仕事でもプライベートでも自分らしさが確立されてきたバイラ世代。おしゃれプロの先輩たちは、どんなきっかけで時計を購入してきたのか? 選び方の基準や時計とのつきあい方などを、実体験から熱く対談!

Cartier タイムレスな美しさが際立つメゾンを代表する正統派
どんな場面でも間違いのない品格と、自信をもたらしてくれる一本。時計「タンク ルイ カルティエ」(YGケース、シャイニー アリゲーターストラップ、クォーツ、24×16.5mm)¥1201200/カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ)
買った人にだけ見える景色がある!時計上手なおしゃれプロ座談会
腕にしっくりくるといった感覚的なことも時計選びには大切
――バイラ世代は普段時計をしないという人が多いんです。そろそろ一本いい時計を手に入れたいと思いつつも、今の年齢に合う時計をどうやって選んだらいいかわからないんですよね。皆さんがバイラ世代の頃はいかがでしたか?
発田 私たち世代、というか私はもう少し物欲旺盛というか(笑)。次に仕事で頑張ったらあの時計を手に入れたい、あのバッグを絶対に買う! みたいなことだけが働くモチベーションでした。
根本 私はカルティエのタンク フランセーズを愛用していました。一緒に働いていた先輩が愛用していて、完全に憧れて真似して買ったという感じです。
杉本 タンク フランセーズはいつ見ても、美しいですよね。
根本 当時はキャリアブランドのPRをしていたので、ジャケットを着る機会が多くて、カリッとシャープな時計が欲しかった。
池田 僕は初めて手に入れた“ちゃんとした時計”がIWCのマーク 16でした。30歳を迎えるタイミングでそろそろ必要かな、と。
杉本 私はカルティエのサントスとエルメスのケープコッドを使うことが多かったですね。どんな服にも合わせやすくて、しかも視認性が高いので仕事のときに実用的だったんです。“きちんとした時計を身につけている人”という女性像にも憧れがあったので、時計は毎日するようにしていました。
根本 10年くらい前までは、時計をしている人が多数派でしたよね。
発田 私は出版社に勤務していて、本当に忙しくて疲れていたので(笑)。特に何の記念でもなかったんですけど、半ば勢いでカルティエのタンク アメリカンを清水買いしました。
根本 わかります。バイラ世代ってちょうど仕事が楽しくなってくる頃でもあるし、だからこそキャリア的には踏ん張りどき。何か理由をつけて時計が欲しかったのかも!
池田 僕もIWCを手に入れたときは、いよいよちゃんとした大人になった気分というか、ひとつステップアップしたような感じがしました。
発田 皆さんが時計選びでこだわっていることはありますか?
池田 僕は完全にファッションの一部として考えるタイプ。この服に合う時計が欲しいなとか。たとえばカルティエのタンク マストは茶系のコーデに合わせたらかっこいいだろうなと思って買いました。
杉本 私はクラシックで端正なデザインが好きなのでヴィンテージを買うことが多いのですが、そうなると出会ったときが買いどきで。タイミングとご縁です!
発田 私はだいたい勢い(笑)。もう時計を買わないとやってられない!とか、デパートに行ったついでに軽い気持ちでショップに入ってうっかり買っちゃうとか。
池田 それはもう、確実に買う気で入ってる(笑)。
根本 私は、気づけば四角いフェイスのものばかり。
杉本・発田 私も(笑)!
池田 そろいもそろって何で(笑)?
杉本 私はフェミニンすぎるものが苦手なことと、あとはクラシックな雰囲気が好きなことも理由です。
発田 丸い時計が欲しくて探していたこともあるんですけど、いざ腕につけてみるとしっくりこなくて。
根本 私もそうなんです。自分がしている姿がイメージできなかった。
池田 確かに、毎日身につけるものだからこそ、その感覚は大切かも。
仕事のスタイルが確立されてくる30代こそ身につけてほしい
好きな時計から自分らしさや個性が見つかることも
――同じ予算なら、時計ではなくてジュエリーをつい買ってしまうという声もよく聞きます。
発田 ジュエリーも欲しいけど、時計も欲しい。その気持ちはよーーくわかります。
根本 ジュエリーのほうがよりファッションに近いというか、そのときの服やトレンドで左右される部分がありますよね。
池田 確かにスマホさえあれば時間はわかるわけで、その意味では腕時計は必要無いのかもしれません。でも僕にとっては、時計はスタイリングの一部。時計があると全身の完成度が高くなるような気がします。
発田 時計まで含めてのスタイル、なんですね。
池田 そう、だからおしゃれの意味でも、頑張って時計を身につけてほしいなあ。
杉本 確かに今となっては、時計は贅沢品かもしれないです。でもだからこそアイデンティティの表れでもあるし、ものを大切に、丁寧に暮らしていることが垣間見えるというか。
根本 ちゃんと自己投資している人っていう感じがしますよね。
杉本 あとは使う年月や出番という点でいっても、ジュエリーよりも時計のほうがある意味、元が取れるような気がします。
発田 お買い物の元が取れる理論、私も大好きです(笑)。
池田 ご時世的に時計もどんどん値上がりしているので、気になっているものがあったら早めに手に入れるのも手かも。
発田 若いときに思い切って時計を手に入れた、過去の自分を褒めてあげたいくらい!
