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若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月から短期連載で、若手の注目俳優のリレーインタビューがスタート。第一回目の中村壱太郎(なかむらかずたろう)さんに続き、今回登場するのは、 最近、映画やバラエティでも大活躍の尾上右近(おのえうこん)さん。歌舞伎俳優としてだけでなく、歌舞伎の伴奏音楽・清元節(きよもとぶし)の清元栄寿太夫(きよもとえいじゅだゆう)としても活動する右近さんが、歌舞伎への熱い愛を語ってくれました!!

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_1

尾上右近(おのえうこん)●1992年東京生まれ。屋号は音羽屋。清元宗家七代目清元延寿太夫の次男として誕生。曽祖父は名優と名高い六代目尾上菊五郎。母方の祖父は昭和を代表する映画スター鶴田浩二。七代目尾上菊五郎のもとで役者としての修行を積み、若手の新星として注目される存在に。2017年、スーパー歌舞伎II 『ワンピース』の公演中に負傷したルフィ役の市川猿之助に代わり、残りの全日程で主演を勤めたことで一躍注目される。また2018年、清元栄寿太夫を襲名し、清元と歌舞伎俳優の双方を勤めることに。近年は歌舞伎以外にもテレビや映画、舞台でも活躍中。愛称はケンケン。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_2

↑2019年12月新橋演舞場にて上演された新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』でアスベルを勤める右近さん。本水(ほんみず=本物の水)を使ったダイナミックな立廻りは、動きに切れがあって、めっちゃカッコよかった!!  女方を演じることが多いけれど、豪快な立役も素敵です♪

■長い自粛生活で自分と向き合うキツさにいよいよ突入!?

まんぼう部長 右近さーん!! 本日はスカイプでの取材、どうぞよろしくお願いいたします。聞こえますか~!?

右近 ちょっと聞こえにくくて、なんか月にいる人と話しているみたいな感じなんですけど……(と画面に顔を寄せる)。

ばったり小僧 ギョア! イケメンがドアップに!!

右近 えーっ? なんですか?

小僧 あわわわ、なんでもありませんっっ。電波の調子が悪いみたいで申し訳ありません! 右近さんの声はよく聞こえてます。できるだけ大きな声で話しますので、よろしくお願いいたします。

右近 はい、よろしくお願いいたします。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_3

↑去年の5月は三社祭でお神輿をかついでいたそう。半纏姿が粋で、めっちゃ似合ってる!!「今年は開催延期、待ち遠しい!」

部長 まずはこのたびは、本当に本当に残念でした。3月の主演舞台『この声をきみに~もう一つの物語~』をはじめ、4月の新橋演舞場での大歌舞伎、そして夏に帝劇で上演を予定していた初のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』も中止となってしまいました。

小僧 どれもすっごく楽しみにしていたので悲しすぎます!! でも、きっと一番落ち込んでいるのは、右近さんですよね。

右近 落ち込むというより、悔しいという気持ちですね。でも、できなかった悔しさ以上に、より良いものを準備する期間ができたという感覚がどこかにあります。

小僧 おおっ、さすがです!! 前回の壱太郎さんもそうでしたが、歌舞伎俳優は切り替えが早くて、前向きですね。

右近 そうですね。とはいえ、『この声をきみに~もう一つの物語~』なんかは、お稽古も一か月やっていて、そのぶん作品とのかかわりも密だし、みんなで一緒に作り上げていくという喜びや達成感もあったので、それが上演できなかったという喪失感はあります。

舞台って、お客様に見ていただいて、初めて作品に魂が入るものだと思うんです。だから今回は、仏作って魂入れず、みたいな感じになってしまったかなと。無観客でのステージを収録することはできたのですが(DVD発売予定・5月24日予約受け付け締め切り)、たぶん同じキャスト、スタッフでやるのは難しいと思うんですよね。そう思うと、何か切なさみたいなのは感じます。

でも、そのぶんキャストの方々との関係は深まったので、本当に一長一短。そして一長一短のふり幅が大きいほど、成長できると思うし、そういう豊かな経験が、役者としての深みにつながるんじゃないかと思っています。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_4

↑自粛中に、家族とお好み焼きをしたときの写真。フライ返しを手に見得をする。さすが歌舞伎俳優です。音羽屋!!

