「UOMO」スタイリスト池田尚輝さんと「BAILA」スタイリスト吉村友希さんに聞く試着の極意。仕事で、プライベートで、無数の服を選んできた二人のプロは「試着しないで服を買うなんてありえない」と声をそろえる。試着のお作法や試着でチェックするポイントなど、二人のアツい本音トークを展開!
どんなに服を着続けても見ただけでわかる服はない!プロこそ絶対試着している
池田 そもそも、試着しないでどうやって服を決められるの?って思うんです。スタイリストとして仕事を続けて、どんなにたくさん服を着て経験を積んでも、見ただけで似合う服はわかるわけがない(笑)。
吉村 私もそう思います。ファッションページで使う洋服でも、私服でも、まずは自分で着ます。着てみないと絶対にわかりませんね。
池田 「こんなふうになるかな」と思って実際着ると全然違ったりしますよね。
吉村 確かに。それに「見るより着る」で、スタイルがよく見えるかどうか、今求めているシルエットかどうか、パッと判断できるんですよね。
池田 試着すると、服のポテンシャルがよくわかって、なめていられないな、って感じます。一度試着してみて「このボトム細すぎるかな」と思っても、合わせるアイテム次第でいいバランスになったりする。
吉村 そうですね。手に取ったときの第一印象よりも、着てみたほうがよかったな、という服が多いです。なので、本当に似合う一着に出会いたいのなら、体力の続く限り試着することをおすすめしたいです!
池田 僕は「精確に選ぶ」って重要なことだと思うんです。サイズが3つあったとして、どれを選ぶか、色はどうするか、自分と対話して詰めていき、納得して決断したい。じっくり試着して、“これぞ”と思った服と、セール会場などの落ち着かない状況でばっと買った服とを比べると、ワードローブの中で残っていく確率は前者のほうが格段に高い。
吉村 肌で感じる季節感も大事で、自分の服を買うときはすぐ着られるオンタイムに試着します。そうして買った服は、着なくなることが少ない。
池田 そう。出会うタイミングも大事ですね! 試着してしっくりくる服に出会えたら、絶対買ったほうがいい。買った後悔は2カ月後には忘れるけれど、買わなかった後悔はずっと残る。これは僕の持論です(笑)。
『UOMO』試着フェス®とは
30〜40代文化系男子がターゲットのファッション誌UOMO。たくさんの服好きの大人が新作を試着&レビューする人気企画!
みんなが着て、見て、触って、好きなアイテムを共有する試着フェスは、貴重な機会
吉村 試着フェスは、もともと男性誌UOMOの人気企画。毎シーズン大々的に行われていますね。
池田 メンズスタイリストとしては、この期間中、シーズンでいちばんいい服が1週間も集英社に集まってしまうので。気をつけないといけません。
吉村 大変! でも、旬の服の実物を、こんなにたくさん手に取れる機会はめったにないですね。今回は、BAILAで初めての開催。試着会場では、皆さんからワクワクする気持ちをすごく感じました。
池田 試着した感想をみんなで共有するなんてなかなかないですしね。
吉村 同じ服を着ても、違う印象になるのが興味深くて。色々な人の意見を聞くのも楽しかったです。
池田 確かに。試着には対話が大切。自分への問いかけや、信頼できる人のアドバイスで、新しい自分を発見することもある。
吉村 そう言われてみると、試着って、似合う服を見つけるための大事なコミュニケーションだな、と思います。
スタイリスト二人が考える「試着」のお作法とは?
