いよいよ3月2日(現地時間)に、世界で最も注目が集まる映画の祭典、第97回アカデミー賞の授賞式が開催されます。
世界最高のクオリティを誇るディズニー映画は、今期の賞レースでも強みを発揮しています。そのディズニーが誇るブランドの一つが、サーチライト・ピクチャーズです。毎年のように複数の作品がアカデミー賞にノミネートされ、受賞が見込まれるサーチライト・ピクチャーズの作品が、批評家と映画ファンの双方から絶大な支持を受けている理由は、どこにあるのでしょうか。候補作とアーカイブを紐解きながら、20年以上にわたり映画・海外ドラマの最先端を取材&執筆している今 祥枝さんが解説します!

第97回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞ほか全8部門にノミネート! 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で若き日のボブ・ディランを演じるティモシー・シャラメと恋人シルヴィ役のエル・ファニング。ディズニーが誇るブランドの一つ、サーチライト・ピクチャーズの製作です。
アカデミー賞の常連! ディズニーが誇るサーチライト・ピクチャーズの創造性豊かなクリエイターたちと作品群
皆さんがどの映画を観るのかを決めるときに、参考にするのは何でしょうか?
主演俳優や監督、または興味がある題材など様々な理由があると思いますが、ディズニー映画ならとりあえず観たいと思う人も多いかもしれません。それは「ディズニー」という名前に期待や安心感があるからですよね。
実は、あまり一般的に認識されていないかもしれませんが、ディズニーはそうした高い品質を保証するブランドを多く擁しているのです。その一つが、アカデミー賞の常連で賞レースでは常に注目を集めるサーチライト・ピクチャーズです。
『哀れなるものたち』のエマ・ストーンは、本作と『ラ・ラ・ランド』の演技で2度のアカデミー賞主演女優賞を受賞。ほかにも『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と『女王陛下のお気に入り』で同賞助演女優賞候補になるなど、アカデミー賞絡みの作品はすべてサーチライト・ピクチャーズの作品だ。近年はプロデューサーとしても活躍しており、『リアル・ペイン〜心の旅〜』などを手がけている。
大人の女性にこそ薦めたい!世界が絶賛した「サーチライト」のアカデミー賞受賞作品
2024年に設立30周年を迎えたサーチライト・ピクチャーズは、気鋭の監督たちによるアートハウス系作品や小規模ながらも記憶に残る人間ドラマの秀作で知られているスタジオです。その歴史は、まさにアカデミー賞受賞歴のオンパレード!
2008年にダニー・ボイル監督の『スラムドッグ$ミリオネア』がサーチライト・ピクチャーズ初のアカデミー賞を受賞して以降、『それでも夜は明ける』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、『ノマドランド』と、これまでに実に5回もの作品賞に輝いています。また、近いところで2018年を振り返ってみると、『シェイプ・オブ・ウォーター』と最後まで受賞を競ったのは同じくサーチライト・ピクチャーズの『スリー・ビルボード』でした。他の主要部門にも話を広げれば、サーチライト・ピクチャーズの作品同士が同じ部門で競り合うことも珍しくないのです。
あらためてそのラインナップを眺めていると、全体的に個性的で独創的な世界観を持つ監督たちの作品が目立ちます。『女王陛下のお気に入り』や『哀れなるものたち』、『憐れみの3章』のヨルゴス・ランティモス、パステル調のアーティスティックな映像世界が絶大な人気を誇る『ダージリン急行』や『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソンなど、強い作家性を持つ監督は枚挙にいとまがありません。
サーチライト・ピクチャーズがこれらの才能ある監督たちから絶大な支持を集める最大の理由は、低予算であっても作家性を尊重し、クリエイティビティにおいては妥協をしない姿勢にあるでしょう。
ギレルモ・デル・トロ監督も独創的な世界観を持つ監督として知られていますが、『シェイプ・オブ・ウォーター』は口のきけないヒロインと半魚人のような生き物のラブストーリーという、普通のスタジオならいくらデル・トロの名前があったとしても企画を通すのは困難であろう異色の作品。実際に大手スタジオに断られたものの、「自分の作りたいものを作らせてもらう」ことを唯一の条件として、サーチライト・ピクチャーズに我が道を貫くことを受け入れてもらったと言います。
その結果、SFファンタジーの要素も強くアカデミー賞では敬遠されがちなジャンルでありながら、作家性が貫かれた芸術性と娯楽性が見事に融合した稀有なエンターテインメントとして作品賞に輝きました。