小僧 4月の新橋演舞場では、『晒三番叟』を中村米吉さんと二人で踊るということで楽しみにしていましたが、こちらも中止になっちゃってしょぼ~ん。

右近 「大歌舞伎」(一線級の俳優をそろえた大劇場での歌舞伎興行)で、初めて大きなお役をいただいたということで、個人的には、ものすごく残念な思いがあります。ただ、歌舞伎は職人の芸術だから、パッと集まれば、いつでもそれができるという確信があります。だから公演が中止になったことに対する危惧は、じつは感じてなくて、むしろ大丈夫だという思いの方が強いです。

約束があるわけではないけれど、伝統というものは限りなく約束を感じさせてくれる力があると思います。形は違えども、また必ずできるというね。400年以上、続いてきたものは、多少のことでは揺るがないという安心感があります。

ただ、気持ちのモチベーションは下がらずとも、体のモチベーションが心配ですよね。実践でしか培えない歌舞伎的筋肉、歌舞伎筋みたいなものがあるので、今後、歌舞伎が再開したときに、気持ちがついていっても体がついていかなくなる場合があるんじゃないかと。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_5

↑尊敬する書家の上籠鈍牛さんに新しいサインを作ってもらったときの右近さん。この自粛中もきっといっぱい練習しているに違いない……??

部長 歌舞伎筋が固まっちゃってるかもしれないということですね。

右近 はい。それは僕の年代でも感じることなので、おそらく歌舞伎全体を考えたときに、上の方々から、地方さん(演奏をする人)、大道具さん、小道具さん、裏方さんから何から、「さあスタート!」と言ったときに思うように動くのかどうか。

だから準備として、稽古会や公演会を自分たちでやって、模擬的な舞台をやってみることが必要になってくるかもしれない。すぐに結果につなげようと急ぎすぎずに、ちゃんと練る時間を持つことが、今後は大事なんじゃないかと思います。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_6

↑大のカレー好きとして知られる右近さん。写真は、昨年、福岡博多に行ったときに立ち寄ったスリランカカレーの老舗『ツナパハ』でのショット。「今はレトルトカレーで我慢してます。早くカレーの食べ歩きがしたい!!」

■歌舞伎役者が「旅人」だとすると、清元は「家」という感じ

小僧 この自粛の日々は、どんなふうに過ごしていらっしゃるんですか。

右近 基本は家ですから、お稽古したり、走って汗をかいたり。で、夜はお好み焼きなんか作って、ビールを飲んで、ちょっと酔っぱらって……。いつもと違って、自分の好きに時間を使えることは確かに楽しいですけれど、その喜びに浸る時期は、もう終わりました。 今は、自分と向き合うということに、どこまで諦めずに疲れずにいるかというところに突入してきたので、自粛のキツさがいよいよ始まったなという思いです。自分を見つめ直す時間として、今を過ごさなければいけないというのは絶対あると思っているので。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_7

↑2018年4月大阪・松竹座  スーパー歌舞伎II『ワンピース』にて、主役のルフィ役を市川猿之助さんとダブルキャストで演じた右近さん。宙乗りで魅せます! 明るくて躍動感があって、瞬発力のある右近さんにぴったりでした!

部長 自粛も2か月ともなるとさすがに煮詰まりますよね。自分と向き合って、見えてきたのは、どんなことですか?

右近 今日はこれをやった、これもやったから大丈夫、でも本当はこっちもやったらもっといいよね……っていうことがわかっていながら、どこかで逃げてる自分がいるっていうことですね。足りないなと思うことに向き合う勇気と根気が足りない!!(笑)

まあ、そういう呑気なところというか、のんびりしているところは、自分の好きなところでもあり、ダメだと思うところでもあって、その狭間で嫌というほど、そんな自分に向き合わなければいけないので、キッツいんですねぇ、これが(笑)。

小僧 いやいや、ちゃんと自分と向き合っているなんて偉いです。その鋭い自己分析も最高♪ そして、一人モヤってる右近さん、超キュートです!!

右近 ところで、ちょっとIさん(と画面上でマネージャーさんに呼びかける右近さん)! さっきから何遊んでるですか。

I氏 いや、仮想背景にしたいと思って、いろいろ実験してたんですよ。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_8

↑2000年4月歌舞伎座『舞鶴雪月花』(ぶかくせつげっか)松虫で、岡村研佑(本名)として初舞台を踏む。7歳とあって、まだあどけないケンケン。松虫の衣裳もぴったりで、かわいい~♪

小僧 あっ、背景が歌舞伎座の舞台になってる!

