月2日(金)~27日(火)

東京都 歌舞伎座

【休演】8日(木)、19日(月)


第1部 午前11時~

「銘作左小刀 京人形」(めいさくひだりこがたな きょうにんぎょう)


左甚五郎:中村芝翫

女房おとく:市川門之助

娘おみつ実は義照妹井筒姫:坂東新悟

奴照平:中村福之助

栗山大蔵:中村松江

京人形の精:中村七之助


第2部 午後1時30分~

「双蝶々曲輪日記 角力場」(ふたつちょうちょうくるわにっき すもうば)


濡髪長五郎:松本白鸚

藤屋吾妻:市川高麗蔵

茶亭金平:松本錦吾

山崎屋与五郎 / 放駒長吉:中村勘九郎


第3部 午後4時20分~

梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場」(かじわらへいぞうほまれのいしきり つるがおかはちまんしゃとうのば)


梶原平三景時:片岡仁左衛門

六郎太夫娘梢:片岡孝太郎

俣野五郎景久:市川男女蔵

奴菊平:中村隼人

大名山口十郎:市川男寅

同 川島八平:中村玉太郎

同 岡崎将監:中村歌之助

囚人剣菱呑助:片岡松之助

大庭三郎景親:坂東彌十郎

青貝師六郎太夫:中村歌六

※囚人剣菱呑助の「呑」は異体字が正式表記。


第4部  午後7時30分~

映像×舞踊 特別公演「口上」(こうじょう)「楊貴妃」(ようきひ)


口上/楊貴妃:坂東玉三郎

◆「十月大歌舞伎」詳細
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/687/


◆公演チケット情報 チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほかで発売中。


◆チケットに関するご案内

歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」

https://www.kabuki-bito.jp/ticket.html

取材・構成/バイラ歌舞伎部  

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。

バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。

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