18世紀イングランドの王室を舞台にした『女王陛下のお気に入り』を撮影中のヨルゴス・ランティモス(左)とジェームズ・スミス(中)、女王アンの幼なじみのレディ・サラを演じるレイチェル・ワイズ(右)。

ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』は、高級ホテルのコンシェルジュとベルボーイが騒動を繰り広げる豪華キャストの群像ドラマ。写真右からレイフ・ファインズ、ティルダ・スウィントン、トニー・レヴォロリ、ポール・シュラーゼ。第87回アカデミー賞では美術、衣装デザイン、メイクアップ&ヘアスタイリング、作曲の4部門を受賞した。

『シェイプ・オブ・ウォーター』を撮影中のギレルモ・デル・トロ監督(中)と、主演のサリー・ホーキンス(左)、共演のオクタヴィア・スペンサー(右)。
心に沁みる! 『ノマドランド』や『リトル・ミス・サンシャイン』、日常を描く人間ドラマも多数ヒット
すでに評価と知名度が確立されたクリエイターだけでなく、サーチライト・ピクチャーズから大きく世界へ羽ばたいた新たな才能も少なくありません。その代表格が『ノマドランド』の中国出身のクロエ・ジャオです。
アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの姿を追ったロードムービーで、派手さのない作りで現代の社会のあり方への批評性に優れながら、詩情あふれるロケーションの美しさと人間の本質に迫るドラマに世界中が魅了されました。アジア人として初、女性としては11年ぶりにアカデミー賞監督賞を受賞して記録を作ったジャオは、翌年には一足飛びにMCUのSF大作『エターナルズ』を手がけて一躍ハリウッドの人気監督となりました。
このように小粒だけれど、しみじみと心に残る人間ドラマに秀作が多いのもサーチライト・ピクチャーズの特徴だと思います。当時若手監督として頭角を現していたアレクサンダー・ペインの『サイドウェイ』は、冴えない中年男性2人のワイン・テイスティングの旅を繊細な心の機微とともに描いて人気を博し、日本でもリメイクされました。ほかにもスマッシュヒットとなった『リトル・ミス・サンシャイン』など、何気ない日常の中にある宝物のような瞬間を映す作品群は、実は最も観客のパーソナルな経験と共鳴しやすく、自分にとっての特別な作品として記憶に残るものですよね。
これらのアカデミー賞受賞作を振り返っていると、私は特に業界で働き始める前に暇さえあればミニシアターに通ったことを懐かしく思い出します。映画好きの友人と日本未上陸の新作について話すとき、「⚪︎⚪︎が評判いいみたいだよ」「それサーチライトだよね?」なんていうやりとりをしたものです。
たとえば、動画配信サービスに加入している方は多いと思うのですが、いざ何か観ようと思うと作品がたくさんありすぎて選べないということも少なくないと思うのですよね。そんな時は、サーチライト・ピクチャーズ作品に目を向けてみるとよいかもしれません。

『ノマドランド』を撮影中のクロエ・ジャオ監督(左)と、ジャオのパートナーで撮影監督のジョシュア・ジェームズ・リチャーズ(中)、主演のフランシス・マクドーマンド(右)。

『サイドウェイ』は、第86回アカデミー賞でも主要5部門の候補になった『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のアレクサンダー・ペインとポール・ジアマッティの監督&主演コンビによる、2004年の大ヒット映画。離婚した作家志望の教師マイルスと、結婚を1週間後に控えた親友ジャックのワイン・テイスティングの旅をするビタースウィートな大人の青春。第77回アカデミー賞で脚色賞を受賞した。

