女優の柚希礼音さんが、9月5日(月)より新国立劇場 小劇場にて開幕となる新作ミュージカル『COLOR』に出演。記憶喪失になった息子を支える母役を熱演します。作品にかける思いや、ご自身の家族についてのエピソードを伺いました。
「奇跡の物語」を演じるのは、責任重大。本当の“母”の気持ちを探っています
本作は、草木染作家・坪倉優介さんが自身の体験を綴ったノンフィクション『記憶喪失になったぼくが見た世界』をベースとしたミュージカル。
「原作を初めて読んだときは、衝撃でした。まさか人生の中でこんな体験をしている人がいるなんて、と。途方にくれて落ち込みながらも母と手をとり合い、ちゃんと前を向いて歩きだす奇跡の物語です。メッセージ性の強い作品だけに、演じる側は責任重大だなと思いました」
取材をしたのは、本格的な稽古が開始される前のリーディングワークショップが行われた頃。柚希さんは、母役をどう自身に取り込んでいくのか。
「役って、ネタが多ければ多いほど掴みやすいんです。例えば歴史上の人物だと、調べれば調べるほどその人のことがわかっていく。けれども今回は、実在の人物をモデルにしているとはいえ、ネタは原作の本の中のみ。
原作を何度も読み返していますが、今はまだ読者の気持ちかな。ここから、本当の”母”の気持ちを探っていきます。実際に自分の家族がそうなったら? また、私の母ならどうするんだろう、と考えたりもしています」
「2階の奥の席にもファンがいてくださる」と教えてくれた母
高校生の頃に宝塚音楽学校へ入学した柚希さん。タカラジェンヌを目指す前はバレエに夢中で、バレリーナになりたかったのだとか。
「母はバレリーナへの道を応援してくれたのですが、父が反対して。バレリーナは一握りの人しか食べていけないから、と心配されたんです。宝塚音楽学校時代は実家から通っていましたが、少しつらいことがあっても、家族には、“大丈夫、楽しんでる”って言っていましたね」
その後、柚希さんはタカラジェンヌの道を順調に歩き始め、見事トップスターへと上りつめた。
「トップになると、母にも友人にも言わないこと、言えないことが増えましたね。ただ、舞台に上がるようになってすぐ、母に『2階の奥の席にもファンがいてくださる』と言われて。私が心からファンの皆さんを大切に思う気持ちは、母の一言のおかげだと思っています」
そして、2015年に宝塚歌劇団を退団されました。この決断は家族に相談をしたかと聞くと、「いえ、まったく」と笑顔を見せ、「両親は驚いたとは思いますが、これは私の人生なので」ときっぱり。
今は、失敗を恐れずに自分が“演じたい!”と思う役に挑戦しています
宝塚歌劇団退団後、仕事で決断を迫られることが多くなったという柚希さん。
「退団直後は、“男役”としての自分を見てくれているファンの方が多いと思い、女優として活動を始めたのに、そのイメージを保とうと必死でした。けれども、女性役を演じたとしても応援し続けてくれる方もいてくださって。今は自分の“演じたい!”と思う心のままに仕事をお受けしています」
今回のミュージカル『COLOR』では、同じ母役を演じる濱田めぐみさんとのダブルキャストも楽しみだそう。
「宝塚歌劇団時代に『王家に捧ぐ歌』に出演が決まった際、劇団四季の『アイーダ』を観に行かせてもらいました。そのときにアイーダ役を演じられていたのが濱田さん。“なんて素晴らしい表現力を持っている方なんだ!”と感動したのですが、そんな方と同じ役を務めることができて、本当に嬉しいです。
濱田さんがどのように“母”になっていくのか、稽古場でしっかり目に焼き付けたいと思います」
舞台は毎日変わる。役にストンと入って演じられる瞬間は仕事のモチベーションのひとつです
「今回の役は探っていきながら稽古して、きっと、本番になっても発見があると思いますね。舞台は毎日変わるし、役がストンと自分の中に入って演じられる瞬間は、私の仕事のモチベーションのひとつです」
そんな柚希さんから、仕事や子育てに頑張る@BAILAの読者へのメッセージ。
「仕事や人間関係、お子さんを大事にするあなたもステキですが、でもやっぱり自分を大切にしてほしい。ずっと笑顔でいるために、心の平穏を保つために、自分の気持ちに素直になってみてほしいですね」
働く女性として憧れの存在である柚希さんが、全身全霊で”母”を演じる『COLOR』。一期一会の舞台を、ぜひリアルタイムで味わいたい。
『COLOR』公演情報
〈東京公演〉
期間:2022年9月5日(月)~9月25日(日)
会場:新国立劇場 小劇場 主催・企画制作:ホリプロ
〈大阪公演〉
期間:2022年9月28日(水)~10月2日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ 主催:サンケイホールブリーゼ
〈愛知公演〉
期間:2022年10月9日(日)~10月10日(月祝)
会場:ウィンクあいち 主催:中京テレビ放送
出演(五十音順・ダブルキャスト):
浦井健治・成河(ぼく/大切な人たち) 濱田めぐみ・柚希礼音(母)
原作:坪倉優介『記憶喪失になったぼくが見た世界』
音楽・歌詞:植村花菜 脚本・歌詞:高橋知伽江 演出:小山ゆうな
撮影/イマキイレカオリ ヘア&メイク/藤原羊二(UM) スタイリスト/間山雄紀(M0) 取材・原文/米田果織 構成・文/BAILA編集部
(柚希さん衣装)ショートカーディガン¥159500・ロングドレス¥178200・ネックレス¥82500/すべてアオイ(ファビアナ フィリッピ) ピアス¥18700/アッシュ・ペー・フランス)(ジェム キングダム)
(問い合わせ先)アオイ 03-3239-0341 アッシュ・ペー・フランス 03-5778-2022