ワンクリックで世界とつながり、何でも手に入る時代は便利な反面、自分にとって本当に価値あるものを見つけづらくなるもの。そこで経験豊富なスタイリストが狙う“超私的”アイテムから、その「見極め力」を学ぼう。
1.スタイリストたちの「価値あるもの・本当にほしいものの見つけ方」
「“心が躍るか”がいちばん大切。見つける作業も価値ある時間です」

スタイリスト 辻 直子さん
上品でフェミニンなスタイリングにはファンも多く、女性誌や広告、イベントのほかブランドのディレクションなど幅広く活躍。BAILAでの私服ルポも好評で、毎回人気企画に。
身につけたときに絶対似合うとか、新しいスタイルができそうとか、想像するだけで“心が躍る”ものが、私にとっての欲しいもの。 たとえばこのボッテガ・ヴェネタのニットバッグはユニークな素材使いに惹かれたものだし、ティファニーのネックレスも、自分のベースにあるちょっと’70sなコンサバスタイルに“今”を加えると面白いかなと感じたもので、本当にその時々の気分が大切なんです。ときには海外のデザイナーさんに直接コンタクトをとったり、欲しいと思うイメージがあると、見つかるまで時間をかけてどこまでも探してしまいます(笑)。世界が変わり、買い物との向き合い方が変わった今は、以前と比べてより吟味するようになりました。“本当に欲しい?”って100回自分に聞いて、それでも欲しいと思えるものに出会えることが大事。 それを手にしたときの喜びはこの上なく大きく、私にとって最高に価値のあるものなんです。
「自分だけがわかる上質感や美しさをひそかに楽しんでいます(笑)」

スタイリスト 佐藤佳菜子さん
時代のムードや気分を反映したベーシックを大切にしながらも、女性らしさが光る着こなしは、本誌でも常に人気コーディネートの上位に。結婚後渡英し、現在はロンドン在住。
イギリスに住んでいることもあり、日々の買い出しすらままならなかった自粛期間。「もう服はいらないかも」と思ったこともありましたが、帰国してさまざまなものを目にする機会が増えたら、そんな気持ちはどこかに行ってしまいました(笑)。とはいえ、もともとやみくもにトレンドを追うタイプではないし、好みはどちらかというと地味。 今、欲しいロエベのカシミヤニットもひと目ではどこのとわからないようなシンプルなタートルだったり、トッズのショートブーツも小柄な私をシュッと見せてくれるMY定番ですが、どちらも体を入れたときの立体感は格別で、着心地や履き心地のよさは感動すらしてしまうほど。そんな自分だけがわかる“上質感”を楽しめるのって、やっぱりハイブランドの醍醐味だと思うんです。確かに値段は張りますが、長く愛せる理由がある。 よりシーンレスなものが求められる時代だからこそ、究極にシンプルなものを選んでみるのも、ひとつの選択ではないでしょうか。
「使えなくては意味がないからこそ、日常に寄り添った“いいもの”を」

スタイリスト 福田亜矢子さん
卓越したセンスと知識を生かした大人のリアルクローズは、幅広い世代の女性から絶大な支持が。雑誌や広告を手がけるほか、ECブランド「N.O.R.C」のディレクターとしても活躍中。
デニムやTシャツにひとつつけるだけで風格が出るし、エッジも効いている。そんなバランス感に惹かれたエルメスの「シェーヌ・ダンクル」は、結婚指輪も買わなかったほどジュエリーが苦手だった私が、初めて欲しいと思えた逸品。今はトレンドも早いですし、どんなに頑張って“投資”しても、やがては飽きがくることも。気負って買うダイヤより、シルバーのように普段のスタイルにさらっとプラスできるもののほうが結果、長く楽しめたりもするので、どこかリアルであることも大事だと思います。ジル サンダーの「7daysシャツ」も高価なものではありますが、あくまで基本はベーシック。それでいて曜日ごとに7種類のデザインがあるので、自分に合うものが見つけやすいのもいい。50代の先輩方も素敵に着ているのを見ると、やっぱり名品なんだなと思いますね。
「実際に行って、見て、触れて…ときめきを感じるのも大事です」

スタイリスト 斉藤くみさん
トレンドを押さえた女性らしいスタイリングに、メンズライクなテイストをプラスする独自の世界観が人気。福田氏とともにディレクションを務める「N.O.R.C by the line」も大好評。
一度好きになると、色やサイズを変えて買ってしまう性分。5年間で5個同じ型のバッグを買ったこともありますが(笑)、ザ・ロウのローファーもリピートしたいほど好きな一足です。使うほどに出てくる味は上質な革の賜ですが、その味を出すまでに時間がかかりすぎるのは“気楽に楽しみたい”女性には不向き。その点これは履くごとにどんどんいい風合いが出てくるし、無骨すぎないところも気に入っています。 ボッテガ・ヴェネタの「スモール ザ・アルコ」も革の美しさに惚れ込み、すでにひと回り小さいサイズを愛用中。エコバッグを忍ばせたりと、荷物が増えたことで少し大きめが欲しくて、 狙っているところです。今はネットでも買える便利な時代ですが、こういう革のよさなどは、お店に行かないとわからないことだったりしますよね。うっとりするような革に触れて心がときめく、そんなときめきにこそ価値があるので、たまには表参道あたりをぶらぶらしてみるのもいいかもしれません。
2.自分へのご褒美に!30代スタイリストの厳選マイ・ファッションギフト
吉村友希さんの「マイ・ファッションギフト」
「品のあるフェミニンやフレンチシックなど、私らしい着こなしにフィットするレディな小物は、常に気になる存在。この冬の自分へ贈るなら、さりげなくディテールにこだわりがのぞくデザインがベスト」
松村純子さんの「マイ・ファッションギフト」
「ただ“好き”なだけではなく本当に私のスタイルに必要なのかどうかをじっくり吟味します。今どきな洒落感はしっかり醸しつつも、5年先まで現役で活躍してくれそうな“マイベーシック”なアイテムを」
池田メグミさんの「マイ・ファッションギフト」
「普段から愛用している信頼ブランドのアイテムなら手に入れて間違いなし。この冬は休日はもちろん、お仕事シーンにも気負わず使えて、フレキシブルに活躍する実用的な小物をセレクト」
高橋美帆さんの「マイ・ファッションギフト」
「スニーカーもネックレスも今の私のスタイルに欠かせないアイテム。自分へ贈るギフトだからこそ、スタンダードなものよりも、旬のカラーや遊びのあるデザインで、気分を上げたいんです」
門馬ちひろさんの「マイ・ファッションギフト」
「ここ最近、着心地がいいシンプルな洋服を選ぶことが増えたため、やや女っぽさが不足ぎみ。華やぐジュエリーとアクセ感覚で使えるバッグは、着こなしの盛り上げ役にぴったりです」
撮影/魚地武大(物)〈TENT〉、花村克彦(人)、坂田幸一(吉村さん、松村さん、池田さん、門馬さんの物) ヘア&メイク/沼田真実〈ilumini. 〉 取材・原文/伊藤真知(辻さん、佐藤さん、福田さん、斎藤さん)野崎久実子(吉村さん、松村さん、池田さん、門馬さん) 構成/岩鼻早苗、田畑紫陽子〈BAILA〉 ※( )内の数字は(高さ×幅×マチ)およびヒールの高さで単位は㎝です ※クレジットのないものは私物です ※BAILA2020年12月号掲載
【BAILA 12月号はこちらから!】