海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、英国の国民的ヒーローとなったドイツ人捕虜の感動の実話『キーパー ある兵士の奇跡』をご紹介。オリンピックの開催に揺れる今だからこそ、本作を通してスポーツマンシップについて考えてみては?
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今 祥枝
海外エンタメが大好きなライター。一年365日、映画&ドラマざんまいの日々。
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©2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann
『キーパー ある兵士の奇跡 』
世界で最も歴史があるイングランドのサッカーのFAカップ。1956年の決勝戦で、試合の最中に首を骨折していたにもかかわらず、名門チームを優勝に導いたゴールキーパー、バート・トラウトマンの名は永遠に歴史に刻まれることとなった。
『キーパーある兵士の奇跡』は、不屈の魂を持つ国民的ヒーロー、トラウトマンの波乱の半生を描いた感動ドラマ。スポーツが社会に果たし得る重要な役割を伝えて、終盤では伝説の試合のシーンに胸が熱くなる。オリンピックの開催に揺れる今だからこそ、スポーツマンシップについて考えてみるのもよいのでは。
もうひとつ、本作が今の時代に特別な意味を持つ理由。それはトラウトマンがドイツ人捕虜で、ナチスの兵士だったことにある。たまたま収容所でサッカーをしていたところ、地元のサッカーチームの監督ジャックの目に留まったことから彼の人生は大きく変わることになる。
敵国の元兵士を見る目は、当然ながら冷たい。ジャックの家族やチームのメンバー、ユダヤ人コミュニティの反発は激しく、試合に出ればブーイングの嵐。それでもトラウトマンはこの地にとどまり、真摯に、誠実に、自分ができる唯一のこととしてサッカーに打ち込み、思いをプレーに託す。その姿が愛する女性の心を動かし、やがては社会全体が敵と見なしていた相手を、自分たちと同じ“人間”なのだと理解し、許し、和解への道を切り開いていく。
劇中、トラウトマンの英国人の妻マーガレットが世間に対して「許しを与えるより、憎むほうが簡単だ」と訴える言葉が胸に響く。怒りや憎しみよりも、愛のほうがはるかに偉大。シンプルだけど、そう信じる気持ちがまずは大切なのかも。
監督/マルクス・H・ローゼンミュラー
出演/デヴィッド・クロス、フレイア・メーバー
公開/新宿ピカデリーほかにて10/23より
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©2020 HIGH BROW CINEMA
『空に住む』
両親の突然の死、愛猫との別れ、会社の後輩の妊娠・出産、子どもがいない叔父夫婦。そして人気俳優との恋愛を通して、葛藤しながらも前を向く書籍編集者・直実の姿を繊細なタッチでつづる。直実が暮らすタワーマンションからの眺望にもうっとり。
監督・脚本/青山真治
出演/多部未華子、岩田剛典
公開/全国にて10/23より
©2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
『十二単衣を着た悪魔』
源氏物語の世界に現代の青年・雷が紛れ込み、上昇志向が強い弘徽殿女御に仕えることに。逆境のなか、堂々と肝の据わった女御の生き方に、劣等感にさいなまれ、いじけた自分を省みる雷の“気づき”に共感&ホロリ。伊藤と三吉の主演コンビも好演!
監督/黒木瞳
出演/伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉
公開/新宿ピカデリーほかにて11/6より
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2020年11月号掲載
【BAILA 11月号はこちらから!】