家族の悲喜交々を描いた『リトル・ミス・サンシャイン』は、ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスの夫婦監督の長編映画デビュー作。ニューメキシコ州アルバカーキに住む2人の子どもの母親シェリル(トニ・コレット)は、7歳の娘オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)がカリフォルニア州で開催される美人コンテストに出るために家族総出で車で旅に出る。第79回アカデミー賞で脚本賞とアラン・アーキン(左から3人目)が助演男優賞を受賞した。
第87回アカデミー賞8部門ノミネート! 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の見どころ
来たる第87回アカデミー賞でも、サーチライト・ピクチャーズの作品は注目を集めています。作品賞をはじめ主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞、監督賞、衣装デザイン賞、脚色賞、音響賞の8部門にノミネートされた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』や『フォードvsフェラーリ』などの実話ベースの秀作で知られるジェームズ・マンゴールド監督の新作。マンゴールドとジェイ・コックスが脚本を手がけた伝記ドラマです。
アカデミー賞主演男優賞有力! ティモシー・シャラメが唯一無二のミュージシャンを熱演

ボブ・ディランの青春期を演じて、絶賛されているティモシー・シャラメ。役作りのために5年間、音楽の猛勉強とトレーニングを行いながらギターとハーモニカもマスターし、ディランの曲を探求した。また、著名なボイスコーチとともにボブ・ディランのパフォーマンスやインタビューを見て、彼の姿勢などが彼の声にどのような影響を与えたかなど、細かなディテールを研究したという。
2016年に歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若き日を描いた本作。1961年、米ソ冷戦下の激動の時代にギターを抱えてニューヨーク・マンハッタンにたどり着いた19歳のディランが、無名の青年から"若者の代弁者"として時代の寵児となっていく中で、周囲の期待と自分の目指す音楽との軋轢に葛藤する姿を音楽シーン満載で描きます。
"生ける伝説"のボブ・ディランのミュージシャンとしてのルーツ、そして他の追随を許さない異色の才能を楽曲のパフォーマンスも含めて体現するのはティモシー・シャラメ。2017年の『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、『DUNE/ デューン 砂の惑星』や『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』など話題作に多く出演する人気・実力ともに兼ね備えたスターです。本作の演技では吹き替えなしの歌声も披露して、2度目の同賞候補になり、受賞のゆくえに注目が集まっています。
もしかしたら、ボブ・ディランのことはよく知らないからなあと本作を遠くに感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、映画は前提のハードルをそこまで上げずとも、一人の才能あふれる青年がスター街道を邁進し、憧れていた先輩ミュージシャンたちをついには飛び越えていく瞬間の壮絶な痛みと興奮をとらえた珠玉の音楽映画であり、普遍的な青春映画として楽しめる作り。それこそが、多くの人の心を動かし、批評家に愛されるサーチライト・ピクチャーズの秀作たる所以だとも思うのです。

2月3日に開催された日本最速上映のジャパンプレミア舞台挨拶登壇のために、『LOGAN/ローガン』以来8年ぶりの来日を果たしたジェームズ・マンゴールド監督。
ボブ・ディラン本人も製作に協力している本作は、本国アメリカや他の国でも人気が高く興行収入記録を更新している。舞台挨拶ではボブ・ディランとの非常に友好的で有意義な協力関係のほか、ティモシー・シャラメの演技を絶賛した。自身も第87回アカデミー賞に作品賞、監督賞、脚色賞でノミネートされており、受賞のゆくえに注目が集まっている。
二人のアカデミー賞候補を含む助演俳優たち&1960年代の空気を伝える映像世界

まだ何者でもないボブ・ディランにとって、輝く太陽のようにまぶしく見えたミュージシャンのジョーン・エバズを、モニカ・バルバロがエネルギッシュに好演。バルバロは『トップガン マーヴェリック』の演技で注目され、本作でアカデミー賞助演女優賞候補となったことで一気に知名度を得た。

