おうち時間が増えたことで“美味しいコーヒーをゆっくり味わいたい”人が急増中。今回は、おうちでできる美味しい淹れ方をバリスタ西口貴裕さんに教えていただきました。ぜひ、コーヒーと奏でる豊かな時間を味わってみて。
【珈琲】
最もポピュラーな嗜好飲料であり、今では家庭で豆をひいてコーヒーをいれる人も多くなった。精神的休息として飲まれることが多い
岩波 現代短歌辞典
本の中のコーヒー/あの本に描かれる読むコーヒー
朝起きて、最初にすることは、珈琲を淹れることだ。
顔を洗うより、歯を磨くより先。
珈琲を淹れることは、習慣というよりはむしろ儀式のようになっていて、これをしないとなんとなく落ち着かない。一日が始まらないというか、なんというか、だ。
例えば珈琲を飲む時間もないままに外出、などということがあると、その日は一日しまらない、うまくゆかない。こうなると、儀式というより、ジンクスみたいなものだろうか。左足から靴を履かないとだめ、とか、横断歩道は白いところしか踏んではいけない、とか、そんな感じである。
中略
お昼すぎであろうが、夕方であろうが、ここから私の一日が、始まる気がする。一口飲んで、美味しい、と思わずため息。そして思う。今日も私は健康だ。生きてる。ああ、ありがたいなぁ、と思う。
『ごはんぐるり』〜「珈琲儀式」
西加奈子(NHK出版)
「一杯一杯こんな風に淹れるんですか?」
「挽きたての方が断然美味しいので。時間はかかっちゃうんですけど」
「すごい……!」
「まさに義理と人情の珈琲ですね」
『珈琲いかがでしょう』第1巻
コナリミサト(マッグガーデン)
コーヒー革命!
今まで飲んでいたのは何だったのだろう。
以来、わたしの一日はコーヒーで始まり、食後に一杯、疲れたら一杯、煮詰まったら一杯、と多い時には一日四、五杯飲んでいる。
そうするうちに、コーヒー庶民の舌は少しずつ進化を遂げていったのかもしれない。
どんなお店のコーヒーも、どこか物足りないし、何か違う。外出すると、早く家に帰ってコーヒーを飲みたい、と思う。お客様に、コーヒーだけは自信を持ってお出しできる。
家で飲むコーヒーが一番おいしい、なんてものすごく幸せなことだ。
『山猫珈琲 下巻』
湊かなえ(双葉文庫)
心と体にぐんぐんしみ入る。コーヒーは人生を豊かにする、マジカルな飲み物
バリスタに学ぶ、おうちでできる美味しい淹れ方
【Black】ハンドドリップで、基本の一杯
専用のマシーンがなくても、ドリッパーと紙フィルターがあれば誰でも簡単に淹れられる!
1.ドリッパーに紙フィルターをセットし、ポットで全体に湯を注ぐ。このひと手間でコーヒーの成分がカットされにくく
2.細挽きにしたコーヒーの粉を入れ、平らにならす。カップ1杯分(180㎖)につき、コーヒーの粉は12gが目安
3.注ぎ口が細いポットや急須で90℃前後の湯を3回に分けて注ぐ。最初は粉を全体にぬらす30㎖程度を注ぎ、蒸らす
【ポイント】ドームを作るように
4.3回に分けて注ぎ、コーヒーの成分を余すところなく抽出。粉がふくらんだら2投目へ。円を描くよう100㎖注ぐ
5.3投目で残りの湯を注ぐ。抽出し終わったらドリッパーを外し、カップにコーヒーを注ぎ、召し上がれ
【Caffe latte】心なごむ、優しい美味しさ
コーヒーの苦みやコクと、ミルクの優しい味わいが見事にマリアージュした癒しのドリンク
ブラックよりも濃いめのコーヒー(8gの粉に対し100㎖の湯を注ぐ)で淹れるのがコツ。コーヒーとミルクの割合は1:2、ミルクは甘みが出やすい60〜65℃がベスト。バニラエッセンスやラム酒を加えても
バリスタ
西口貴裕さん
「コーヒーの粉は新鮮なものを使いましょう。冷暗所で2週間、冷蔵庫なら密閉式の保存袋に入れて1カ月以内に使うのが目安。優しく淹れると、コーヒーはぐんと美味しくなりますよ」
撮影/伊藤徹也 取材・原文/広沢幸乃 構成/渡辺敦子〈BAILA〉 ※BAILA2021年10月号掲載