池田 メンズファッションでいうと、やはりビジネスシーンでは腕時計をしていてほしいですよね。根本さんのお話にもありましたが、スーツやジャケットの手もとには時計があってこそ決まるというか。
発田 相手に対する敬意とか、仕事へのやる気を表現するものでもありますよね。私も目上の方とお仕事をするときには、きちんと時計をしたいと思っています。
杉本 私はドラマのスタイリングをすることも多いのですが、時計からその女性像がイメージできるようにキャラクターづくりをすることがあります。この時計をしている人はこういう性格だろうなとか、住んでいる部屋はこんな感じかなとか。
根本 面白いですね〜!
池田 わかります! メンズの場合も、時計で語る部分は大きいです。きっとこういう立場の人だろうな、こんな車に乗っていそうだな、みたいな。その人が選ぶ時計には、マインドやライフスタイルとかの情報が詰まってる気がする(笑)!
発田 人の時計を見てそういうことを想像したりするの、嫌いじゃないです、私(笑)。
根本 あとは、私の場合ファースト時計をかなり長く使い続けたので、それがマイスタイルそのものになっていった実感があります。
池田 そのパターンもありますよね。時計がその人をつくるというか。
発田 自分の美意識の骨子になっていくような。
自分で選んで頑張って手に入れた時計を愛用する喜びは格別
池田 憧れの時計があるなら、ちょっと無理をしてでも頑張って手に入れて、それを指針にしていくのも素敵ですよね。
杉本 もちろん時間を見るものではあるんですけれど、そもそもの時計としてのあり方というか、それを選んで身につけるという行為にも意味があると思います。
池田 時計がなくても生活できる時代だからこそ、ですよね。
根本 あとはエイッ!って頑張って買うって、悩んで選んでその一本に決めたということ。あとから振り返ると、その行動も自分を成長させてくれるものだったなと思います。
発田 本当にそうです。予算もあることだからこそ、それも含めて自分にとってのベストを選ぶときにはある種の勇気も必要!
池田 高い時計だからいいというわけではないけれど、そうやって自分に対して投資をして、大きな決断をすることって、おしゃれや買い物だけの話ではなく人としてのスキルアップにもつながると思います。
発田 時計を買うときって、いろんな理由をつけて、自分で自分の背中を押すじゃないですか。転職するからとか、40歳になるからとか。
池田 僕もこれなら妻とシェアできるかなとか、色々な言い訳をしています。でも、もはや理由はなんでもいいと思う!
杉本 はい、理由はなんでもいいと思います(笑)。
池田 そして、憧れのものを頑張って手に入れたら、また次に欲しいものが見つかるじゃないですか? 時計だけじゃなく、靴でもバッグでもいいんですけど。
根本 必ず見つかっちゃいますね(笑)。
池田 そしてまた頑張ろうって思って、一生懸命働く。そうやって自分のテンションやモチベーションが上がることが大事だと思う。
根本 昔買った時計を今も変わらずに好きで、ずっと大切に使えていることが、私はすごく嬉しいんです。そのときの自分の選択の答え合わせになっているような気がして。
発田 確かに!
杉本 嬉しいことがあったときはもちろんですけど、悔しいことがあったときでもいいと思います。自分自身にとって何か大きなタイミングで、自分で選んだ時計を手に入れるということがとても重要な気がします。
池田 そういう達成感みたいなことって、本当に大事。だって社会人になると、仕事でしんどいときもいっぱいあるんだから!
杉本 いつか、あのときに頑張って買ってよかったと思える日が来るはずですよね。
根本・発田 まさにそう思います!
撮影/赤尾昌則〈whiteSTOUT〉 スタイリスト/池田 敬 取材・原文/発田美穂 ※YG=イエローゴールドの略です ※BAILA2025年6月号掲載




























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