善良で穏やかな人格者であり、フォークソング、伝統音楽の魅力を生涯伝え続けたピート・シーガー。初期のボブ・ディランと深く関わり、最も大きな影響を与えた人物を演じるエドワード・ノートンは、『真実の行方』『アメリカン・ヒストリーX』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に続き、本作の演技で4度目のアカデミー賞候補となった実力派俳優だ。
ボブ・ディランと関わる実在のミュージシャンや、実在の人物にインスパイアされた魅力的なキャラクターたちが繰り広げる人間模様も本作の大きな見どころです。
フォークロックの草創期から、今なお活動し続けているシンガー・ソング・ライターのジョーン・バエズと、高名なフォークシンガー、ソングライターのピート・シーガーは、ボブ・ディランに多大な影響を与えました。ジョーン役のモニカ・バルバロ、ピート役のエドワード・ノートンもともに楽曲のパフォーマンスを含めて強い印象を残し、アカデミー賞の助演女優賞、助演男優賞にノミネートされる快挙。また、ジョーンと惹かれ合うボブ・ディランの姿に胸を痛める恋人シルヴィ役のエル・ファニングも、ミュージシャンたちとは異なる輝きを見せて作品のよいスパイスに。
アカデミー賞では衣装デザイン賞などにノミネートされていることからもわかるとおり、1960年代のニューヨークの街並みや野外音楽フェスティバルのほか、ファッションやカルチャーなどの再現はそれらを眺めているだけでも楽しく、ノスタルジーを掻き立てると同時に新鮮にも感じられます。
俳優自ら行う楽曲のパフォーマンスから綿密な時代考証による世界観の構築など、本物志向(オーセンティシティ)を貫いた質の高い映像世界は、アカデミー賞8部門ノミネートにふさわしいことが映画館で実感できるはず。

ステージ上で魂が触れ合うようなケミストリーを見せるボブ・ディランとジョーンの姿を、複雑な思いで見つめる付かず離れずの恋人シルヴィ。演じるエル・ファニングは『20センチュリー・ウーマン』などに出演し、人気ドラマ『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』では主演兼製作総指揮を務めている。

アイコニックなホテル チェルシーなど、1960年代のニューヨーク・マンハッタンの街並みも魅力的だ。製作デザイナーのフランソワ・オデュイは、「しっくりと感じられる、単なるコピーではない、思い出を再現するように作り出した」という。
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』作品情報

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』2月28日(金)全国公開
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
第87回アカデミー賞 脚本賞&助演男優賞ノミネート! 『リアル・ペイン〜心の旅〜』
もう1本、サーチライト・ピクチャーズ作品としてアカデミー賞を賑わせているのが絶賛公開中の『リアル・ペイン〜心の旅〜』です。
ポーランドへの旅で家族のルーツをたどりながら、自らの内面と向き合う物語

監督・脚本・製作と主演を務めた才能あふれるジェシー・アイゼンバーグ(右)と、大ヒットドラマ『メディア王〜華麗なる一族〜』の演技で賞レースを席巻し、近年再注目されて勢いに乗るキーラン・カルキン(左)。第87回アカデミー賞ではアイゼンバーグが脚本賞、カルキンが助演男優賞にノミネート!
幼少期は仲がよく兄弟のようだったのに、大人になってからは疎遠になったいとこ同士のベンジー(キーラン・カルキン)とデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)。最近亡くなった最愛の祖母の遺言で、久々に再会して母国アメリカからポーランドへ行き、ユダヤ系の祖母がかつて体験した第二次世界大戦の史跡ツアーに参加し、自分たちのルーツをたどる旅をともにします。
冒頭の空港のベンチで待ち合わせのシーンから、この二人が真逆のタイプの人間であることは明白です。ベンジーは現在無職で、明るく人好きのする魅力的な個性の持ち主だが情緒不安定。一方のデヴィッドは、デジタル広告の仕事をするニューヨーカーで妻子とブルックリン住まいの堅実で真面目な人物です。そんなデヴィッドにとって、テンションの上下が激しく突拍子もない言動も多いベンジーのことが、時にうとましくもあり、しかし内心では彼が抱える問題に非常に心を痛めていることが旅を通してわかります。
自分のことを持て余して苛立ちを感じているベンジーを生き生きと演じるカルキンは、まさに彼の真骨頂という感じでハマり役。アカデミー賞助演男優賞候補の中でも最有力と見られているのも納得です。対して、監督、脚本、プロデューサー、そして主演を兼ねるアイゼンバーグは、『ソーシャル・ネットワーク』で俳優としてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた演技派俳優。近年は作り手としてめきめきと才能を発揮しており、本作でも同賞脚本賞にノミネートされて、その才能はすでにお墨付きです。
アイゼンバーグがユダヤ系アメリカ人としての自身の体験から思いついた本作は、スタッフはほぼポーランド人でかため、首都ワルシャワやルブリンなどでのロケ撮影も敢行。ここでもまた歴史と文化へのリスペクトのもとに徹底して本物志向(オーセンティシティ)が貫かれています。
『ノマドランド』や『サイドウェイ』などロードムービーには秀作が多い印象がありますが、日常を離れた旅を通して人生観が変わるような、あるいはそこまでではなくても心身が洗われるような体験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。本作のベンジーとデヴィッドのように、問題を抱えている人でも、一見完璧な人生を送っているように見える人でも、生きていれば誰にでも人には言えないしんどいことはある。それはすぐに解決できることではないし、人生が続く限り抱えていかなければならないこともあるでしょう。
それでも、一歩ずつ前に進めば、その先には光があるのかもしれない。そんなふうに思わせてくれる『リアル・ペイン〜心の旅〜』には、これこそがサーチライト・ピクチャーズの良心だと思わせてくれる宝物のような輝きがあります。
ジェシー・アイゼンバーグとキーラン・カルキンのケミストリーが最高のドラマを生む