プロが伝授!試着の極意
「試着は、自分と対話しながら」“落ち着いて、精確に”選んだものは残る!(池田尚輝さん)
試着では「どう合わせる?」「色は?サイズは?」など、無数に問いかけます。そうして自分とじっくり対話して選んだ服は、慌てて買った服よりもずっと長く残るもの
「オンタイムが大事」今、着たいと思う季節の服が、結局いちばん長く着られます(吉村友希さん)
試着のタイミングと日常生活に、タイムラグがないほうが、心を満たしてくれる気がします。着たい季節に、明日着られる服を試着するのが、満足する買い物ができるコツ
試着のワンポイントアドバイス
アウターは……
薄着の上に羽織らない
「Tシャツに羽織るのと重ね着の上に羽織るのとでは、シルエットの出方が違って見えます」(池田尚輝さん)
「その季節に着たい服の上に着てみるのがベスト」(吉村友希さん)
トップスは……
サイズの違いは絶対比較
「トップスのサイズ違いって本当に繊細。自分の納得のいくフィット感を問いかけ続けます」(池田尚輝さん)
「肩を当ててみるだけでは絶対にわかりません!」(吉村友希さん)
パンツは……
後ろ姿を撮影&合わせたい靴で行く
「携帯で後ろ姿を撮影して、お尻が大きく見えないか確かめます」(吉村友希さん)
「合わせたい靴など、ヒントになるアイテムを身につけていくのはおすすめ」(池田尚輝さん)
プライベートの試着室でしていること
1.試着室からは絶対出てチェック
「試着室の中では“一次選考”。しぼり込んでから外に出て、後ろ姿などを最終チェックします」(吉村友希さん)
「服を普段着る場所は試着室のように狭いはずがないので、引いて見ることは必須です」(池田尚輝さん)
2.お直しできるかどうかを考える
「試着では、合わない部分を直して着られるかは絶対考えます」(池田尚輝さん)
「スカートは全体のシルエットを見て、ウエストを詰めることが多いです」(吉村友希さん)
二人とも、信頼できる「お直し屋さん」があるそう
3.信頼できる人や自分自身と対話しながら選ぶ
「プライベートの買い物で、試着してワイワイ意見を聞くのは純粋に楽しい♡」(吉村友希さん)
「基本的には自分の“好き”をブレさせないことが大事。逆に言うと試着で意見を聞けるって、すごく信頼している証拠です」(池田尚輝さん)
吉村友希さんの「試着フェス®」“実はここをチェックしてます”
Check!
「大定番ブランドのタートルもまっさらな気持ちで試着すると新しい発見があります」
シルエットがアップデートされた「ジョン スメドレー」のタートルニット。よく着る機会のある定番でも“わかったつもり”にならず、あらためて、質のよさを知るつもりで試着するそう ニット¥34100/リーミルズ エージェンシー(ジョンスメドレー)
Check!
「正面のシルエットだけじゃなく他人から見える角度をチェック」
はいた瞬間に、求めるシルエットかどうか即断できるのはさすがプロ。その上で、人からどう見えているかは、写メを撮るなどして丁寧に確認 パンツ¥36300/ebure GINZA SIX店(エブール)
Check!
「アウターは先取り“しない”派。本格シーズンを迎えたときにあらためて試着して購入します」
好みが変わったり、合わせたい服が増えたり、もっといいアイテムに出会ってしまうこともあるから、大物こそオンタイムに購入 アウター(エディション別注)¥92400/エディション 表参道ヒルズ店(ハイク)
Check!
「服を選ぶときパートナーの感想を想像したり、意見を聞くのは発見がある」
プロとしての試着は孤独に冷静に選ぶ。結婚してからは、休日にユニセックスブランドのショップに一緒に行って、夫に感想を聞くのが楽しみに。試着に新鮮味が加わった! パーカ¥42900/キャバン 代官山店(キャバン)
スタイリスト
吉村友希さん
試着って、自分自身とその服のことがわかる、いちばんの方法ですよね
BAILAをはじめ、女性誌を中心に活躍。ブランドとのコラボ服のディレクションも手がける。ベーシックを軸にした好感度の高いスタイリングが大人気でリアルな視点を忘れない服選びに共感の声多数。
スタイリスト
池田尚輝さん
「試着とは、対話である」僕はそんなふうに思うんです
UOMOなどのメンズファッション誌や広告、TV等で幅広く活躍。スタイリストとしての活動中に1年間のNY在住を経験。言葉とスタイリングには洋服への尽きない愛とファッション哲学がにじみ出る。
撮影/金谷章平(人)、魚地武大〈TENT〉(物) ヘア&メイク/YUMBOU〈ilumini.〉 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2021年12月号掲載