日本の住宅の大半は、特に地方や木造の戸建住宅は建築後20~25年程度で、経済価値は0になると言われており、耐久消費財として捉えるのが一般的です。更地に戻す費用も入れると、0どころかお金を払わないと買い手がいないような住宅はたくさんあります。
そんな売主はいませんから、空き家になります。
東京にある世田谷区も、実は空き家の数が全国一です。土地の流通価格はきちんとつくエリアですが、相続人が住みたいほどではなく、もしくは複数の相続人が協議してまで分けても高値というほどではないからです。これが麻布台ヒルズの用地であれば放置されていませんから、デベロッパーも魅力を感じていないわけです。
また、日本の人口は減る一方だから家を買うなど馬鹿げている、家なんていっぱいある。という主張は少なくとも私が社会人になった10年前から根強く、賃貸vs購入トークでも必ず見かけます。
10年経ちますが、東京のマンション価格は1.5倍は上がりました、人気のエリア・物件は2倍以上になりましたね。
地方でも、例えば北海道の人口は減り続けていますが札幌に人が流入し、不動産価格は上昇しています。この集約の現象は各地で見られますし、日本の人口減で東京の不動産価格が上昇、というのは理屈としておかしくありません。
資産性とはなにか
資産性とは誰かがそれに価値を感じ、相応のお金を出してくれればあると言えます。不動産は立地がかなりの割合を占めるといっていいでしょう。
不動産に詳しい方の多くは、不動産自体に詳しいのであり、資産価値についても、過去からの推移と現状の分析に優れていますが、マクロの視点から将来性を考えるのはまた別の能力です。特に特定の街に深いネットワークを持つような場合、愛着があるので東京のニューカマーの価値観に否定的になりがちです。
各上場企業の社員が自社の株価の変動を当てられるわけではないのと一緒です。
最近23区新築マンションの平均価格が1億円を超えたことで、これまでの暴落論調と打って変わり新築・新開発が出たら急げと買い煽りをする人が増えています。
落ち着いてください。
上昇局面なら全般的にそれでいいのですが、無い袖は振れないので、一般向けのなんちゃって億ションは将来的に厳しくなります。富裕層向けの一流物件はまだ伸びるにしても、彼らは二流三流物件に興味ないので、一般の給与所得者のてっぺんを読み違えると、今トレンドの中途半端な60平米物件は思うような価格がつかなくなる可能性があります。
また、安物買いの銭失いで、23区ならどこでもいいわけではありません。
上昇局面でも値上がりしなかったエリアは基本手を出してはいけません。人気のなさにはちゃんと理由があり、いわば婚活女性がこのレベルと結婚するくらいなら結婚しないほうがよい、と判断するような物件ですから、この先参入者が増えても期待できません。
同じエリア内でも、タワマンの上昇が板マンよりずっと激しいように、タワマン選好の流れは続くとみています。中でも、東京のひと昔前の世代が江東区の臨海部にネガティブイメージを持っていたことで適正な評価をしなかった層が減る一方なことで、コペルニクス的転回によって豊洲エリアの人気等はさらに加速するでしょう。
いつの世も新しい価値観を決めるのは天動説信者ではありません。
港区内陸部にしか住めないと言っていたはずの人も、臨海エリアに引っ越し後もぴんぴんしていますし、新築にしか住めない体質だった人も、立地と面積で中古を選び元気に暮らしています。
実需から明らかに離れていない、という大原則を踏まえうえで、与信をいっぱいに使い、手が届かないような物件を無理に買うくらいが正解です。
わたしも履修済みですが、近頃は一歩引いた目で見ています。1億2千万~1億5千万くらいが一般所得者のガラスの天井で、トレンドに変化が起きると推定しています。
トレンド変化が起き中古広めに流れる?
この15年ほどのトレンドは、
立地は
・都心回帰
・駅近
物件のトレンドは、
・注目度高い新築、
・狭め
でした。
このあたりが踊り場だとすると、トレンド変化が起き中古広めに流れる?
