自らの記録更新なるか、BTSが『Butter』でこの夏を席巻!
ファンクとソウルで世界中に希望の光を灯した大ヒットソング「Dynamite」で、もはや説明不要のワールドスターの地位を確立した韓国のボーイズグループBTS。
そんな彼らがアルバム『BE』から6か月の時を経て、『Dynamite』に続き全編英語曲となる『Butter』で待望のカムバック。
5月21日(金)の全世界同時発売を受け、グローバル記者会見を行った。
『Butter』カラーで彩られた会場に、和やかな雰囲気で登場したBTS。
肩の手術後療養中だったSUGA不在で行われた前回の会見では、SUGAがまるでそこにいるかのように、1人分の場所を空けて撮影に臨むメンバーの姿が印象的だったが、順調に回復し、晴れて7人揃っての会見となった。
肩の調子を聞かれたSUGAは、「運動を中心にリハビリを一生懸命続けています。多くの方が心配してくださったおかげで、回復に向かっています」と感謝の言葉を口にした。
またメンバーのヘアスタイルにも大きな変化が。
J-HOPEは今回のカムバックに際し髪を金髪にしたことでファンを驚かせていたが、その時よりもさらに鮮やかなヘアカラーで登場。「『Butter」なのでバター髪になりました」と太陽のような笑顔を見せた。
一方パーマヘアで登壇したVは、「コンセプトをもう少し理解してからやらなければならなかったですが……人生で1回やってみたいと思っていたヘアスタイルです」と恥ずかしそうな表情で説明。
このふわふわのヘアスタイルについてJINが「メンバーの間でも話題になっていて、ずっと可愛がっています」と話すと、Vは「最近メンバーのなかで僕が“可愛い”を担当しているので、こういう髪型にしました」とまんざらでもない様子。
隣に座るSUGAも「プードルみたい」とVの髪の毛をわしゃわしゃと撫で、仲の良い姿を見せた。
待望の新曲は、爽やかなダンスポップにBTSの愛が詰まったサマーチューン
ニューデジタルシングル『Butter』とは?
今回も曲の導入部分を担当したJUNG KOOKが、「『Butter』は楽しくて爽やかなダンスポップソング。一回聞いたら忘れられないメロディ、何度でも見たくなるようなパフォーマンスになっているので、早くステージをお見せしたいです」と語るように、ひとたび聞けば頭の中でリピートが止まらなくなる中毒性の高い曲。
曲の内容について聞かれたJIMINは、「タイトルからわかるように、聞きやすい曲を作ろうとしました。少し恥ずかしいですが、”バターのようになめらかに溶け込んで君をとりこにする”という可愛らしい告白ソングのように受け止めていただけたら。可愛かったり、少しおちゃめだったり、でもカリスマ性もあったりと、さまざまな魅力を盛り込みました」とはにかみながら答えた。
ミュージックビデオの見どころは? 個性あふれる即興ダンスも!
