仕事も人生も本気で向き合ってきた石原さとみさん。多彩な役を全力で演じる画面越しの姿に勇気づけられたファンも多いのでは。取り巻く環境の変化をキャッチしながら、より心地よく、もっと豊かに。34歳の今、石原さんのまなざしの先にあるものとは。
Q 年齢を重ねることは怖くないですか?
A まったく! 笑ったときのシワも「いいな」って感じてます
表情のシワやソバカス、クマにすごく人間味を感じるし、チャーミングに映ると思うんです。今回のドラマのように大人の恋愛を描くときは、シワのおかげで説得力が増すというか……プラスに働くなとも感じているんです。こうして徐々に年を重ねていく様子を作品の中に残していただけるのも、役者の醍醐味ですよね。
Q 石原さんが仕事での対人関係で心がけていることって?
A 「上司は選んでいい。でも後輩は選ばない」 上と下の世代に挟まれる30代の今、心に刻みつけている言葉です
私は会社員ではないけれど、上下関係はどこにでも存在するもの。「先輩や上司は選べない」と思い込みがちだけど、実は逆。尊敬できる人、学ばせてほしい人はとことん自分の中で選んでいい。その代わり後輩は振り回されたり、依存されることもあるかもしれないけど、その人たちのおかげで鍛えてもらえる。自分を成長させてくれる存在だから、どんなことも受け入れたいって思っています。
Q 新ドラマ「恋はDeepに」で届けたいものは?
A こういう時代だからこそ、見た人が明るく春色の気持ちになってほしい
今って、先行きが見えないグレーな世の中。せめてドラマの世界では春色の気持ちを味わってもらえるようなファンタジックなラブコメに今回挑戦します。目の前にある現実的な問題を解決する力にはなれなくても、この作品の世界観に触れて「今日も頑張ろう」って一人でも多くの人の心をほんの一瞬でも軽やかにすることができたら、とてもステキなことだって思います。
Q 初共演の綾野 剛さんってどんな人?
A とっても素敵な人! 実は、撮影前に文通して たんです(笑)
マネージャーさんを通して文通させてもらい、綾野さんの言葉にたくさん救われました。綾野さんは、客観的に物事をとらえた上で、はっきりとした物言いで気持ちを伝えてくれる人。それでいて心に寄り添ってくださった。ラブコメ作品はかけ合いも多く、お互いの相性がすごく反映されるんですね。噓のない人柄は安心感しかありません。
Q 5月には舞台『終わりよければすべてよし』が控えています。石原さんにとって舞台の魅力とは?
A 稽古を重ねて、進化し続ける姿を届けられる場所。ずっと続けていきたい
私、叱られたい人間なんです(笑)。舞台は自分では気づけない足りない部分を指摘してもらって成長できる場所。そして、ごまかしなんてきかないので自分自身で光を放つしかない。そのヒリヒリを心が求めています。藤原竜也さんと共演させていただくシェイクスピア、楽しみと緊張で身震いすら感じています。貴重な経験をまた重ねられると思うとすごく幸せです。
Q 今、自分の中でいちばん豊かに感じる時間の過ごし方は?
A 家族とゆっくりお茶をする時間
家族といういちばん小さなコミュニティで過ごす時間や空間を豊かにしたくて試行錯誤中。格段に増えたのはティータイムで、気がつけばずっとチャイばっかり作ってます(笑)。最近はショコララテを作れる専用のマシーンをいただいたので、めちゃくちゃ愛用してます。空間づくりでいえば、ベランダまわりのアイテム、食器類も増えました。今、人生の中でおうち時間がいちばん充実してます。
Q 女優という仕事について今、あらためて思うことは?
A エンタメはなくても生きていけるけど、あると人生を豊かにしてくれるもの。もう一度、その力を信じようと思うんです。女優をしている私の場合、誰かを「励ます」という人生の目的がより鮮明になりました
目の前の生活を守ることが優先になっている時代の中で、エンタメは淘汰されてしまうかと思いきや、変わらずに私たちの毎日にちゃんと息づいていますよね。どん底から誰かを救おうなんて大それたことは言えないけど、「現実を忘れられる」「ちょっと心が持ち上がる」「ツラい中でも笑えた」とか、その小さな積み重ねで人生をちょっとだけ上向きにできる力を肌で感じています。女優という仕事をしていると、いい意見もあれば、そうじゃない声も届いて立ち止まりそうになることもある。でも、そこに費やす時間はもったいないと思うから、今何をしたいのか、何をするべきかに集中していたい。無理なく、媚びることもなく、ただひたむきに。
©️日本テレビ
ドラマ「恋はDeepに」
脚本/徳尾浩司
出演/石原さとみ、綾野 剛、今田美桜ほか海を愛する魚オタクの海洋学者(石原)と海外帰りのツンデレ御曹司(綾野)が織りなす大人のラブコメ。4/14から水曜22時NTV系にて放送
舞台『終わりよければすべてよし』
作/W・シェイクスピア
翻訳/松岡和子
演出/吉田鋼太郎
出演/藤原竜也、石原さとみ、吉田鋼太郎ほか
シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の集大成。2021年5月より、埼玉ほか全国4カ所で上演決定。
ワンピース¥115500・ジレ¥89100/コロネット(フォルテ フォルテ) 靴¥23100/パッション(フレイ) ネックレス(バードモチーフ)¥502700・リング(右手)¥627000(サンメイア)・ネックレス(パール)¥492800・リング(左手中指上から)¥66000・¥77000・¥77000・¥67100(すべてミズキ)/ロンハーマン
石原さとみ
Satomi Ishihara●1986年12月24日生まれ。東京都出身。直近の主演作に、ドラマ「アンサング・シンデレラ病院薬剤師の処方箋」「人生最高の贈りもの」など。ドラマや映画など映像作品のほか、舞台出演も精力的に行っている。
撮影/YUJI TAKEUCHI 〈BALLPARK〉 ヘア&メイク/木部明美〈PEACE MONKEY〉 スタイリスト/宮澤敬子〈WHITNEY〉 モデル/石原さとみ 取材・原文/長嶺葉月 構成/内海七恵〈BAILA〉 ※BAILA2021年5月号掲載
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