作品の中でパワフルに躍動する姿とは対照的に素顔はゆるっとしていてニュートラル。そんな山﨑賢人さんに聞いた、ここぞでストイックさが発動される仕事のこと、苦しくも楽しかったと振り返る大切な作品のこと、そして秋ならではのオフの楽しみとは…?
Harvest【山﨑賢人さんの実りの秋】
できることが増えて、仕事が楽しくなってきた
9月に30歳になったばかりの山﨑さんは、人生の約半分を俳優として生きてきた。近年は『キングダム』シリーズ、『ゴールデンカムイ』シリーズなどアクション大作での活躍の印象が強いが、コメディからシリアス、ラブコメなど、たどってきたジャンルは驚くほど幅広い。
「14年もこの仕事をしてきたと思うとあっという間だったし、すごくありがたさを感じます。出演してきた全作品に対して、『ひとつも無駄な経験はなかった』と思いますね。誰にでも言えることだと思うけど、やっぱり仕事って楽しいことだけじゃないじゃないですか。自分の中でも波はあったけど、最近はいい状態で作品と役に向き合えることが多くなってきた気がします。それはきっと、たくさんの失敗を経て、技術や経験が伴ってきたから。できることが増えてきたからこそ、仕事がより楽しくなってきたと思います」
頑張った経験は心も体も覚えている
プロとしていいパフォーマンスを発揮するために大切にしているのは、事前の準備。映画版と並行し、8カ月もの時間をかけて撮影したドラマ「連続ドラマW ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―」でも、主人公の杉元佐一を演じるために徹底的にアクション練習を重ねた。
「追い込まれたときは『俺は不死身の杉元だ!』と気合で乗り切りました(笑)。今は別の作品でアクションの撮影をしているのですが、マッスルメモリーって本当にあるんだなと思っていて。杉元を演じるために筋肉を増やした経験があるから、がっつり筋トレをするとすぐにパンプアップするんです。一度頑張ったことは体もちゃんと記憶している。やっぱり無駄なことはないんだなって思えています」
心身ともに実りの時期を迎えた山﨑さんの目には、どんな未来が広がっているのだろう。
「これから30代をどうしていこうか考える時間が楽しいです。でもまず今は『ゴールデンカムイ』を世界中の皆さんに楽しんでもらえるよう、しっかり届けることが天から与えられた僕の役目。物語はまだ続いていくので、今後も杉元を演じるとしたら……ジンギスカンとルイペを食べて頑張ります!」
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Appetite【山﨑賢人さんの食欲の秋】
Q 秋の味覚といえば?
A 秋刀魚! 内臓まで食べます
自分で焼いたことはまだないんですけど、実家にいた頃は秋になるといつも母が用意してくれました。大根おろしにしょうゆをかけて、熱々のご飯と一緒に食べるのが大好き。内臓の苦さもいいっすよね。
Q ゴールデンカムイの撮影では何が美味しかった?
A ニシン漬けとヤマシギのオハウ
囚人の辺見(演:萩原聖人)が振る舞ってくれるニシン漬けが美味しくて、いっぱい食べちゃいました。ヤマシギのチタタプを煮込んだオハウ(汁物)も、プクサ(行者ニンニク)が入っていて最高でした!
Sports【山﨑賢人さんのスポーツの秋】
Q 苦手な運動はある?
A ……(かなり考えて)ないです
ていうことにしておいてください(笑)。いろんな作品でアクションをしてきたし、今回も武術や銃剣の練習など、できることはすべてやりました。対峙する敵によって動きが違うのも見どころです。
Q 杉元を演じる上で、体づくりは何をした?
A 体重を自己最大まで増やしました
筋トレとアクション練習をしながら、一日5食の生活で10kg増やしました。食べたくないときもなるべくタンパク質をとらなきゃいけないので、『キングダム』で10kgしぼったときよりキツかった……。
Q 今作のアクションシーンで印象深いのは?
A 牛山とのダンス(?)シーン
札幌世界ホテルで初めて牛山(演:勝矢)と出会ったときに戦うシーンは、踊っているように見せるつくり方が面白くて。本気で戦っているのにポーズを決めているように表現するのが楽しかったです。
Q オフの日は何してる?