ダンスリーダーのJ-HOPEは、「エネルギッシュで可愛らしい曲なので、パフォーマンスにもそれを盛り込んでみました。可愛い悪党のように投げキッスをしたり、髪をかき上げたりする動作がポイント。ユニットダンスもご注目ください」と回答。
またVによると、エレベーターの中で一人ひとりがダンスを披露するシーンは、各自が現場で即興で作ったフリースタイルのダンスとのこと。それだけに「それぞれの個性と魅力を見て欲しいです」と語った。
JINは、「今回のミュージックビデオには、ARMY(BTSのファンの総称)への愛を込めました。体で”ARMY”を表現するシーンで、僕はJUNG KOOKさんとAの文字を作ったのですが、最初見た時Aの形らしくないなと思い、二人で一生懸命悩んでよい形に作り上げました」とARMYへの愛の大きさが窺える撮影時のエピソードを明かした。
有言実行のSUGA「ビルボードHOT100で1位をとってみせます!」
BTSといえば、寸分の隙もないステージ演出と一糸乱れぬダンスパフォーマンスだけに、まだ見ぬ『Butter』のステージへの期待は高まるばかり。
世界中が注目する初披露の舞台は、日本時間5月24日に開催される「2021ビルボード・ミュージック・アワード(BBMAs)」。BTSは、2018年の『FAKE LOVE』の初披露以降、4年連続パフォーマーとして参加することになっている。
それに対しSUGAは、「どんな曲であれ、初ステージはいつもわくわくしたり緊張したりするものですが、ビルボード・ミュージック・アワードは僕たちにとってとても意味があるステージなので、そこで初披露できるということを光栄に思います」と、ビルボード・ミュージック・アワードに対する特別な思いを口にした。
昨年は2部門だったが、今年は自己最多となる4部門の候補に選出されたことについてJUNG KOOKは、「4つの部門の候補になったというのはとてもすごいことなので光栄です。『トップ・ソング・セールス・アーティスト』と『トップ・セールス・ソング』は、初めてノミネートされただけにさらに嬉しいです。
『Dynamite」を発表して1年くらい経ちましたが、今も多くの方々が愛してくださって幸せです」と感謝を述べた。
『Butter』がビルボードHOT100に上がっていることについて、SUGAは苦笑しながら「いつもこういうのを話すのは僕なので少しプレッシャーなんですが、期待していただけるだけで感謝しています。『Butter』は楽しいサマーソングなので、だんだん暑くなってくるこの時期に多くの人に楽しんでいただきたいです。
1位……そうですね、HOT1001位…とるんじゃないですかね?」と控えめに話していたものの、
「いや、とるべきですね。とらないといけない! やってみせます!」と、最後には力強い言葉とともにガッツポーズを見せ、会場を沸かせた。
音楽界に新たな歴史を刻み続けるBTS。彼らが大切にしていることとは?
ここからは海外の記者からの質疑応答。
──『Butter』でどんな影響を与えたいと思っていますか?
JUNG KOOK:とてもシンプルです。だんだん暑くなるので、たくさんの人がこの曲と一緒に楽しく過ごしてくださればと。それだけで十分です!
──デビュー当時は、テレビクルーが分かるようにそれぞれ名前の書いたゼッケンを着ていました。RMさんは以前、カメラマンが自分たちの名前を覚えてくれたらすごいことだと言っていましたが、今はグループとしてだけでなく、個々人としても世界的に知られていることについてどのように感じますか?
RM:個々人の名前を知ってくださっている方が増えているのは光栄ですし、カメラ監督やスタッフの方々も知ってくださっている方も多くいらっしゃいます。
ただ僕たちは今もリハーサルの時にはゼッケンを付けて踊っています(笑)。
僕たちを知らない方もいらっしゃると思うので、初心を忘れないBTSでいたいです
先の見えない日々。突破口になったのは音楽とARMYへの愛。
──過去1年間の経験が、音楽創作に対する考えや、音楽を通じて共有したいメッセージ、追求する音楽スタイルに変化を与えましたか?
SUGA:『ON』の活動から1年3~4か月が経ち、僕たちにも大変な瞬間がありました。
僕の場合リハビリをしていたこともあり、自分たちの音楽を聴きながら、慰められたり励まされたりしました。
同時にファンの方々が、このような感情で僕たちの音楽を聴いて、こういう風に慰められたり、応援してくれたりしたんだなと思い、音楽に対する価値観、制作に対する考えがたくさん変わりました。
これまで様々な音楽を聴いて育ち、音楽活動を始めましたが、僕がまた誰かにそのような影響力を与えることができると思ったのと同時に、これからも責任感をもって良い音楽をたくさん作らなければと思いました。
この1年間は辛い記憶よりも、より良く発展できるきっかけとなったので個人的にはよかったと思います。
──2020年は大変な年でしたが、ビルボードHOT100 1位、グラミー賞ノミネートなど、BTSが多くの成果を成し遂げた年でもありました。ジェットコースターに乗っているような日々が続く中、どのような教訓を得ましたか?
