スマホを見れば誰もが簡単に時間を知ることができるこの時代に、あえて“時計をつける”という選択。それは大人の今だからこそできる贅沢であり、働くBAILA世代にとってはひとつのたしなみかもしれません。
決して安い買い物ではないからこそ、せっかくなら自分らしく、納得のいく一本を選びたいもの。世界中で愛される個性豊かな時計から今回、7つの名品を厳選。
時計ジャーナリストの篠田哲生さんとともに、その魅力に迫ります。
時計ジャーナリスト篠田哲生さんに聞く“腕時計をつける”魅力って?
時計ジャーナリスト
篠田哲生
しのだ・てつお●集英社『UOMO』をはじめ多数の媒体で活躍。時計の専門学校で学び、スイスなど各国のメーカーを取材してきたスペシャリスト。著書に『教養としての腕時計選び』(光文社新書)。
「高機能なスマートウォッチなども続々と登場している中で、時間しかわからない時計を“わざわざ”選ぶのは、時間に対して誠実に向き合うということ。そういったことを意識してものを選ぶのは大切ですし、“自分の好きなもの”を選ぶという行為自体に意味があると思うんです。
今の年齢で清水買いしたものが、10年後にはカジュアルに使えるようになった……それはきっと自分が成長した証。毎日を共にし、自分の軌跡ともいえる時計だからこそ、そのときの気持ちに寄り添うものを、ちゃんと自分の目で選び、身に着けていただけたらいいと思います」(篠田さん)
今回、時計ジャーナリスト篠田哲生さんがBAILA世代の女性のために選んだおすすめの時計をご紹介。
じっくり読んで知って、お気に入りの一本との出合いがありますように!
1)気品ある手もとを演出する“アールデコ”デザインの本格派ウォッチ
「もともと、男性用の懐中時計が時間を知るための“道具”だったのに対し、“身を美しく着飾るため”のものとして生まれたのが女性用の腕時計。それまでは貴族が楽しむ一点もののアクセサリーでしたが、19世紀後半から起こった第二次産業革命で、機械化の波が押し寄せ、さまざまなものが大量生産されるようになったことで、広く一般の人にも楽しめる存在となり、新しいカルチャーとして生活に浸透していったのです。
いっぽうで、そんな“身を美しく着飾るため”の贅沢品を大量生産で作るなんて……!という考えも。そこで誕生したのが、芸術性と機械性を備えた“アールデコ”という新しいデザインのムーヴメント。一見するとシンプルで現代的な機械的な印象をあたえながらも、職人の手によるやさしくエレガントなこだわりも詰まっているのが特長です」(篠田さん)
そんなアールデコ様式の典型ともいえる美しい腕時計で高い人気を博した先駆者ロンジン。さらには現代のアールデコの名手フレデリック・コンスタントとともにご紹介。
■ ロンジン 「ドルチェヴィータ」
ロンジン「ドルチェヴィータ」L5.255.4.71.4 ¥204600
「BAILA世代の方には少し新鮮に映るかもしれないロンジンですが、実は1832年に創業し、国際的なスポーツイベントの計時も行うほどの“超名門”。
そんな歴史あるブランドだからこそ、昔ならではの技術を現代の時計においてもきちんと継承しているところはさすが! 花が広がるようなフランケ模様の文字盤や、青い針といった1920年代のクラシックスタイルを感じられる『ドルチェヴィータ』は、その代表格ともいえる名品です」(篠田さん)
■ フレデリック・コンスタント 「クラシック カレ レディース」
フレデリック・コンスタント「クラシック カレ レディース」FC-200MPWCD16 ¥294800
「34石ものダイヤモンドが入っているこちらは、10万円台前半から展開する人気の『クラシック カレ』シリーズの中でも華やかな一本。
フレデリック・コンスタントは“手の届くラグジュアリー”を掲げ、スイスの高品質なクラシック時計をこなれたプライスで楽しめるのが魅力です。1988年創業とブランドとしては新しいですが、現代的であるがゆえにものづくりもいい意味で合理的。そしてそれは私たちにとってうれしいコストダウンに直結することも!
