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心を解きほぐしてくれる本【きみは赤ちゃん】

こんにちは、東浦真帆です。
今日はいつもと打って変わって、本のご紹介をさせて頂こうと思います。  

「 本には旬がある」とよく言うじゃないですか。同じ本でも「今、このタイミングで読んだからこそぴたりとハマる」というやつです。そうなると本当に一生の思い出、宝物になったりもする。少し前にまさにそんな体験をしました。私以外にもこの本に心救われる人が居たら嬉しいです。

とは言えかなり長くなるので、これはもう自己満記録のような領域。(笑)
片手間にでも読んで頂けたら嬉しいです、、、。

心を解きほぐしてくれる本【きみは赤ちゃん】_1

【本の概要】   

作家の川上未映子さんが自身の妊娠・出産・1歳を迎えるまでの育児について綴ったエッセイ

日記のような、詩のような、川上未映子さんの言葉で綴られる赤ちゃんと過ごす日々を少し離れたところで仮体験するような手触りの文章です。妊娠から出産、産後の育児までの奥深さが、軽やか且つユーモアあふれる文体で描かれてて、くすっと笑いつつも、この本を閉じる時には、涙で文字が霞んでいました。

【心に響くリアルな言葉たち】 

この本の中で、特に私の心に残った箇所をピックアップしてみます。 

とにかく無事に生まれてきたのと出産が終わったのとで胸というか世界というか…認識している全てが、こう、世界のどこからかこみあげてくる、これまでみたことも触ったことも味わったこともないもので満たされていて、息をしてそれが揺れるたびに、涙が溢れてどうしようもなくなる

きみは赤ちゃん/川上未映子 著  

自分のお腹から赤ちゃんが出てきた瞬間が鮮明にフラッシュバックされ、胸が熱くなりました。私もあの瞬間、今まで体感したことのない感情に包まれ、心臓の音が聞こえそうなくらいバクバクして涙が溢れたのを、昨日のことのように思い出しました。

生まれたばかりの息子がただ存在しているだけで胸の底から愛しいと言うかかわいいというか、なんと言ってよいのか見当もつかない気持ちで溢れているのに、それと同じだけ、こわいのだ。 

きみは赤ちゃん/川上未映子 著   

産後2日目の母子同室の夜に私も全く同じ感情を持ちました。トツキトオカお腹の中に居た赤ちゃんがいきなり目の前に現れて、その命というか存在があまりに尊く、あまりにもろく、頼りなくて、何もかもが奇跡のようなあやうさで成り立っている、というこわさ。初めての感情でした。

自分が生まれてきたことに意味なんてないし、いらないけど、でもわたしはきみに会うために生まれてきたんじゃないかと思うくらいに、きみに会えて本当にうれしい。 


きみは赤ちゃん/川上未映子 著

四六時中、息をしているか不安で、おくるみが顔に巻き付いていないかな、唇乾いてるけど、脱水になってないかな、とか。とにかくあらゆる不安と、命を守っているという緊張状態の日々。そのどれもがきっと母親みんなが一度は経験した夜であり、想いではないでしょうか。そんな感情もひっくるめて、君に会うために生まれてきたんじゃないか、と心底思うのです。

産後、お母さんのからだは満身創痍。まじで満身創痍。
いっそそれをみてる夫側に、満身創痍ってタトゥー入れたいぐらい。


きみは赤ちゃん/川上未映子 著  

「産後のダメージは全治1〜2ヶ月の交通事故レベルです!」

パートナーに、

「産後1年間はホルモンバランスが崩れっぱなしだから、本当の私じゃないと思っていて欲しい。」「産前産後は特に優しくして、甘やかしてね、協力してね。」
と言う点はしっかり伝えておくと良いよ!

など先輩ママや助産師さん達からは耳にタコができるほど聞いていました。でもそんなどの言葉たちよりも、このパワーワードにぐっときたのでした。

育児の現実的な疲労に加えて、産後の女性ホルモンのバランスの崩れからくるお母さんの、絶体絶命感。
私は率直に思った。赤ちゃんが可愛いとか可愛くないとかそういうのと別の次元で、「眠れない」ということが精神と肉体をどれだけ破壊するものなのか、私は自分が体験するまで、まったく知らなかった。


うとうとしたら冷水をかけられるみたいにして起こされ、意識が朦朧とする中、産後でぼろぼろの身体を丸めて、ずうっと同じ姿勢でかちかちのおっぱいを含ませ続ける。首も肩も、背中も限界。泣き続ける赤ちゃん。そりゃ涙もとまらなくなるよ。泣いてるんじゃなくて、もう、ただただしんどくて、限界で、涙が勝手に垂れてくるんだもの。


今がいつで何時なのか、赤ちゃんの記録もつけているし時計も見ているから文字や数字としてはわかってはいるんだけれど、でも、体にその感覚がまったくないんだよね。眠らないし、回復がないから、一日に終わりというものがないのだ。まるで長い一日の最初にいつもいるようなそんな感覚。もちろん個人差はあるだろうけれも、私の場合、おかしくならない方が、おかしいような。