J-HOPE:さまざまな計画が白紙になり、混乱もありました。ただ計画になかった『Dynamite』を発表することになり、アルバムの制作をしながらめでたいこともたくさんありました。質問の通り、ジェットコースターのような1年だったと思います。
その中で最も大きな役割を果たしてくれたのが音楽です。辛い時、不安な時、突破口になったのが音楽であり、このような結果を成し遂げてくれたのもやはり音楽でした。音楽の力を実感したことで、これからもそのような音楽を作り、素敵なエネルギーを与えたいと思っています。また日頃当たり前だと思っていたものの大切さを実感することができたのがとても大きなことでした。
──ここ数年間、自分たちのバラエティ番組以外には積極的には出演していませんでしたが、最近では『Your Quiz On The Block』やKBSのスペシャル番組に出演されています。何がこのような変化をもたらしたのでしょうか?
JIMIN:スタンスを変えたというよりは、計画がなくなってしまい、ファンの皆さんに会えない中で、僕たちにできることが何なのかと考えた結果、番組に出演したり、ファンの皆さんのためのコンテンツの制作をしたりすることにしました。それが皆さんへのプレゼントになればと思ったからです
自信作『Butter』でグラミー賞再挑戦へ
最後は会場からの質疑応答。
──『Dynamite』と『Butter』は、全編英語詞で、デジタルシングルという共通点があります。昨年のグラミー賞ではノミネートされるも惜しくも受賞には届きませんでしたが、今回もグラミー賞を狙いたいという意図がありますか?
SUGA:ないということはできないと思います。当然グラミー賞を受賞したいという思いはありますし、『Butter』でもう一度挑戦したいという思いもあるので、その結果が得られたら嬉しいです
RM:グラミー賞のことはもちろん念頭に置いています。最善を尽くして挑戦したいと思っています
──RMさんが作詞とラップの制作に参加した経緯と、母語ではないので大変だった点があれば教えてください
RM:『Butter』は、たくさんの曲の中から選ばれたと聞きました。僕たちも制作や作曲作詞に意欲的なので、参加したかったのですが、もともと完成度が高くて……。
ただ、ラップパートは僕たちと少し合わない部分があったので、自分たちのスタイルに合わせて直してみようということになったんです。英語が話せるから僕だけ参加したわけではなく、J-HOPEさんやSUGAさんも一緒にやったのですが、血も涙もない決定が行われた結果、僕が作ったラップパートを中心に修正されたという経緯がありました。
母語ではないので、多少の違和感はあったのですが、僕自身も音楽を始めたのはアメリカのヒップホップがきっかけだったので、早くまとまったような気がします。
SUGA:英語で書かないといけないので、頑張って勉強したんですけど、選ばれませんでした。血も涙もないです(笑)
──RMさんが『Rolling Stone』のインタビューで、自分たちの曲がK-POPの中にあるのか、外にあるのかについては気にしていない、とおっしゃっていましたが、今回の曲でBTSらしさ、K-POPらしさはどこにあると思いますか?またRMさんが作った歌詞はどの部分ですか
RM:音楽に限らず、芸術、創作というものは、そのプロセスにあるときはわからないもので、過ぎてからこれはそういうことだったのかと評価されるんですね。8年目を迎える僕たちは、グラミー賞など色々な課題に対し現在進行中のチームです。
K-POPはもはやジャンルというよりカテゴリ、ひとつの産業、少し拡張された概念になったのではないかと思います。僕たちの音楽がK-POPという枠の中で説明されるべきかどうかは、今はよくわかりません。僕たちがBTSとしてベストを尽くした後に、評論家の方々が評価してくださるものではないかと思っています。
今回僕が書いたパートは、最後にJ-HOPEさんと呼吸する部分と、SUGAさんと僕がやりとりする部分の半分、ラップパートの半分くらいは、僕が修正したり加えたりした部分です
BTSの一番の関心事は、自分たちの未来について
──『Butter』を完成させるまでどんな悩みがありましたか。またデビュー8年目を迎えますが、最近話題になるものはありますか。