A 池内さんに教わったキャンプを極めたい
キロランケ役の池内博之さんにキャンプに連れていってもらい、一人でミニマムに楽しむテクニックを色々教わったんです。サバイバル能力が上がって、人間として強くなった気がしました。
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Reading【山﨑賢人さんの読書の秋】
撮影中は原作がいつも助けになっていた
『ゴールデンカムイ』は累計部数2900万部を突破した大人気コミック。ファンが多い原作を実写化するにあたり、山﨑さんが背負ったプレッシャーは相当なものだった。
「スタッフやキャストの皆さんとお会いして、衣装も決まって、どんどん形になっていくにつれて『これは絶対に面白くなる!』と思っていたんです。ただ、つくったものが受け入れられるかどうかは、本当にお客さん次第だったりするので不安はありましたね。でも映画が公開されてからは、観た人たちからの評判がすごくよくて嬉しかったです」
続編となる「連続ドラマW ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―」でも、支えになったのは原作の存在。
「漫画はひとコマひとコマ全部に意味があるので、撮影前には必ず描かれているシーンを確認。演じる上で原作の表情からエッセンスを取り入れたいという気持ちがあったんです。特にコメディチックな場面では、台本に書かれている活字を追うだけだとどのくらいのテンションで演じればいいかわからなかったので、原作がいつも助けになっていました」
アイヌが隠した莫大な埋蔵金をめぐる苛烈なサバイバル・バトルは、個性的なキャラクターの登場でますますドラマチックに!
「一癖も二癖もある囚人たちに出会って旅をしていく『ゴールデンカムイ』は、連続ドラマの形にすごく合っていると思いました。作品の魅力である食事シーンやコメディシーンもだんだんと増えてくるので、ぜひ注目していただけたら。北海道での撮影中は、アシㇼパさん役の(山田)杏奈ちゃんや白石役の矢本(悠馬)くんはもちろん、玉木(宏)さんや(工藤)阿須加くん、栁(俊太郎)くん、(眞栄田)郷敦くん、勝矢さんなど、敵役・味方役関係なく食事をすることが多くて。みんな体を鍛えているから本当によく食べるし、よく飲む(笑)。そうやって食事を囲む時間は、仲間が徐々に増えていく、まさに『ゴールデンカムイ』らしいなと思いました」
漫画を読むと自分の心が豊かになっていく
最近は仕事で読むことが多くなったけれど、子どもの頃から漫画は大好き。
「好きな漫画は『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』『HUNTER×HUNTER』『SLAM DUNK』……。『週刊少年ジャンプ』のバトル系が多いですね。オフのときも脳内でずっとバトルしてます(笑)。この仕事を始めてからは、どうしても『この役を演じてみたいな』というマインドで読むことが多くなりました。『自分だったらこの役をやりたいけど、実際はこっちの役に配役されそう』とか。そうやって妄想するのも楽しいです」
漫画を通して様々なキャラクターの心情を知り、追体験することは、演じることを生業にする山﨑さんにとって大切な行為。
「漫画を読むと自分の心が豊かになっていく感じがするんですよね。仕事でアウトプットすることが多いからこそ、漫画を読んだりするインプットの時間は、これからも大事にしていきたいなと思っています」
Sleep【山﨑賢人さんの睡眠の秋】
「仕事で結果を出すためには、ちゃんと休むことも大切。
最近は特に、いい睡眠のために早起きして日光を浴びることも大事だと感じています。
といいつつ、休みの日はなかなか起きられないんですけど(笑)」
©野田サトル/集英社 ©2024 WOWOW
「連続ドラマW ゴールデンカムイ─北海道刺青囚人争奪編─」
明治末期の北海道。元軍人の杉元佐一(山﨑賢人)は、アイヌの少女・アシㇼパ(山田杏奈)、脱獄囚の白石由竹(矢本悠馬)とともに、金塊のありかを示す暗号を彫られた24人の刺青囚人を探していた。クセ者たちが次々と立ちはだかる、波乱の旅の行方は……?
出演:山﨑賢人、 |
山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、塩野瑛久、矢本悠馬、 |
大谷亮平、高橋メアリージュン、桜井ユキ、勝矢、 |
中川大志、北村一輝、 |
池内博之、木場勝己、大方斐紗子、井浦新、 |
玉木宏、舘ひろし |
原作:野田サトル「ゴールデンカムイ」(集英社ヤングジャンプ コミックス刊) |
監督:久保茂昭、片桐健滋、落合賢、佐藤洋輔 |
脚本:黒岩勉 |
音楽:やまだ豊、出羽良彰 |
アイヌ語・文化監修:中川裕、秋辺デボ |
製作著作:WOWOW |
制作プロダクション:CREDEUS |
WOWOWにて毎週日曜午後10時に放送・配信中 |
山﨑賢人
やまざき けんと●1994年9月7日生まれ、東京都出身。近年の主な主演作はNetflixドラマ「今際の国のアリス」シリーズ、日曜劇場「アトムの童」、映画『キングダム』シリーズ、『ゴールデンカムイ』『陰陽師0』など。2025年1月に主演映画『アンダーニンジャ』が公開予定。
撮影/倉本侑磨〈Pygmy Company〉 ヘア&メイク/髙橋幸一〈Nestation〉 スタイリスト/伊藤省吾〈sitor〉 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2024年12月号掲載