7月から放送中のアニメ『【推しの子】』の第2期・オープニング曲「ファタール」を歌うのは“アイドル・中島健人”と“アーティスト・キタニタツヤ”による異色ユニット・GEMN(ジェム)。お互いを“健人さん”“キタニティ”と呼び合う仲のよい二人が抱く、楽曲への熱い想いや自身の原動力に迫る。
【推しの子】のキャラクターが抱える苦悩を表現したかった
挑発的かつ妖しさのある楽曲「ファタール」はアニメ『【推しの子】』のオープニング曲として書き下ろされたもの。
キタニタツヤ 今回の第2期は、芸能界で奮闘する主人公アクアのエピソードが中心。僕と健人さんが共通して共感できるキャラクターもアクアだろうと思っていたので、このタイミングで一緒にできたのはすごくよかった。
中島健人 “アクアが抱える苦悩や葛藤“にリンクさせた曲にしたいというのは、初めて会ったときから話していたよね。
キタニ 僕ら二人で歌うものなら、歌詞はその方向性だろうって。
中島 第2期のストーリーはそれぞれ違う能力を持つ役者たちのバトル的要素もあると思っていて。お互いの能力を引き出しあうコントラストみたいなものも曲に生かしたかった部分です。
第1期のオープニング主題歌はYOASOBIの「アイドル」。世界的ヒットソングの次ということへのプレッシャーは相当だったように思う。
中島 プレッシャーかぁ……。
キタニ え〜俺は超あったんだけど。
中島 ……ないかも。
キタニ なんでぇ〜!? すごいわ〜。
中島 仕上がった曲がいいんだもん。
キタニ 最初に話がきたときも?
中島 ない。どっちかっていうと“やってやるよ”って気持ちかな。
キタニ かっこいい〜。僕はもう……やっぱり曲を書くとなるとさぁ。
中島 いや、それはそうだよね。
キタニ どうしたって「アイドル」が浮かぶし(YOASOBIの)Ayaseさんに勝たないとなの!? 怖いよ〜〜って(笑)。
中島 アツいね、その葛藤。
キタニ アニメ『呪術廻戦』で担当した「青のすみか」のときもそうでした。
中島 あれも第2期だよね。
キタニ そうっす。第1期のオープニングはEveさんの「廻廻奇譚」で、めちゃくちゃヒットしたあとの第2期で。
中島 第2期に強いってことだよ!
キタニ そういうこと(笑)?
中島 今キタニティのスタッフさんが「(アニメ主題歌は)“第2期がいちばん引き受けちゃいけない”暗黙の了解がある」って平然とした顔で言ってた(笑)
キタニ わかってるのになぜ!(笑)。
中島 そこで勝ってきてるのがかっこいんだよ、キタニティは!
キタニ でも健人さんが自信満々でいてくれるからプレッシャーはありつつ大丈夫な気にはさせられてます(笑)。
芸能界を舞台に人物を色濃く描いているのも『【推しの子】』の魅力。
キタニ 僕はずっとつくり手としてやってきたので『【推しの子】』ではクリエイター側に共感することも多い。漫画家のアビ子先生とか。
中島 それは俺とはまた違った視点かも。俺はアクアやアイ、有馬かな、黒川あかねに共感するかなあ。
キタニ やっぱりそうなんだ!
中島 俺は、どうしたってやっぱりアイドルや役者側になるね。アクアのアイに対する執念もわかるし、アイの“すべてを嘘で包み込んでいた人生”もわかる。この作品はそういう部分の描き方がリアルで怖くなるくらいに深いし、芸能人みんなのバイブルだと思う。
芸能界で生き抜くためには承認欲求が必要不可欠
熱く仕事に向き合う彼らの中の原動力についても聞いた。
キタニ やっぱり、自分を認められたい、自分の名前が後世に残らないと気がすまない、みたいな感覚は常にあります。ひと言で表すと承認欲求がデカすぎる(笑)。
中島 でも承認欲求はこの仕事をしている限り絶対に必要だと思うんだよね。承認欲求があるからこそ表現できることや、感じられる悔しさや粘り強さがあると思う。たとえば芝居でいうと、泣くシーンでどうしても涙がでなかった作品のことが今でも忘れられなくて。
キタニ 悔しさが消えない作品ね。
中島 そう、自分の黒星として消えない。そしてその失敗がいつしか〝過去の自分にどう打ち勝つか〟っていうモチベーションになる。特に今のいちばんの原動力はそれかもしれない。
常に上を見ているが疲れる瞬間はないかと尋ねると「ある!」と返ってきた。
中島 そういうときは友達と会ったり、楽しいと思う時間に全振りしちゃうかな、俺は。切り替えるのは大事。
キタニ 上ばっか見てるわけではない。
中島 首痛くなっちゃうよ。
キタニ たまには横を見ないと。僕も人と話す時間がリフレッシュ。お酒は大好きだけど、一人で飲むことは全然しなくて。人としゃべるためのお酒。
中島 わかるわ、その感覚。
キタニ やっぱり人間からしかもらえないパワーがあるなと思います。
健人さんが自信満々でいてくれるから“大丈夫”って思えた(キタニ)
楽曲の仕上がりが最高で、プレッシャーは感じなかった(中島)
中島健人
なかじま けんと●1994年3月13日生まれ、東京都出身。2011年にSexy ZoneのメンバーとしてCDデビュー。今年3月にグループを卒業し、ソロアーティストとしての活動を開始する。俳優としても活躍し、主演ドラマ「しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜」(テレビ東京)が放送中。
キタニタツヤ
きたに たつや●1996年2月28日生まれ、東京都出身。2014年頃からネット上に楽曲を公開し、ボカロPとしての活動をスタートさせる。ベーシストや作曲家として活動する中で、2017年にシンガーソングライターとしても楽曲を披露し、2020年にアルバム『DEMAGOG』でメジャーデビュー。
アニメ『【推しの子】』オープニング主題歌 GEMN「ファタール」
GEMN 配信中
ソニーミュージック
心の葛藤をまくしたてるような中島健人のラップという冒頭から抜群のインパクト。キタニタツヤのロックなボーカルへとつながるスピード感あるメロディが、何度でも聞きたくなる1曲。
(中島さん)ニットベスト¥35200/スティーフショールーム(スティーフ) カットソー¥18700/イーライト(サウザンズ)
(キタニさん)アウター¥70400・パンツ¥37400・シャツ¥37400/ビューローウエヤマ(セモー)
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/石津千恵(中島さん)、山田千尋(キタニさん) スタイリスト/JIKI 取材・原文/上村裕子 ※BAILA2024年10月号掲載