JIMIN:一番の話題は、8周年と少し関連があると思います。ここ数か月間、チームとしてどうすべきかや、ファンの皆さんとの関係、僕たちの新しい姿でファンの皆さんの心を満たすことができるのか、といったことについて色々と考えました
RM:JIMINさんが話してくれたように、僕たちの一番の関心はBTSの未来のことですね。ニューノーマルのなかで、僕たちはなぜ存在し、音楽をつくるのか。もちろんグラミー賞のような成果も重要だと思いますが、僕たちがBTSとしてどういった価値を創造していくべきなのか。どういったことを追いかけていけば、このジャンルの中で生き残っていくことができるのかについて悩みました
──BTSは元々ヒップホップグループとして始まりましたが、今後も本格的なヒップホップに挑戦される考えはありますか? またBTSが世界的に人気な理由をどのように考えていますか
SUGA:昨年のアルバム『MAP OF THE SOUL: 7』や『BE』にも、何曲かヒップホップの曲が入っていました。ジャンルを区別しているわけではなく、何かを作るとき、大衆音楽として何がいいのかを考えた上で、自分たちがやりたいものを組み合わせる方法をとっています。
ラップだけのトラックは僕もミックステープで10個そろえて出したことがあるし、ほかのメンバーも個人的な作業の曲でそういった曲を出す可能性はあると思います。
全世界での人気について、そこまでメンバー同士で考えたことはないですが、僕たちは歌手として、音楽に関しては誇りを持っていいほど準備してきましたし、うまくやっていると思います。色々な要因があると思いますが、まずは歌手として、第一にステージ、第二にステージを考えるのが僕たちの強みなのではないかと思います。
JIN:なぜ愛してくださるのかに関して、インタビューや動画を探したことがあるんですが、「同年代の気持ちを代弁してくれてありがとう」という話がありました。
悩んでいるとき僕らを見て、「BTSはこのように解決しているのか」と思ってくれる人が多いと気づき、そういった部分が共感を得られたのではないかなと思います
──所属するHYBEのミュージアム内で流れる映像で、RMさんは「人々の心に長く残ることをしたい」、SUGAさんは「聞いてくれる人のための音楽をしたい」とおっしゃっていました。先ほどのRMさんの「BTSとしてどのような価値を創造していけるのか」という発言にも繋がると思いますが、そう考えたきっかけは何なのか、それに対する答えが出たのかについて聞きたいです
RM: 曲を制作するとき、まず会社と僕たちでどういった話をしたいのか、どういった感情を抱えているかについて話をします。最近考えていることについてのインタビューのようなものです。
そこからバランスを見つけていきます。つまりBTSがやりたいもの、表現したいことはなんなのか。その一方で、人々が僕たちに聞きたいことはなんなのか、その悩みがいつもあります。
『学校シリーズ』、『花様年華』、『LOVE YOURSELF』、『MAP OF THE SOUL』、『Dynamite』、『BE』、『Butter』とこれまでやってきましたが、毎回そのアルバムの企画と曲、特にタイトル曲は、僕たちがその瞬間に下した最善の決断だったと思います。
ニューノーマルを迎え、今後どういった価値を追うべきなのかについて責任は重いですが、今回の『Butter』もまた、僕たちなりの答えを出したといえます。この次に出てくる答えが、今考えている悩みに対しての次なる答えだと思いますし、その時々のアルバムや曲たちが、僕たちなりのベストを尽くした結果、答えだと考えてくださったらなと思います
SUGA :僕は大邱で音楽を始めたとき、観客2人の前で公演したこともあります。さらに練習生の時に経験した、聴いてくださる方がいないなかで音楽をやったときの心の傷に比べれば、僕たちの音楽を聴いてくださるファンの皆さんのために音楽をするというのは当たり前だと考えてきました。
僕は今本当に身に余る愛をもらっていると思うし、誰のために音楽をするべきなのかという答えはいつもファンの皆さんでした。僕には聴いてくださる人がいない音楽にまつわる悲しい記憶がたくさんあるので、特にそうするべきだと思っているんです。
Information
PHOTO/BIGHIT MUSIC 取材・文/轟木愛美