どのあたりがガラスの天井か、横と縦の軸で見てみたいと思います。
ひとつの統計手段として「年収倍率」があります。要は「所得と不動産価格の乖離をチェック」するためですが、国によって統計基準が違うので単純比較は難しいところ。お遊びに見てみましょう。
アメリカやイギリスは世界中から資金が流入しており、あてにならないでしょう。カナダ、シンガポール、オーストラリア等の一部の大都市では外国人の不動産投資に制限がかかるほどチャイナマネーが入っており東京とは状況が違います。
地理的にも近く自国民だけで価格が動いてる中韓が比較対象としてよさそうです。
横比較
ソウル 約17~19倍
深セン 約35倍
上海 約25倍
東京新築 約13倍
(個人的な感覚)東京圏約7~ 8倍
わたし自身の感覚で言うと、東京の場合神奈川、埼玉、千葉でも上記他都市アクセスが叶うので東京圏の場率は7倍程度で、まったく実需に即していると思います。
中韓は平均的な給料ではすべてを貯金に回しても数十年間かかるという絶望的な倍率に。日本と比べ格差が大きいこともありますが、なんといっても結婚時に男性が家を用意する習慣があり、購入時に親がお金を出すのが一般的になっているのが大きいです。
東京でそうなる可能性はまあないでしょう。まわりを見渡しても女性側のほうが彼氏に結婚してもらおうと画策することが多く、男性の親が家を用意するケースはあっても、息子の所得をはるかに超えた援助をするのはあまり見かけません。
日本人の富裕層の大多数が55歳以上のシニアであるデータが示すように、富裕層の出身であっても、(資産の譲渡のタイミングが相続の時と遅いため)本人は2,30代の一次取得時では富裕層にはならず、親が援助しても数千万だけで、結婚して子どもがいても普通のサラリーマンが買える程度の家で暮らしています。
親が資産家の知人をみても、資産の額から中国の基準で言えば親が15億くらいの家を買ってあげるものですが、彼は親が用意した1億程度の家でつつましく暮らしています。
富裕層の親が桁違いの援助をしなければ無い袖は振れませんから、中韓との比較は意味がないでしょう。
東京は世界の大都市と比べ安い安いと言われますが、世界の大都市がたいてい地理的制約で面積が限られているのと違い、だだっぴろい関東平野にまんべん鉄道を引いてるので横較は、あまり意味のあるものではないと思います。
縦に10年くらい推移をみてみます。
わたしが社会人になった2014年、マンション購入に向け、不動産と株価に詳しい識者に今は買い時か尋ねました。
2011年頃に底をつき、今は回復しているが高いと思う、2011年の水準に戻ってからがいいと思うとのこと。
しかし当時家賃相場と比べ明らかに不当に安い水準でしたので、たぶんバブル後遺症だろうと思い、参考にしませんでした。
ちなみに今から見れば格安だったこの頃、メディア等は購入なんてあほや、人口は減る一方だぞが論調でした。
株価と不動産価格に相関関係はありますが、黒字倒産はあっても家賃20万のマンションに値段が付かないなんてことはありえません。我々の日々の生活に住居が欠かせない以上、家を借りますし、家賃より明らかに安い物件価格は適正とはいえません。
オリンピックを控えた2017年~2019年、オリンピック後に外国人投資家が金を引き上げ湾岸タワマンは大暴落!の合言葉をよく見かけました。この頃もわたしはまだ安いと見て購入し周りにも結婚する者がちらちらいたので薦めたものですが、聞き入れたものはいませんでした。この数年に渡って、実需のタイミングだったにも関わらず大暴落説を真に受け買い控えていた層は、少なくなかったようである。
たしかに一部メディアがセンセーショナルに書き立てた外国人投資家にとっての投資とは、一般にキャピタルゲインを狙うので、購入した部屋は空室になる。オリンピック後金を引き上げ、それを日本人が同額で買わなければ、暴落するであろう。
ならば夜に湾岸エリアにでも赴き、部屋の電気がついているかどうか、見ればいいだけである。
自分の足で歩き一目でも見れば、大暴落などはトンデモ言説であることは確認できたはず。
2020年~2022年を見ても、様子見していた実需層が多く、2023年やっと消化しだしたことで高騰というよりは適正な価格になったというところでしょう。
周りのサンプルを見ても、夫婦ともにサラリーマンの家庭はだいたい1億2000万くらいを目途に予算を決めています。日々の生活のキャッシュアウトを考えると、これ以上は難しいでしょう。親の援助も足すば1億5千万くらいまでが上限でしょうか。
富裕層や海外投資家の実需ではない、キャピタルゲイン狙いの購入は引き続き根強いですが、実需としての不動産市場はこれくらいがピークで、今後トレンドは面積広め、中古にシフト可能性があります。
ファミリーの生活利便性や居住性、出口戦略両方の最大公約で、湾岸の(価格的に中古で)駅近ファミリーマンションで80平米くらいのものを選べば、底堅い実需に支えられ出口も明るいでしょう。
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次回
・一次取得に60ではなく80を薦める理由②トレンドは面積広め、中古にシフト