部長 それ知ってます。「松竹演劇部」公式Twitterアカウントで、Web会議用の背景として配信された画像ですよね。私も使ってま~す♪

右近 そんなのあるんだ、知らなかった。まあ、いいや、勝手にやってください(笑)。で、すみません、質問なんでしたっけ?

部長 えっとですね、右近さんは、そもそも「清元」(きよもと)という歌舞伎の伴奏音楽の家元の家にお生まれになったわけですが、歌舞伎俳優を目指したきっかけは何だったんですか。

右近 僕の曽祖父、つまりひいおじいちゃんが、六代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)という歌舞伎俳優なんですが、その六代目菊五郎が『鏡獅子』(かがみじし)をやったときの記録映画を小津安二郎監督が撮っているんですね。それを3歳のときに観て、雷に打たれるような衝撃を受けたのがきっかけです。

小僧 3歳!? 私、まったく記憶がないんですけど、すごい記憶力ですね。

 

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_9

↑2005年1月新橋演舞場で尾上右近を襲名披露。『人情噺文七元結』(にんじょうばなしぶんしちもっとい)の長兵衛娘・お久を演じる12歳の右近さん。ちょっとぷっくりしていて、本当に女の子みたい。

右近 覚えていますね。まるで後光がさすように、曽祖父が輝いて見えたんです。以来、六代目菊五郎が僕にとってのヒーローになりました。みんながスーパーマンとか、仮面ライダーとかに憧れるのと同じです。

で、「あなたにも仮面ライダーの血が流れてるのよ」「あなたも一生懸命お稽古したら、仮面ライダーになれるのよ」って言われたら、「よし、頑張ろう!」って思うじゃないですか(笑)。それで歌舞伎で一生やっていこうと。

部長 一方で、2018年に「清元栄寿太夫」(きよもとえいじゅだゆう)という名前を襲名して、清元の家元にもなりました。長い歌舞伎の歴史の中でも俳優と唄い手と両方を勤めた人はいなかったそうで、初の二刀流ということが話題になりましたよね。両方をやってみて、何か気づいたことはありますか。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_10

↑2018年2月歌舞伎座で行われた名取式で清元栄寿太夫を襲名。父・七代目清元延寿太夫(きよもとえんじゅだゆう)さん(右)と兄・初代清元斎寿(きよもとさいじゅ)さん(左)とともに、口上に臨む右近さん。緊張の面持ち。同年11月歌舞伎座『十六夜清心』(いざよいせいしん)にて、清元栄寿太夫として初お目見得も果たした。

右近 歌舞伎役者って、どこか旅に出ているような感覚がある職業なんですが、それに対して、清元は「家」だと思っています。だから旅人が家に帰ってきたときに、いい家にしておきたいという思いが強くなりました。旅人に気持ちよく過ごしてもらうには、清元のほうから歩み寄って理解しようとすることが大事なんだなと。だから二刀流でやることは、たいへんかもしれないけれど、両方の気持ちがわかるところが、僕の最大の強みなんじゃないかと思います。

また、僕自身、清元をやるときには、父もいて兄もいて先輩たちもいて、非常に守られている立場だと感じる一方、役者としては、自分で貪欲に勉強しなければ埋もれて行くというあせりがあります。守られて、居心地のいい環境の中で、そのあせりとか、貪欲さをいかに忘れないようにするか。それも大切なことだと思っています。

小僧 右近さんの清元への愛、歌舞伎愛、どっちもしかと受け取りました!

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_11

↑2018年、栄寿太夫の襲名披露で唄う右近さん。役を演じているときとは、また違うトーンで、甲高い伸びのある声が魅力的。日頃から仲良しの二人とあって、お兄さんの弾く三味線とも息がぴったり。

■今の僕があるのは。高1のときの彼女のおかげです!!