きみは赤ちゃん/川上未映子 著 

はぁ、と思わずため息が出るほど、共感の嵐でした。
これまで、育児の大変さというのは至る所で耳にしてきたし、大体のことはそれなりに理解しているつもりでした。しかし実際に妊娠&出産をしてみると、これまでの理解はどこまでいっても言葉によるそれであり、当然の事ながら「身体」だけがごっそり抜け落ちていたのです。例えば、8ヶ月くらい毎日2.3時間睡眠です!という文章を読むと、うわぁー大変、辛そうだなと素直に共感できるのですが、実際にそれを経験するのと、その"共感"というものは何の関係もないことだと、身をもって思い知ったのです。身体に関わらず精神だって、そのしんどさの本質というのは、どこまで行っても自分だけのものでした。つまり、この身に起きていることの一切は誰にも伝えることができない。そしてこれがひどく堪えるのです。
私は第一子の時もしっかり睡眠不足を経験していたのですが、2人目を産んだ後のそれは、もう本当に段違いでした。睡眠不足って本気で人格を破壊していくのだと痛感。眠りたいときに眠れない、しかも自分の子の命がかかっているって猛烈に、!心底辛いのです!!!

親というかわたしというかは勝手なもので、ふだんは『個性』とか『独特の意気ごみとか姿勢』とかを広く善しとしているのに、こういう基本的なことに限っては『標準』を強く求めているのだから、なんだかなあ。


きみは赤ちゃん/川上未映子 著 

赤ちゃんが健診で標準的に育っていることがわかって安堵するシーンなのですが、この子の個性を大切にしたいと考えている一方で体重が順調に成長曲線の真ん中を貫いていると、この上なく安心する。赤ちゃんはみんな違うのだから、比べたり周りと違うからって焦る必要なんてない、と分かってはいるつもりが、少しでも気になることがあると検索魔となり、我が子の事になるともうそれは感情が穏やかではなくなるのです。そしてホルモンバランスや寝不足の積み重ねが、ちょっとした不安を大きく大きくしていくのですよね。

夫が望んでも望まなくても、平日の家事と育児は妻がやるしかそりゃなくなるよ。でも、それを夫が当然と受け止めるのか、そうでないかで、気持ちってぜんぜん変わってくるものだと思うのだよね。


きみは赤ちゃん/川上未映子 著  

これは考えれば考えるほど深いなぁと。見返りなど求めず、100%好意から至った自発的な行動でさえきっと、相手が"当たり前"という姿勢で捉えた瞬間にその関係は崩れるのでは、と思うのです。逆に言うと少々しんどいことでも、相手からそれなりにありがとう、や感謝、感激!(それを求めている訳ではないにしろ)のようなリアクションがあれば気分よく続けられたり。でもこれは男性と女性の脳のつくりでも違ったりするのかな。何事も当たり前と思わず、感謝の気持ちを忘れてはいけないと痛感します。夫婦間に限らず、人付き合いに関しても考え直すきっかけとなりました。

自分がこんなふうにして泣いたこと、笑ったこと、おっぱいを飲んでいたこと、私に抱かれていたこと、こんな毎日があったことを、何ひとつ覚えていないだろう。でも、それでもぜんぜん構わないと思った。


きみは赤ちゃん/川上未映子 著 

本書のいたるところに綴られる息子への愛。
昨日できなかったことが今日はできるようになっているような、日々あっという間に変化していく子のすべてを一つも取りこぼしたくない。
私が普段抱いている息子への複雑な気持ちをそのまま言語化してくれたようで、読んでいると自分の想いをそっと撫でられたような気持ちになり、涙が溢れました。

オニ、一歳。身長75センチ、体重、9.6キロ。
オニ、生まれてきたとき、身長48センチ、体重2650グラム。ものすごく、とても大きくなった。 

きみは赤ちゃん/川上未映子 著 

この後はひたすら情景描写と単語が連なるだけの、淡々としたシーン。
本書は基本的には関西弁のほわほわとしたトーンで進んでいくのですが、それだけに、終盤のこのたたみかけるような迷いのない温かな言葉の連続には涙が止まらなくなるのです。母なら誰もが自分の子と重ねて読んでしまうでしょう。この部分はいつ読み返しても涙が堪えられません。

【最後に】

この本は、初めて母になった私の、得体の知れないモゾモゾとした感覚とか、目に見えない恐怖と孤独とか、言い表せない大きすぎる幸せとか。
そんなものを爽快に言語化してくれて、スッと心に入っていきました。そして、そんな不安や愛情や孤独感を感じているのはあなただけじゃない、とそっと寄り添ってくれる。そしてそっと背中を押してくれる。 

妊娠中、育児中、子どもが大きくなってから、読む時期によって受け取り方や思いは変わるだろうけれど、きっといつ読んでも違う涙を流せる、そんな作品だと思います。 

これから子どもを持つ人、まさに子育て中の人、子どもの手が離れた人、はたまた子どもを持つ予定がない人。パパになった人。パパになる予定がある人。 

本書をきっかけに、皆さんの毎日が、もっと、ちょっぴり、愛しくなるかも。

是非、読んでみてください!

長いのに最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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