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コロナ禍で一緒にいる時間が増えたことで夫婦の間に溝が...どうするべき?【読者のお悩みに姜尚中さんが回答! 】

バイラ読者から届いた声に、政治学者の姜尚中さんがアドバイス。 今回は、在宅勤務で夫と一緒の時間が増え、相手の行動にイラつくことが多くなったというお悩み。姜さんの回答は?

〈お悩み〉在宅勤務で夫と一緒の時間が増えたのですが、相手の行動にイラッとくることが増えました(S・36歳・メーカー)

結婚3年目です。二人とも在宅ワークが増えましたが、家が狭くて気づまりです。また、家にいると食事の支度など、家事はいつも私。その間、夫はゲームをしています。イラッとしますが、所詮こんなものとあきらめています。夫とはお見合い結婚で、さほど好きでもなく結婚したのですが、会話も少なく、どんどん溝が深まっています。

二人の溝は、コロナがなくてもいつかあらわになったと思います──姜

夫婦の関係は、常に絶えざる形成の途上にあるのです──姜

「結婚は人生の墓場だ」というのは、フランスの詩人ボードレールの言葉です。もとの意味とは違い、日本では結婚を否定的にとらえる言葉として知られていますが、なぜ結婚が墓場かというと、結婚すれば一件落着と思って、お互いを思いやったり、二人の関係をうまくつくっていこうという意識が薄れるからだと思います。

しかし夫婦の関係というのは、その時々によって、絶えず変容していくものです。結婚当初と3年後では、また違いますし、子どもができて、運命共同体となったときも、ひとつ違うステージへと変わります。さらに子どもが巣立ち、再び「おふたりさま」になったときには、これまでとは、また違う結びつきとなります。血のつながりがない二人の関係は、常に絶えざる形成の途上にあるのです。

しかしSさんの悩みをみると、結婚して数年で、自分と夫の関係を「これ以上、変わりっこない」と見限っているところがあります。これでは、二人の間の溝はどんどん大きくなるだけです。

大切なことは「所詮こんなもの」というようなシニカルな考えを捨てることです。そしてよりよい関係をつくるために、「自分はこうしたい」「こういう関係性を築きたい」と話し合ってください。

Sさんは「この人でなければならない」ということで、結婚したわけではないようですが、一緒に暮らすなかで、「この人でなければならない」関係になることもあります。月並みですが、お互いの努力があって、夫婦関係は初めて成り立ちます。相手に求めることがあるのなら、言葉にして伝える手間を惜しんではならないと思います。

『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』  姜尚中著  集英社 1650円 1月26日(水)発売

1月26日(水)発売!『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』 
1月下旬に上梓される本書は、2010年から2021年まで、女性誌で連載されていた姜さんの人気連載をまとめたもの。この間、東日本大震災、中国の台頭、トランプ大統領の誕生、新型コロナウイルスのパンデミック……と、世界も日本も揺れに揺れた。そんな不安社会の構造を姜さんが読み解き、苦しみや悲しみを乗り越えて生きていく術を示してくれる、現代の救済の書。劣化する日本の政治、変わりゆく知のカタチ、ジェンダーをめぐる攻防、問われる人間の価値、不透明な時代の幸福論とテーマも刺激的で、知的好奇心が満たされること間違いなし!!

『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』 
姜尚中著  
集英社 1650円

姜尚中(かんさんじゅん)

姜尚中(かんさんじゅん)


1950年、熊本県生まれ。東京大学名誉教授。長崎県鎮西学院学院長。熊本県立劇場館長。専門は政治学・政治思想史。著書に『悩む力』『漱石のことば』『母―オモニ―』『トーキョー・ストレンジャー』など多数。

撮影/渡部 伸 イラスト/塩川いづみ 取材・原文/佐藤裕美 ※BAILA2022年2月号掲載

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