少女漫画雑誌「りぼん」にて1982年より連載がスタートし、主人公が変わる形で1994年まで連載された『ときめきトゥナイト』。そして、今も「クッキー」にてその続編が連載されるなど、長きにわたり愛されるまさに不朽の名作。@BAILAでは、『ときめきトゥナイト』第1部の始まりを無料で掲載中! 池野恋先生に当時の連載の思い出や製作秘話など貴重すぎるお話を聞きました!
言葉の響きから決まった主人公の名前
ーー『ときめきトゥナイト』主人公・蘭世の名前の由来を教えてください!
初めは「リンゼ」という響きが気に入り、リンゼにしようと思っていました。でも、“リンゼ、ランゼ…ん? ランゼ? ランゼも悪くないな、エトランゼという言葉があるな”と。それをつかって[江藤蘭世]という名前にしようー…という流れでランゼに落ち着きました。
ーー鈴世は蘭世の弟の名前ですね…! 蘭世を描く上で大事にしたことはありますか?
とにかく前向きで明るく少しのことではへこたれない主人公にしようと思って描いていました。
ーーそんな蘭世を“吸血鬼と狼女の娘”にしたキッカケはありますか?
次の連載をどうしようかと担当さんと打ち合わせをしている中で私が「お父さんが吸血鬼」というのを描きたいと言ったところ「それではお母さんが狼女というのは?」と担当さんからのアイディアが出ました。その間に生まれた落ちこぼれの女の子を主人公にしようと設定が決まりました。
ーー蘭世が恋をするヒーロー・真壁くんの名前の由来はありますか?
「真壁」は一度使ってみたいと思っていた名字でした。「俊」は字は違いますが、当時人気だった俳優の広岡瞬さんのシュンという響きがいいなと思い、それぞれを合わせました。
ーー真壁くんを描く上で大事にしたことはありますか?
連載1回目だけまだキャラが定まっていない感じでしたが、2回目以降は無口なキャラが定着し始め、イメージを壊さないようにセリフや表情に気を遣うようになりました。
そのため縛りも多く(自分で縛ったのですが)セリフや表情に加え、服装やポーズまで悩むことが多かったです。
ーー『ときめきトゥナイト』の初期のエピソードの中で、思い入れの強いシーンとその理由を教えてください。
真壁俊が魔界人として生まれ変わる直前のクリスマスイヴの日に蘭世が俊の夢の中に入り、そこで自分が魔界人であることを告白し、俊にキスをされるという一連のシーンです。
このあと俊は赤ちゃんになってしまい、しばらく今までの俊には会えなくなるため、少しでも蘭世に幸せな瞬間を与えてあげたいと思って描いたからです。
ーー真壁くんの魔界の王子であることなどキャラクターの設定も、連載をしながら生まれていった感じなのでしょうか?
当初は1年くらいの連載で、魔界の女の子が人間の男の子に恋をしてドタバタと繰り広げたのち、ちょっとだけいい雰囲気になって終わるというイメージでした。
魔界の王子(アロン)を登場させるタイミングであれこれ急に決まったのだと思います。何がどう転ぶかわからないものです。
暗がりの中で打ち合わせの電話をしたのも懐かしい
ーー『ときめきトゥナイト』の第1部は連載開始が1982年。今思うと“あれは当時ならではだな”と思う編集さんとのやりとりや、製作方法はありますか?
FAXを使うようになる前はひたすら電話で長時間の打ち合わせでした。
自分の仕事場に電話を引く前は、夜家族が寝静まってからの段階の暗がりでの電話も懐かしい思い出…。
あとは直接担当さんが岩手まできてくれて喫茶店での長時間の打ち合わせもありました。今ではLINEでの打ち合わせも!
ーー『ときめきトゥナイト』シリーズを描く上で、絵作り面で先生自身がいちばん大事にしていることは?