ポーランドでツアーに参加したベンジーとデヴィッド。デヴィッドは他者に対してしっかりと距離を取りがちだが、ベンジーは独特のやり方で同行者たちを魅了する。ワルシャワ・ショパン空港からゲットーの英雄記念碑、ワルシャワ蜂起記念碑、ルブリン、マイダネク(ルブリン強制収容所)などポーランドのロケーションも大きな見どころだ。

旅を通して、二人が得たものとは? 友人でもあるジェシー・アイゼンバーグの才能を信じて、自らの制作会社「フルーツ・ツリー」を率いてプロデューサーに名を連ねるオスカー俳優エマ・ストーンの存在も大きい。

撮影中のジェシー・アイゼンバーグと談笑するキーラン・カルキン。「日ごとに脚本が変わり、アドリブを多く取り入れた撮影現場だった」というが、二人のケミストリー、相性のよさが本作を特別なものにしている。
『リアル・ペイン〜心の旅〜』作品情報

『リアル・ペイン〜心の旅〜』1月31日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開
監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、キーラン・カルキン、ウィル・シャープ、ジェニファー・グレイほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
女性主人公の生き方が心に残る! ディズニープラスで観てほしい! サーチライト・ピクチャーズ作品5選
ディズニーの公式動画配信サービス、ディズニープラスでは、歴代のアカデミー賞受賞作から最新作までサーチライト・ピクチャーズ映画をまとめて鑑賞することができる。映画ファンなら一度は観ておきたい傑作から何度でも観たい名作まで、珠玉のラインナップから個性的で一筋縄では行かない女性像が魅力的な5作品をピックアップして見どころを紹介します!
映画『ナイトビッチ』

男性と女性の子育てに対する距離感や温度差があること、また女性が母親業だけでは自尊心を保てない場合が多いことを、ユニークな語り口とエイミー・アダムスの熱演が切実に伝えている。
『アメリカン・ハッスル』『バイス』などでこれまで5度のアカデミー賞にノミネートされ、『魔法にかけられて』シリーズなどのヒット作にも主演するエイミー・アダムス主演の一風変わったコメディドラマ。出産を機に、アーティストとしてのキャリアをあきらめ、専業主婦になった女性(あえて名前はない)が、家事やワンオペ育児に追われる中で心身ともに疲弊していく。やがて自分は「実は犬に変化しているのではないか」という強迫観念にとらわれていくという奇想天外な設定だが、世の孤立を感じている母親たちの心の声を掬い取るような主人公の「咆哮」は切なく胸を打つ。レイチェル・ヨーダーのデビュー小説を、『ある女流作家の罪と罰』のマリエル・ヘラー監督が映画化。
映画『女王陛下のお気に入り』
女王アンのお気に入りになるチャンスを、なんとしてもつかもうとするアビゲイル。主演のオリヴィア・コールマンと渡り合う、エマ・ストーンとレイチェル・ワイズの息詰まるようなアンサンブル演技に圧倒される。
『ロブスター』『哀れなるものたち』のギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスが、18世紀イングランドの王室を舞台に女王アン(オリヴィア・コールマン)と彼女に使える二人の女性の愛憎を描いた異色の人間ドラマ。持病に苦しみ、気まぐれでその地位ゆえに残酷さも発揮する女王アンと、幼馴染のレデイ・サラ(レイチェル・ワイズ)、没落した貴族の娘で野心に満ちたアビゲイル(エマ・ストーン)という、とにかくクセが強い3人の心理戦、パワーバランスの変化を独特のダークかつシニカルなユーモアとともに描く。
第91回アカデミー賞でオリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞した。
映画『ノマドランド』

