大の漫画好きで知られる、お笑い芸人のニッチェの近藤くみこさん。『トーキョーカモフラージュアワー』もかねてから愛読中とか。今回は作者・松本先生と作品について本音トーク! 近藤さんや松本先生の実体験エピソードとともに漫画をプレイバック。
ニッチェ
近藤くみこ
1983年生まれ。三重県出身。相方の江上さんとともにお笑いコンビ「ニッチェ」として活動中。TV「王様のブランチ」(TBS系)など、多数の番組に出演中。
松本千秋先生
東京都出身。コミックエッセイ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』でデビュー。『トーキョーカモフラージュアワー』は『ヤングキング』で連載続行中。
30代以上が読むから、「あるある」の感情と、その先の癒しも得られる
近藤 私が『トーキョーカモフラージュアワー』を読んだきっかけは、表紙のイラストが可愛かったからでした。SNSの前評判などではなくて、完全なるジャケ買いだったんです。
松本 そうだったんですね。
近藤 先入観ゼロの状態でページを開いたら、「なんだこの刺さるエピソードの連続攻撃は!」と。衝撃を受けまして。ソッコーで女芸人たちとのグループLINEに「すごい漫画を見つけた」「ここには私や、あなたたちのことが描いてあります」と連打しました!
松本 ありがとうございます~。
近藤 そこからは読んでくれたみんなで、感想を送りまくりでしたね。
松本 書き手として、近藤さんには何が刺さったのか知りたいです……!
近藤 デートしたあとに女性が本音を言う話がありましたよね。まんま同じではないですけれども、「あるな~」って感じで。相手は完全に受け身で私だけが手間と時間を使い、心も疲弊……みたいな過去のデート経験と重ね合わせて読んでました(笑)。それと、誰と結婚してもよかった風な既婚男性が出てくる回があったじゃないですか。
3巻p.35
男が結婚を決めるタイミングが謎すぎる件
何年かぶりに連絡を寄こしてきた、既婚者の元カレ。今の妻と結婚した理由が「相手がどうしてもって言うから」。そのぼんやりした決め方やのらりくらりとした態度に「……じゃあ誰でもよかったのか?!」と、思わずツッコミを入れたくなってしまう
松本 元カレとのエピソードですね。
近藤 そう。あの話のヒロインと同じように、結婚の言葉をあえて出さずに彼氏とつきあっていた女友達がいて。でもその男、最終的には彼女ではなくて、浮気相手とデキ婚したんです。
松本 えー!
近藤 本当に「えー」状態なんですよ! でもそのときに思ったのは、「私の女友達が、もう少しわかりやすく結婚を切り出していたら、ソイツはどうしていたのだろうか?」って。
松本 結局は誰がよかったのかがわからないところが、よく似てますね。
近藤 もうね、そんな「あるある」ばっかりでした。ちなみにこの話、先生の実体験なんですよね。ほかにも色々とありそうですけれども……。
松本 既婚女性が夫から「嫁の買い物につきあい中(笑)」と、SNS上に投稿されたやつも私の身に起きたことです。
近藤 そうだったんですね。
3巻p.21
嫁ネタで「(笑)」のオチつけるの、面白いのか?
SNSに勝手に投稿されていた自分の写真。添えられていたのは「奥さんの買い物につきあってます」というネタっぽい文章。令和の今も鬼嫁トークって有効なのか? こっちはまったく楽しくないんですけどと、いらだつのみ!
松本 20代前半~30代後半まで結婚してたんですが、これは元夫とハワイに行ったときの記憶がベース。全部私が予約し、現地でのアテンドもやってた旅、SNS上では“嫁の散財につきあわされる俺w”みたいに書かれてたんです。もちろん、買い物も自分のお金でしてましたよ。一体何が「w」なんだ? と、ブチ切れた記憶を引っぱりだしてきて描きました。
近藤 私は今、結婚して2年ほどなんですが、もともと結婚願望はあまり強くなかったんです。その理由のひとつとして、「一体何が面白いんだ?」っていう、謎の嫁ネタをちょいちょい耳にしていたのもあったかもしれない。
松本 私ね、今でもこういう嫁落とし話の「w」の意味がわかんないです。
近藤 「つきあってやってる俺、いいヤツ」ってアピールなんですかね。
松本 そうなのか。やられた立場としては、あのときの回収できなかった恨みを、出してみた話でした(笑)。
(後編へ続く)
『トーキョーカモフラージュアワー』とは?
【STORY】
東京に住む大人の男女たちの人間模様を描いたオムニバスストーリー。無自覚な言動を繰り返す男子、心の中に思いをためがちな女子など、“あるある”な登場人物と、そのエピソードの細かさがリアル。Twitterで反響を呼び、一躍注目&人気作に!
NEW!
『トーキョーカモフラージュアワー』
松本千秋/少年画報社 6巻
電子版販売 968円
6巻でも、東京を生きている男女の瞬間を切り取ったショートコミックがたっぷり。30代女性に刺さるシチュエーション&悶絶すること間違いなしの鋭いセリフも、ますます光る一冊に。
取材・原文/石井絵里 撮影/イマキイレカオリ ※BAILA2023年4月号掲載