何気なく過ぎていく毎日だけれど、その中には辛いエピソードや笑える物語があったりしますよね。今月はそんな日常を描く3作品をピックアップ。性犯罪被害者がそこから立ち直るまでを描いた小説、アメリカで長く愛されてきた寡黙な作家の様々な人生の機微を捉えた短編集、20の年齢差の夫婦の日々を赤裸々に綴った作品の3冊。人生十人十色だなぁなんて、しみじみ…。
『さらさら流る』 柚木麻子 文藝春秋 1650円
28歳の菫は昔の恋人に撮らせたヌード写真がネットにあると知る。出会った日の夜、渋谷の暗渠をともにたどった彼には陰があった……。後悔と不安に揺れながら、自尊心を取り戻すまでの魂の軌跡。
『その日の後刻に』 グレイス・ペイリー 村上春樹訳 新潮社 1900円
1922年、NY生まれのペイリーは、寡作ながら味わい深い短編が多い。人種によりバスの座席が決まっていたあのころ。戦争の影。少女二人の長い友情。人生の機微をとらえた17作とインタビュー。
『東京の夫婦』 松尾スズキ 日本経済新聞出版社 1600円
福岡と茨城出身、20の年齢差の男女が東京で夫婦になった。その日常を「大人計画」主宰の著者が赤裸々に綴る、どこか笑えて切ない話。ラーメンを食べすぎ、引っ越しをし、相手に頼る幸福な日々。
原文/江南亜美子