主人公のファーンを演じるフランシス・マクドーマンドは、コーエン兄弟の『ファーゴ』、マーティン・マクドナー監督作『スリー・ビルボード』、そして『ノマドランド』で3度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞。ほかにエミー賞、トニー賞も受賞しており、本作でも静かな気迫が感じられる演技にほれぼれ。
ノンフィクション『ノマド 漂流する高齢労働者たち』を原作とし、『ザ・ライダー』で頭角を現していた新鋭クロエ・ジャオが映画化した。リーマンショックの影響で家を失った60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)は、キャンピングカーにすべてを積み込み、“現代のノマド(遊牧民)”として過酷な季節労働で日銭を稼ぎながら車で各地を転々とする。行きすぎた資本主義社会の影で取り残された人々が、それでも自由に生きることに誇りを持ち、ノマドであり続ける姿が現代人に問いかけるものは多い。
第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞に輝いた。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

『ブルージャスミン』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の演技で2度のアカデミー賞候補になったサリー・ホーキンス。物言わぬキャラクターを、これほどまでに感情豊かに演じて神レベル。オスカーは逃したが、受賞だけがすべてではないと思わされる名演は必見だ。
『パンズ・ラビリンス』『ナイトメア・アリー』などのギレルモ・デル・トロが監督、脚本、製作を手がけた異色のラブストーリー。冷戦下のアメリカで、政府の秘密機関で清掃員として働きながら孤独に生きるイライザ(サリー・ホーキンス)。口の利けない彼女は、ある日偶然目にした「半魚人」のような生き物を施設内で目撃し、ガラスの水槽越しに手話で意思の疎通をはかり心を通わせていく。スリリングで残虐さもありつつ、どうしようもなくロマンチックな二人の関係は、「幸せ」の意味をしみじみと考えさせられる忘れがたい結末へ。
第90回アカデミー賞で作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞を受賞した。
映画『ブラック・スワン』

『白鳥の湖』の公演初日が近づき、幻覚や幻聴なのか現実なのかが混沌としてくるバレリーナ、ニナの内面の苦悩を熱演したナタリー・ポートマン。一つのことに全身全霊で臨む生き方が、アーティストの業のようでもあり、そこには痛ましさの中に神々しさも。
『レクイエム・フォー・ドリーム』から『ザ・ホエール』まで、常に物議を醸すダーレン・アロノフスキー監督が、2010年に世に放った衝撃的なサイコスリラー映画。バレエ『白鳥の湖』の主演に抜擢され、清廉な白鳥と官能的な黒鳥を演じ分けることになったバレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)が、演出家、同僚のダンサーたち、そして母親から受けるプレッシャーにより、徐々に精神が崩壊していく。今の時代の価値観から観ると際どい表現もあるが、今でも変わらない業界の体質や閉塞感、女性が置かれている立ち場など、時代を経たことで浮かび上がる本作の当時とは異なる再評価、再解釈もあり得そうだ。
第83回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
ディズニープラスで配信中! 作品情報
『グランド・ブダぺスト・ホテル』
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『リトル・ミス・サンシャイン』
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『シェイプ・オブ・ウォーター』
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
『ノマドランド』
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『女王陛下のお気に入り』
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『サイドウェイ』
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『ナイトビッチ』
© 2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
『ブラック・スワン』
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.