コマ割りは未だに悩み、いつも正解はわからず描いています。
とりあえず読んでいく中でのテンポは気になるので、読みやすいかどうかは確認しています。またギャグや日常のシーンはコマが小さめで、大きく見せたいシーンは見開きのページを時々使っていました。
見開きのページは、ここぞというシーンでは入れるようにと、当時の担当さんから言われていて、時々そのようにしていましたが、原稿用紙を2枚つなげて大きい紙にして描かなければならずめんどくさかったです。原稿を保存する時もしまいにくくて本当は嫌でした(笑)。
ーー『ときめきトゥナイト』第1部のエピソードの中で、読者からの反響が予想外に大きかったエピソードはありますか?
人間になってしまった俊が蘭世に別れを告げるエピソードの後、落ち込んでいる蘭世に友達であるゆりえが「好きなら好きでいればいい」と言葉をかけるのですが、その回の反響がなぜか大きかったです。
急に恋愛相談の手紙が増えたことに驚きました。
「勇気づけられました」という内容が多かったです。ゆりえにいいセリフを言わせることができたんだなと思いました。
ーー7月19日より東京会場からスタートし(※会期終了)、10月には京都、12月には富山と巡回する「ときめきトゥナイト展」では、「りぼん」についた付録カットも展示されます。池野先生がお気に入りの付録はありますか?
今回グッズとして復刻していますが、蘭世のレターセットです。
理由はダイカットの蘭世レターも着せかえ風のP.S.カードもかわいく描けたなと思うからです。他には全部絵の違うトランプも大好きです。
(※トランプは展覧会会場での販売はございません)
たくさんの作品にふれる中で脳に栄養補給を
ーーこれまで多くの漫画を手がけている池野先生ですが、今も漫画製作のために何かインプットしていること、取材していることはありますか?
取材は特にしていませんが、インプットは他の方の漫画や小説、映画などを読んだり観たりすることです。
「この展開おもしろい、こんなシーン描きたいな…」などなど、色々な刺激を受け、少しずつ自分の脳内に吸収されます。栄養を補給している感じです。
ーーネーム中や作画中など作業に詰まったりする時はありますか? その際の気分転換方法などがあれば教えてください。
作業に詰まると眠くなってしまうので「ポケ森(どうぶつの森 ポケットキャンプ)」をちょっとやったり、トイレに行ったり歩き回ったり、おやつを食べたり、ついには漫画を読みはじめ、目が覚めたらまた仕事に戻ります。
ーー1978年のデビュー以来、漫画家として活躍を続ける中で、池野先生自身が思う【仕事を続ける】上で大事だなと思うことがあれば教えてください。
とにかく健康第一だと思います。
年齢と共にあちこち体の不調が出てくるのは仕方のないことですが、まだもう少し描いていたいので、無理のない範囲でマイペースを保ちたいと思います。それとうまく気分転換をすることでしょうか。
気力は必要です!
ーー漫画を描く楽しさややりがいはどんな瞬間に感じることが多いでしょうか。
ひとつは原稿が完成した瞬間です。達成感と安堵です。
「やったー!」と思います。
もうひとつは作品を読んでくださった方からのファンレターを読んだ時です。頑張って描いてよかったとしみじみ思います。
ーー池野先生にとっては「漫画を読むこと」はどんな時間ですか?
先ほど、漫画を読んでインプットしていると言いましたが、インプットのために読んでいるわけではなく、主には現実逃避かなと思います。
好きな作品の新刊が出ると気になるあまり読んでしまいますが、仕事が忙しく読む時間がないと本が積み上がっていき、消費する作業になってしまいます。
時間のある時にゆっくり読み、その世界に没頭したいと思っています。
ーー先生自身の自分の人生に欠かすことができない1冊を教えてください。
『ポーの一族』です。
世界観に憧れ、シーンごとに心を震わせられ、吸血鬼という設定にも心ひかれ、こんな風に自分の作品の中に読者を引き込み感動させられる作品を私も描きたいと思いました。
貴重なお話をありがとうございました!
取材・文/上村祐子
開催情報
[京都会場]
会期 2023年10⽉11⽇(⽔)〜10⽉30⽇(⽉)
会場 京都髙島屋 7階グランドホール
会場公式サイト https://www.takashimaya.co.jp/store/special/tokimekitonight/index.html
[富山会場]
会期 2023年12月22日(金)~2024年1月9日(火)※1月1日は休業
会場 富山大和6階ホール
詳細は後日発表いたします。
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