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パリ・オペラ座の現役ダンサーが演じる等身大の青春映画『ダンサー イン Paris』をレビュー【シネマナビ】

海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、パリ・オペラ座の現役ダンサーが演じる等身大の青春物語『ダンサー イン Paris』をご紹介します。

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今 祥枝

今 祥枝


海外エンタメが大好きなライター。一年365日、映画&ドラマざんまいの日々。

『ダンサー イン Paris』

『ダンサー イン Paris』9月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

©2022/CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE-STUDIOCANAL-FRANCE 2 CINEMA Photo:EMMANUELLE JACOBSON-ROQUES

映画は、パリ・オペラ座でのクラシック・バレエ「ラ・バヤデール」のステージから始まる。舞姫が恋人を奪われる物語で、タイトルロールを演じるエリーズは、合間に舞台裏に下がったとき、共演者の恋人が、ほかのダンサーとキスしているのを目撃する。平静を装うも、舞台上でジャンプの着地に失敗して転倒し、深刻なケガを負ってしまう。

このドラマチックな冒頭の15分間、登場人物のセリフはない。目の動きとかすかな表情の変化、そして目を見張るほど美しいパフォーマンス! バレエの魅力がしっかりと観客に伝わると同時に、これほどのダンサーが若くして第二の人生を模索しなければならないことの過酷さがわかり、観客はぐっと映画に引き込まれる。

エリーズを演じるのは、パリ・オペラ座バレエ団のプルミエール・ダンスーズで、クラシックとコンテンポラリーを自由に行き来するマリオン・バルボー。ダンスをあきらめかけたエリーズは、後にバイト先でコンテンポラリー・ダンスに出会い、踊る情熱を取り戻していく。クラシックもコンテンポラリーも、ダンスは一切吹き替えなし。コンテンポラリーではエリーズの再生にふさわしい力強さと自由な精神を感じて圧倒される。

映画ファンにはなじみのあるフランスの人気監督セドリック・クラピッシュは、『スパニッシュ・アパートメント』や『ニューヨークの巴里夫』などの青春映画の名手として知られている。その物語はパリを筆頭に、舞台となる街の魅力を抜きにしては語れない。本作でも、パリやブルゴーニュといったロケーションと、その土地なりの食べ物から文化、ロマンスも含めたあらゆる要素が、エリーズの人生には欠かせないものとしてスクリーンに息づいている。

ところで、クラシック・バレエには、無条件に憧れを抱いてしまう女性は多いのではないだろうか。単純にロマンチックな衣装やチュチュに心引かれるものがあるが、あのうっとりするような美しいポーズをとるためには、どれほど厳しく自分を律し、鍛錬を続けなければならないのか。その不断の努力に裏打ちされているからこそ、いやが上にもダンサーたちの輝きは増す。

しかし、バレエにも造詣の深いクラピッシュは、一般的に苦しみの概念と関連づけられがちなクラシック・バレエについて、快楽の概念を忘れるべきではないと考えているという。だからこそ、本作は全編を通して、たとえ困難なときでも常に「未来は明るい」という楽観的なムードを感じさせるのだろう。踊ることも生きることも、その過程に困難はあっても、喜びに満ちているはずだから。

監督/セドリック・クラピッシュ
出演/マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス
公開/9月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給/アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル

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