初めての出会いは、たしか小学生の頃。今回読み直してみて感じたのは、この大人っぽい世界を子どもの頃の自分は、どのように楽しんでいたのだろうかということ。それくらい、大人も楽しめる上質な世界なんです。 絵の美しさはもちろんのこと、マンガだけど言葉も美しい。時に詩的に時に哲学的な言葉が紡がれます。登場人物も14、15歳とは思えない精神年齢の高さ。いちいち大人びているんです。昔の子どもは大人っぽかったんでしょうか? いえいえ、きっと今だって、心の中には大人びた気持ちを抱えている子どもたちもいるに違いありません。当時の自分は、その繊細な世界と大人びたキャラクター(中でもお気に入りはオスカー)に夢中になっていたように思います。自分も大人になったような気分ですね。大人になった今では、大人びた部分よりも、その繊細さがより心にしみます。デリケートで、やさしくて、若いからなのか冒険心というか大胆さもある。こうして考えるに、1970年代の作品とはいえ、どこにも古さを感じない。そんな普遍的な魅力に満ちた作品だということが分かります。40年以上も前に、こんな世界を生み出された萩尾望都先生、偉大すぎる!!!
舞台となったギムナジウムはヨーロッパの男子学生が通う寄宿学校。女子には知り得ない世界というのも、ワクワクのもと。これって、歌舞伎にも通じるかもしれませんね。
ちなみに、『トーマの心臓』のスピンオフに、オスカーを主役にした『訪問者』という作品もありますが、こちらも素晴らしいので、ぜひ。未読の方は、トーマから読むことをオススメします。どちらも読んで絶対損しない、不朽の名作。コミックス3冊分が1冊にまとまった文庫版も出ているので、うだる暑さの連休のお供にいかがでしょうか。ヨーロッパのさわやかな風を感じられるかも。(副編ナカディ)