小僧 歌舞伎や清元から離れたところで、小さい頃の右近さんは、どんな子どもだったんですか。

右近 小学生ぐらいのときは、女の子にいじられるような子でした。そのときのトラウマで、今でも女性が怖いです(笑)。

小僧 それは意外です!! だって今の右近さんは、コミュニケーション上手だし、負けん気も強そうだし(笑)。とてもいじられるタイプには見えませんよ。

右近 当時はおとなしかったし、変わり者だったし、歌舞伎をやるために早退したり、遅刻したりで、友達がいなかったんですね。ポケモンとか、当時流行ってたゲームなんて全くやってなかったし。また僕も未熟で、「お前たちにはわからない」みたいな虚勢の張り方をしてましたから、そこの噛み合わせの悪さが多分カンに障ったんでしょうね、女子たちの(笑)。

小僧 そんないじられキャラから、今の右近さんに変わったのは、いつ頃ですか?

右近 高校1年生のとき、初めてちゃんとした彼女ができたんですけれど、その彼女が徹底的にやってくれた感じはありますね。「僕なんてダメだ」と思っていた僕に、「あなたは魅力があるんだ」と言い続けてくれたんですね。「自信がない」と言っても「大丈夫だから」「私が言っているんだから間違いない」って言い続けてくれて。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_12

↑2015年からスタートした自主公演『研の會』(けんのかい)。2018年8月国立劇場小劇場で行われた『第四回 研の會』では、中村壱太郎さんと舞踊『二人椀久』(ににんわんきゅう)を披露。愛し合う男女の心情が色濃く映し出した作品で、二人とも愛の世界にどっぷり。耽美だわ~。撮影:桑田絵梨

部長 素晴らしい彼女じゃないですか!!

右近 そうなんです。それで少しづつ自信がもてるようになっていったというか。彼女は年上でしたけれど、本当に感謝しています。 ただ、根本的にはあまり変わってないので、女性のことに対しては相変わらず臆病です。相手が僕のことを好きでいてくれているだろうなというイメージからではなくて、僕のこと、嫌いなんだろうなというイメージから入ってしまいますね。

部長 それはまた、かなりこじらせてますね(笑)。

右近 そうですね(笑)。でも、女性ファンがいてこその歌舞伎界ですから女性を怖がってる場合ではないぞと。それで徹底的に訓練しました。今の僕のキャラクターは、訓練の賜物なんですよ。でも、僕が臆病であることを多分僕のファンは気づいてると思います。だから僕が強がれば強がるほど僕のファンは喜ぶという(笑)。

ただ、女性を恐れているのは、ある意味、尊敬のまなざしを持っているからであって、それが僕の女性に対するリスペクトの仕方でもあります。なおかつ、そんな強いイメージの女性が、弱ったり痛んだりしているときには、「俺の出番だ!!」と。そこは思いっきりモテに行きます(笑)。

小僧 きゃっ♪ なんか少女マンガみたい。モテに行くときの右近さん、見てみたいです~☆

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_13

↑2019年12月新橋演舞場にて上演された新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』オーマの精。すごい迫力!! もはや原型をとどめず……。でも歌舞伎の赤獅子に通じるものがあるかも。この公演では、アスベルと二役を演じた他、口上も勤めるなど大活躍。

部長 さてさて、今後のお話ですが、YouTubeでは、右近さんの公式チャンネルが開設しましたけれど、他に何か考えていらっしゃることはあるんですか。

右近 「破壊と再生というものをテーマに舞踊劇を作りたい」なんて漠然と考えていますが、それを実現するのはなかなか難しいですね。まだ経験が浅くて、自分で何かをプロデュースする能力もないので、むしろ求められたことをちゃんとできるように今は自分を磨きたいです。自分で調理するのではなくて、自分がいい食材になることを目指そうと思っています。

そして必要とされた時にズバッとやる!! そういう技術や心構え、反射神経、そしてパワーが芸人には重要な気がします。

小僧 そういえば、5月公開だった出演映画『燃えよ剣』は延期になり、今後の公開予定となりました。ぜひ読者にメッセージをお願します。

右近 司馬遼太郎の小説の映画化で、幕末を舞台に、新選組副長・土方歳三の生涯を描いた群像劇です。僕は会津藩主・松平容保を演じています。

歴史の大きなうねりの中で、美しく生きた人たちの生き様をぜひ観ていただきたいと思いますが、今回のコロナ騒動のあとでは、またこの映画が違う価値を持つことになるんじゃないかと思っています。生死が紙一重だった激動の時代と、現在のこの混乱した状況は、平穏だった以前よりもよりリンク性をもって見ていただけるんじゃないかと。