時計の聖地であるスイスの中でも都会的なジュネーヴ生まれということもあって、伝統は重んじつつも洒脱なデザインは、ほかとは一線を画します」(篠田さん)
2)時計好きにも一目置かれる!? しゃれ感抜群の注目ウォッチ
王道のクラシカルな時計もいいけれど、せっかくなら人とかぶらないちょっと新鮮で、おっ!と言われるような名品を手にしたい……。
そんな方におすすめなのが、デザインコンシャスな時計を得意とするハミルトンと、使いやすい機械式で女性にもファンが多いティソ。
■ ハミルトン 「ジャズマスター レディ」
ハミルトン「ジャズマスター レディ」H32201430 ¥89100
「文字盤に“SWISS MADE”とあるように製造はスイスで行っていますが、もともとはアメリカ発祥のブランドで、鉄道時計からスタートしたハミルトン。
ベーシックにとらわれないデザイン性に長けたブランドらしく、放射線状に型押しされた立体的なダイヤルに、サテンストラップの組み合わせが新しいですよね。
ハリウッドともつながりが深く、映画の小道具などにもよく使われているブランドなんですよ」(篠田さん)
■ ティソ「シュマン・デ・トゥレル オートマティック レディ」
ティソ「シュマン・デ・トゥレル オートマティック レディ」T0992071104800 ¥117700
「これまでの3本と明らかに異なるのは“機械式”ということ。電池式のクオーツ時計とは違い、機械式時計は巻き上げたぜんまいを動力源とするもの。これぞ時計の醍醐味、という人もいます。
いっぽうでリモートワークで外に出ない日やコーディネート的に時計をつけない日が続くと、おのずとぜんまいがほどけて止まっていることもありますよね。その点、このティソの時計は最長80時間も連続駆動するので、2日くらい使わなくても止まらないという実用的なメリットが。いちいち針合わせをしなくてもいいので爪も痛みませんし(笑)、メンズライクな表情の中に女性が使いやすい工夫が満載です」(篠田さん)
3)使いやすさにとことんこだわった「日本ブランド」の実力派ウォッチ
そして、最後にご紹介するのは日本ブランドの3本。私たちの生活にもっともなじみが深く、一度は目にし、聞き覚えのある時計が多いものの、意外とその魅力を知らなかったりも……一体どこがどう“いい”のでしょう?
「時計は全般的にステンレススティールという素材が使われています。ほどよく堅く、磨くときれいなので高級感が出しやすい、そして心地よい重みが“いい時計をしている”という高揚感にもつながったりするのですが、日本の時計は“チタン”なんです。このチタンという素材がすばらしくて、まずは圧倒的に軽い。そして素材の特性によって、金属アレルギーをおこしにくい。ステンレススティールのようにツヤッときれいに加工するのが非常に難しい金属なのですが、それを実現して、なおかつ手の届きやすい価格で提供できているというのが、本当にすごいことなんです!」(篠田さん)
そんな独自の加工技術でチタンのさらに上を行く“スーパーチタニウム”を採用しているのがシチズン クロスシー。
■ シチズン 「クロスシー」
シチズン 「クロスシー」daichi collection フローレットダイヤモンドモデルEE1007-67W ¥121000
「もうひとつ特筆すべきはソーラー発電ということ。ぜんまいで動く機械式や電池で動くクオーツ式とは違い、ソーラー(光)で時計を動かし、しかも発電した電気を溜めて暗いところでも動き続ける『エコ・ドライブ』という技術を生み出したのがシチズン。しかもこちらは一度フル充電したら、4年(パワーセーブ作動時)可動し続けるというすぐれもの。
環境汚染の原因にもなると言われる廃棄電池を出すこともなく、さらにはダイヤルに『ラボグロウン・ダイヤモンド』というエシカルなダイヤモンドを使っている点でもエコ。人にやさしく、地球にやさしく、社会にやさしい名品です」(篠田さん)
■ セイコー「ルキア」
セイコー「ルキア」SSQW064 ¥82500
「ゴールドのコーティングがされていますが、こちらも素材は純チタン。
ローマン数字や樽型のトノーケースなど、最初にご紹介したアールデコの時代に生まれたクラシックなデザインを取り入れつつ、モダンなデザインに仕上がっているので、よりアクセサリー感覚で日常使いしやすいかもしれません。
これだけの高級感で8万円台という価格も人気の理由です」(篠田さん)
■ カシオ「オシアナス」
カシオ「オシアナス」OCW-70PJ-7AJF ¥77000
「日本時計ならではの魅力にはもうひとつ、時間の正確性ということもあります。チタン製やソーラー発電と同じく先の2本にも共通しますが、自動で電波をキャッチしてつねに正しい時間に修正してくれる電波時計は、時間に厳格な日本人ならではのうれしい機能のひとつではないでしょうか。
カシオといえば、デジタル時計の“G-SHOCK”が有名ですが、誕生当時“カシオなのに針がある”と話題になったのがこの『オシアナス』。機能性はしっかりとありつつも甘さはひかえめ、男性人気も高い時計なので、パートナーとシェアしたい方などにはとくにおすすめです」(篠田さん)
取材・文/伊藤真知