「NIGHT DANCER」が世界各国のチャートにランクインし、国内のみならず海外からも注目を集めた新世代アーティスト・imaseさん。今、国内外からこれからの音楽シーンを牽引する存在として注目を集めています。今回、@BAILA初登場となるimaseさんに、楽曲制作の裏話や原動力などをインタビュー。
2024年下半期だけでも「エトセトラ」「蜃気楼」「Dried Flower」「アウトライン」「プリズム」、さらには同世代のアーティスト・なとりさんとの共作「メロドラマ」「メトロシティ」を含む7曲を発表。キャッチ―なメロディーで、ドラマや映画、CMソングに起用された楽曲たちは、どのように生まれたのか、その背景や思いを伺いました。


岐阜出身、24歳の新世代男性アーティスト。音楽活動開始わずか1 年でTikTok で楽曲をバイラルさせ2021 年12 月にメジャーデビュー。「NIGHT DANCER 」は韓国配信サイト“ でJ-POP 初のTOP20 入りを果たし、Spotify バイラルチャートTOP50 に31カ国ランクインするなど世界各国でもバイラル。「第65 回 輝く!日本レコード大賞」にて優秀作品賞を受賞し、韓国で開催されたMMA 2023 、CCMA 2023 に日本人アーティストとして初出演、初受賞を果たすなど国内外で活躍の場を広げ続けている。5月には待望の初アルバム『凡才』をリリース。2024 年には初のアジアツアー『imase 1st Asia Tour "Shiki" 』とホールツアー『imase Hall Tour 2024 “Shiki Sai” 』を完遂。2025 年4月からは初の全国ホールツアーの開催も決定している。
応援歌や上京ソングなど、多彩な7曲の制作秘話
――2024年は下半期だけでもデジタルシングル7曲を発表されました。リリースを振り返っていかがですか。
imaseさん:実は7曲の制作期間はバラバラで、「エトセトラ」は約1年半前に仕上がり、「Dried Flower」は今年の1〜2月頃に完成していました。アジアツアー(2024年6月に6都市を巡るツアー「imase 1st Asia Tour "Shiki"」を開催した)や夏フェスの真っ最中に制作した「蜃気楼」「メトロシティ」「メロドラマ」などは大変でしたね。帰国してすぐに制作に取り掛かり、またすぐに出発するという日々で、「この部分だけは今日絶対に作るぞ!」と自分で決めて制作に取り組んでいたのが懐かしいです。
最近リリースした「Dried Flower」は、これまでのimaseの楽曲とは違うダークな雰囲気で、新しい表現に挑戦できたことが嬉しかったです。また、「アウトライン」は第103回全国高校サッカー選手権大会の応援歌として書き下ろさせていただきましたが、僕自身も学生時代にプロサッカー選手を夢見て高校選手権を目指していたので、今回このような形で携われたことが感慨深かったですね。
――アジアツアーと同時進行で制作されていたとは。ツアー中だと、制作のためのインプット時間を確保するのも難しいですよね。
imaseさん:そうですね、頑張ってインプット時間を確保していましたが、アイデアが枯渇しかけたときもあります。そういうときは、しぼり出していました(笑)。でも不思議と、複数曲を同時進行で制作しているときのほうがアイデアが出やすい気もします。むしろ期間が空いてしまうと、「あれ、どうやって曲作るんだっけ?」と勘が鈍っていたかもしれないです。

――下半期にリリースした7曲の中で、特に思い入れのある楽曲はどちらでしょうか。
imaseさん:真っ先に思い浮かぶのは、以前からの仲間であるなとりと共作した「メロドラマ」「メトロシティ」ですね。お互いにとってちょうどいいタイミングでコラボできたと思います。「メロドラマ」はなとりが、「メトロシティ」は僕が主体となってトラックとサビメロを作りました。大枠ができてから一緒に部屋に入って作業を進めたのですが、遊びの延長のようで、ケンカすることもなく(笑)、楽しく制作できました。
――たしかに、TikTokにアップされていた、自宅で「メトロシティ」を歌うお二人の動画からもすごく楽しそうな雰囲気が伝わってきました。「メトロシティ」は、上京がテーマですよね。昨年春に、地元・岐阜から東京に引っ越したimaseさんと、同じく上京組のなとりさんとで、制作前にお互いの経験について話し合ったりしたのでしょうか?
imaseさん:僕は、東京暮らしをポジティブに捉えているのですが、なとりは、あまり東京が好きではないみたいで(笑)。多く話すとネガティブな方向に進んでしまうので、そこはあんまり深掘りせずに、「やっぱり東京って便利だね!」と軽く話したくらいですね(笑)。でも、二人の東京に対する感情の違いが歌詞にはっきりと出ていて、その対比がこの曲の面白さになっていると思います。
――なとりさんとの共作を通じて、ご自身の音楽制作に変化があったり、自分の強みに気づいたということはありますか。
imaseさん:なとりだけが持つ独特のメロディーや歌詞の書き方に触れて、表現の引き出しが増えたように感じます。なとりって、面白いワードをすぐに思いつくんですよ! 例えば、「メトロシティ」の〈C・I・T・Y チューニング合ってる?〉という部分。地元から都会に出てきた様子を表現したくて、最初は「宙に舞ってる?」にしていたんです。でも、もっと韻を踏みつつ、二つの意味を持たせられる表現は他にないか、となって考え直すことにして。そうしたら、なとりが『チューニング合ってる』はどう? 音楽的な意味も込められるし」と提案してくれて! たしかに“チューニング”は音楽用語だし、僕ら都会のリズムに合わせられてる?という感じも表現できるから最高じゃんと。「おお〜‼︎ フォーーーー!」って沸きました(笑)。
あと、共作を通じて気づいたのは、僕は誰かと共同制作することが得意かもしれないということ。妥協することなく、お互いが腑に落ちる部分を見つけて決めることが共同作業の難しさだと思うのですが、僕はそれぞれのこだわりや好みを大切にしつつ、両者が納得いく、いい塩梅を見極めることが意外とうまいんじゃないかなと思いましたね。