僕も初の映画出演ということで頑張っていますので、ぜひご覧ください。

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_14

↑2018年11月歌舞伎座『法界坊』(ほうかいぼう)では、市川猿之助さん演じる法界坊にすり寄られるおくみを勤め、後半の『双面水澤瀉』(ふたおもてみずにおもだか)では、怨霊となった法界坊との踊りで観客を魅了。女方になると、美しいだけでなく艶っぽいです!※『双面水澤瀉』「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。

部長 麗しいお姿、大スクリーンで、ぜひとも拝見します!! では、最後に今後の抱負をお願いいたします。

右近 今となっては、早く舞台に立つこと、それだけですね。去年、3ヶ月ほど舞台に立たない期間があったんですが、復活したときの喜びがとてつもなく大きかったので、今度、コロナ自粛が終わった後に舞台に立つときは、どのくらい幸せなんだろうと、とても楽しみです。

そして医療従事者の方々をはじめ、いろいろたいへんな思いをされている方々がいる中で、歌舞伎というものを演じられることのありがたみや喜びを忘れずに、責任をもってお送りしていくことができたらと思っています。劇場が開いた際には、ぜひみなさんも足を運んでください。

部長 右近さんの話を聞いていたら、血中歌舞伎濃度がぐぐーんと高まってきたわ。 

小僧 はい、久々の歌舞伎充ですね。今後の右近さんの活躍も楽しみにしてます!!

若手リレー取材に尾上右近が登場!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯16】_15

↑2019年9月国立劇場小劇場で開催された自主公演「第五回 研の會」では、念願の『弁天娘女男白浪』(べんてんむすめめおのしらなみ)にチャレンジ。弁天小僧は音羽屋にとって大事な作品だけに気合も十分。娘に化けた弁天小僧が正体を露わにする場面、カッコよかった!!

●リレー連載共通質問/自分を山手線の駅にたとえると何ですか?

「僕、なんだろう。目黒かな。 家からもわりと近くて、山手線の駅の中では、一番馴染みがあるかも。原宿ほど派手じゃないし、渋谷ほど若くもなくて、恵比寿ほどおしゃれでもなくて、『どうしたいんだろうな』っていうところがたぶん僕に似てると思います(笑)」

●前回の中村壱太郎さんから右近さんへの質問/あなたが今、政治家だったら何をしますか?

「壱太郎さん、困るんだけど、こういう質問(笑)。うーん、そうですねぇ。夢のある話にしていいですか。芝居町を作りたいです。かつての猿若町(江戸時代、江戸三座という芝居小屋が集結していた浅草の町)のような町を作る!そこに行けば、歌舞伎だけでなくいろんなお芝居やエンターテインメントが一挙に観られる。そんな町を作りたいです!」。

●リレー連載なので、次回登場の中村米吉さんへのお題をお願いします!!

「米吉くんとは、今年4月の新橋演舞場で『晒三番叟』を二人で踊る予定でした。 コロナで結局中止になってしまいましたが、もともと同級生で昔から知っている間柄なので、お稽古はすごく楽しかったです。ただ、お互いちょっと照れくさいところもありましたね。一緒に舞台をやるのは、二人とも嬉しいんだけど、その気持ちが漏れるのが恥ずかしいからなるべく、『まあ、やりますか』みたいな体を装うという(笑)。あと、彼としては僕のやる気満々な感じがちょっと鬱陶しいんだろうなっていうのは感じました(笑)。基本的に僕は同年代からは鬱陶しいと思われているので。で、同じくらい鬱陶しいのが壱太郎さんで、壱太郎さんとは鬱陶しい同盟が組めると思います(笑)。

それでは、米吉くんへの質問です。『自分を女優にたとえると誰ですか?』。回答が楽しみですね。では、米吉くん、よろしく!!」

■尾上右近公式サイト

https://www.onoeukon.info/

■尾上右近 公式YouTubeチャンネル

歌舞伎人 尾上右近 / Kabuki-jin Ukon Onoe

https://www.youtube.com/channel/UCjwefEfEUCf-uODd3EeaAGQ

取材・構成/バイラ歌舞伎部  

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 

ばったり小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。

※無断転載禁止

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