疲れが取れなかったり、体がだるかったり。そんな不調の陰に、実は鉄不足がひそんでいる可能性が。鉄が不足するとどんなトラブルが起きる?鉄分はどうとればいい?など気になる疑問を管理栄養士の蒲池桂子先生に伺いました。
管理栄養士 蒲池桂子先生
女子栄養大学栄養クリニック教授。管理栄養士。栄養学博士。著書も多く、ワタナベさんの『疲れないからだになる鉄分ごはん』(家の光協会)の栄養監修も担当している。
Q 最近よく聞く「女性は鉄が不足説」はなぜ?
A 毎月の生理で鉄分が失われるほか、ダイエットやストレスも原因に
「女性は、毎月の生理で血液とともに鉄分が出ていってしまうので鉄分が不足しがち。ダイエットや、偏った食生活でも鉄分は不足します。さらに、バイラ世代の女性はストレスも多いと思いますが、ストレスがあると胃腸の状態が悪くなり、鉄分の吸収がうまくいかなくなる場合も。それによっても鉄分不足になりやすいのです」(蒲池先生)
Q 鉄が不足するとどんなトラブルが起きる?
A 疲れ、だるさ、貧血、睡眠障害、抜け毛などトラブルが続出
「鉄分が足りないと、疲れやすくなったり、だるくなったり、冷えやすくなったり、貧血になったり、眠りが浅くなったりといった症状が起きます。また、肌荒れ、抜け毛、髪のパサつき、口内炎のほか、爪が割れやすくなったり、爪が反る"スープン爪"にもなったりとトラブルが続出」(蒲池先生)
Q そうはいっても、どうとればいい?
A 肉類に多いヘム鉄と、野菜などに多い非ヘム鉄をバランスよく
「鉄分には、動物性の食品に含まれるヘム鉄と、植物性の食品に含まれる非ヘム鉄があります。このうち体への吸収率がより高いのがヘム鉄。ですから、肉など動物性たんぱく質は毎日しっかりとるのがおすすめ。もちろん、非ヘム鉄もとるといいので、どちらからもバランスよく補うのが理想的です」(蒲池先生)
Q そもそも鉄の働きって?
A 体のすみずみに酸素を運ぶヘモグロビンの材料になる
「鉄は、血液の赤血球中のヘモグロビンの材料となる成分。ヘモグロビンは、呼吸でとり込んだ酸素と結びつき、酸素を体のすみずみに運ぶという重要な働きがあります。鉄分不足になるとさまざまな不調が起こるのは、ヘモグロビンを正しくつくれず、酸素の運搬が滞り、酸欠状態になるからです」(蒲池先生)
Q 鉄が含まれている食べ物って?
A 赤身肉や青魚の血合い部分、貝類、緑黄色野菜、海藻類、種実類など
「ヘム鉄が多いのは肉や魚などの動物性たんぱく質。なかでも赤身肉やレバーに豊富。魚ではさばやぶりなど青魚の血合い部分に多く、あさりやしじみなどの貝類にも多く含まれます。非ヘム鉄は、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻類、ごまなどの種実類、玄米や雑穀類のほか、ココアも◎」(蒲池先生)
Q サプリメントで補えば大丈夫?
A 基本的には食事で補うのが理想的。サプリメントは用法用量を守って
「鉄分は過剰に補うと、胃腸障害を起こしたり、体の中で酸化して老化を進める場合もあるので、基本的には食事で補うのがおすすめ。サプリメントで補う場合は、必ず用法用量を守りましょう。製薬会社が出している鉄剤など、安全性が高いものを選ぶことも大切です」(蒲池先生)
Q 一緒にとるといい食べ物は?
A 酸っぱいものや、ビタミンCが多い食品
「鉄は、お酢やレモンのような、クエン酸、酢酸、有機酸などが含まれる酸っぱいものと一緒にとると体への吸収が高まるので組み合わせて。また、ビタミンCは、鉄の酸化を還元し、ヘモグロビンと鉄をくっつきやすくするので、緑黄色野菜などビタミンCが多いものと一緒にとるのもおすすめです」(蒲池先生)
Q 組み合わせないほうがいいものは?
A タンニンが多いものや、インスタント食品との組み合わせは控えて
「緑茶や紅茶、コーヒーなどに多く含まれるタンニンは、鉄の吸収を阻害します。鉄分が多い食品と一緒に飲むなら、タンニンが少なめのほうじ茶や麦茶がおすすめ。そのほか、インスタント食品や加工食品に多く含まれるリン酸塩も鉄の吸収を阻害するので、控えめに」(蒲池先生)
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撮影/神林環 調理/ワタナベマキ 取材・文/和田美穂 構成/渡辺敦子〈BAILA〉 ※BAILA2020年4月号掲載