――ここ数年、imaseさんは、多彩な楽曲を絶え間なく生み出していますが、インスピレーションは普段どこから得ているのでしょうか。
imaseさん:インスピレーション源の8〜9割は楽曲からですね。なので、いつも作りたい楽曲が決まったらひたすらリファレンスを集めるところから始めます。たとえば、「Dried Flower」は、ダークポップや2STEPの曲を参考にしました。最近は、トラックメイカーが投稿しているインスタグラムのリールもよくチェックしています。あと、ゲーム音楽! つい最近、昔やっていた釣りのゲームのBGMのコード進行が、そういえばすごくおしゃれだったな、とふと思い出して。大人になった今も忘れずにいるということは、いい曲であるという証拠なので研究していて、何か一曲作りたいなと思っているところです。
歌詞については、最近リリースした「Dried Flower」や「プリズム」の場合は、作品の台本を読んでイメージをふくらませたり、セリフを引用したりして書き進めました。「アウトライン」は、自分自身のサッカー経験はもちろん、選手権に向かう人たちの気持ちをひたすら考えて書き上げました。そういえばこの楽曲は、歌詞をどこまで抽象的にするのかすごく悩みましたね。直接的すぎるとメッセージが伝わりにくくなり、逆に抽象的すぎるとサッカーとの関係が薄れてしまう……。サッカーが好きな人が聴いたときには「これはサッカーの曲!」と思える一方で、そうじゃない人が聴いても応援歌として成立することを意識して書きました。

「NIGHT DANCER」の世界的ヒット以降、ハイスピードで走り続ける原動力
――「NIGHT DANCER」が世界的にヒットした昨年から、楽曲のリリースやツアーなど、多忙な日々が続いていると思いますが、2023年と2024年を比較したときに何が変化したと思いますか?
imaseさん:ライブの数は本当に増えました! 去年に引き続き、今年もたくさんのフェスに出させていただいて。実は今年のフェス出演ランキングで第4位にランクインしたんです。同じく4位だったミュージシャンが4〜5組いたのですが、その中の、キュウソネコカミさんが「同率4位の人たちを集めて4位フェスをやりましょう」とSNSでおしゃっていて。本当にやりたいです!
それから変化したことは……東京生活に慣れたこと、海外ツアーができるようになったこと、アーティスト仲間が増えたこと、曲を作るスピードが速くなって制作に余裕が生まれたこと、そして、タイアップ曲を作るときの不安がなくなったことですかね。初めてタイアップ曲を作ったときは、やっぱり色々と不安がありましたが、経験を積むうちにそれがなくなりました。
――今お話に出てきたフェスや初の海外ツアーなど、今年経験したことの中でいちばん記憶に残っていることは何ですか?
imaseさん:色々ありすぎていちばんを決めるのは難しいですが、最近観た『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン3の9話ですかね。というのは冗談で(笑)、やっぱりアジアツアーが印象に残っています。初めての海外ツアーで、日本語が通じない環境での挑戦でしたが、公演を重ねる中で少しずつ成長できたなと感じています。
ライブの楽しみ方って、都市によってまったく違うんです。思いっきり踊って楽しむ人が多い都市もあれば、静かにじっくり聴いてくれる都市もあって。ツアーが始まったばかりの頃は、それぞれ異なる反応を前にして、「どう盛り上げればいいんだろう」「自分はどういうマインドでいるのが正解なのか」と迷うことも多かったんです。でも公演を重ねるうちに、静かに聴いている人たちも実はすごく楽しんでくれているということに気づいて。自分が「こうじゃないと楽しんでくれていない」と決めつけないことの大切さを学びました。

――2024年下半期のリリース数を見るだけでも、imaseさんがこうしてトップスピードで走り続ける原動力はどこにあるのでしょうか?
imaseさん:シンプルに新しいジャンルの曲を作ることがただただ楽しくて、面白いんです。そこが原動力ですね。でも、もちろん行き詰まることもあります。メロディーがなかなか浮かばなかったり、「これでいいのかな?」と悩んだり……。それこそ、「アウトライン」のサビの歌詞も、落としどころを迷って、「僕って応援歌を作るのは得意じゃないのかも?」「普遍的な曲を書くって難しい……」と悩んだりしました。でも、そういうときは素直に周りに頼って、切り替えるようにしています。たとえば「アウトライン」の場合、僕にはまだ応援歌のような普遍的な曲を作るための経験が足りなくて、どんな抽象的な歌詞が正解なのかという判断が難しかったので行き詰まりました。だから、何パターンか歌詞を書いては「これはどうかな?」とスタッフさんに聞いて、フィードバックをもらいながら完成させました。
――それでは、最後に2025年はどんな一年にしたいと考えていますか。
imaseさん:来年は、これまでのような「新しい挑戦」というよりも、制作やライブのクオリティをさらに高めて、強固なものにする期間にしたいと思っています。この2年間で新しいことにたくさん挑戦させていただき、自分がどういうアーティストなのか、方向性もはっきりしてきました。僕が大切にしているポップをベースにしつつ、多様なジャンルを取り入れた、誰もが楽しめる音楽やライブを作り続けたいです。
imaseさんの素顔を深掘りQ&A
Q.自分の性格を分析すると?
自分ではそうは思わないですが、“明るい”と言われることが多いです。あと、周りの方に“まじめ”とも言っていただけますね。どういう部分がまじめだと思われているか、ですか? う〜ん……自分で言うのは少し恥ずかしいですが、社会人経験があるからか、当たり前ではありますが遅刻したり納期を遅らせたことは一度もないです。(近くにいたスタッフさんが「連絡の返信も常に早いです!」)。たしかに、仕事の返信は早いですね! 自由なイメージがあるアーティストにしてはまじめかもしれません(笑)。
Q.座右の名は?
「No Change, No Growth」。この数年、僕はいろんな変化に順応してきて、そのおかげで成長できたという実感があります。これからも、変化を恐れず前向きに捉えて成長していきたいです。
Q.カバンの中身を教えてください。
モバイルバッテリー、財布、家の鍵、ヘッドホンが基本です。それ以外は入っていなくて、ミニマルなほうですね!
Q.ライブ前のルーティンは?
ライブ前日は緊張して眠れなくなることもあるので、“考えないこと”を意識しています。でも、最近はライブにも慣れてきて、以前よりは緊張しなくなってきたかも。生放送やラジオは、まだドキドキしちゃいますね。

Q.最近、休日の過ごし方は?
最近は買い物ですね。少し前に自分への誕生日プレゼントとして、奮発して「MIU MIU」の黒のフリースを買っちゃいました。
Q.好きなファッションは?
きれいめファッションが好きで、長く着られるものを選んで買うようにしています。今の時季は、「AURALEE」の薄手のコートがお気に入りでよく着ています。
Q.最近、いちばん刺激を受けたことは?
今年から海外ドラマをよく観るようになったんです。最近は、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン3の第9話に衝撃を受けました。穏やかな気持ちで観ていたら、「えっ!? えーー!!」となる展開で、いい意味で「なんて意地悪な作者なんだ!」と思いましたね(笑)。
Q.好きなエンタメ作品は?
映画『ハリー・ポッター』シリーズが好きです。特に、『不死鳥の騎士団』! そういえばこの間、USJに久しぶりに行って、ニワトコの杖を買いました。ルーモス〜‼︎(※杖を光らせる呪文)
Q.地元・岐阜のおすすめは?
岐阜名物の「岐阜タンメン」は食べたほうがいいです! あとは、お酒に合う鮎の塩焼きと甘露煮、「鶏ちゃん焼き」も岐阜に来た際にはぜひ食べていただけたら嬉しいです。
Q.imaseさんが、今ハマっている曲は?
luvisさんの「Higher」。懐かさを感じるサウンドが最高でヘビロテしています。とにかくカッコいい曲です!

カーディガン ¥60500、シューズ ¥41800/Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO(ともにMaison MIHARA YASUHIRO) シャツ ¥52800、パンツ ¥52800/コッキデザイン事務所(ともにKHOKI) リング右手人差し指 ¥44000、リング右手中指 ¥69300/ブランイリス トーキョー(ともにblanc iris)
多彩なMVライブラリー
【imase】エトセトラ(MV)
なとり & imase - メロドラマ
【imase】蜃気楼(MV)
【imase & なとり】メトロシティ(MV)
【imase】Dried Flower(MV)
【imase】アウトライン(MV)
【imase】プリズム(MV)
imaseさんのヒット曲をCHECK!
撮影/野田若葉(TRON) スタイリスト/RIKU OSHIMA 取材・文/海渡理恵
Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO(Maison MIHARA YASUHIRO)☎03-5770-3291 コッキデザイン事務所(KHOKI)☎03-6300-5822 ブランイリス トーキョー(blanc iris)☎03-6434-0210