ニュースやSNSなどでよく見聞きするキーワードの中から、バイラ世代が知っておきたいワードをピックアップ。今回は奨学金の対象拡大化、異次元の少子化対策、子どもの相対的貧困について、永田夏来さんが家族社会学者の視点から鋭く解説!
永田夏来さん
兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。家族社会学の観点から、結婚・妊娠・出産と家族形成についての調査研究を行う家族社会学者。著書に『生涯未婚時代』(イースト・プレス)など。
【奨学金の対象拡大化】なぜ特定の学部だけ?
2024年度から奨学金制度が改正。返済不要の奨学金は世帯年収380万円未満が対象だったが、3人以上の子どもがいる場合は世帯年収600万円までが対象に。また、子どもの数にかかわらず私立大の理工農系学部に通う学生には文系学部との平均的な差額(約30万円)を支援。
「“対象拡大”というと響きはいいですが、特定の学部や金額ありきのため、新たな対象者は多くありません。本来であれば地域ごとの特徴や実情に合わせて選択できるよう制度設計するのが奨学金の軸なので、この改正は政府の人気取りのためと感じてしまいます」(永田さん、以下同)
【異次元の少子化対策】財源の根拠にも注目を
2023年1月に岸田首相が検討を表明した少子化対策。児童手当の所得制限撤廃などを盛り込んだ「こども未来戦略」を閣議決定。財源確保のため「子ども・子育て支援金」として一人当たり月平均500円弱が公的医療保険と併せて徴収される見通し。
「少子化対策は注目を集めやすいので、選挙などのタイミングで話題作りに使われがち。少子化が待ったなしの状況であるのは確かですが、子育て世代の不安も含めた困りごとへの想像が届いていないと感じます」
【子どもの相対的貧困】次世代にも連鎖しやすい
厚生労働省の調べでは、日本の17歳以下の子どもの貧困率は11・5%(2021年)。約8・7人に一人の子どもが貧困状態にあるといわれ、貧困は次の世代に連鎖する可能性も。
「子どもの貧困問題は、衣食住に困るレベルの貧困ではなく、周りの大多数に比べて貧しい状態が問題視されていて、これを『相対的貧困』といいます。また、世帯年収が高い東京と、地方の過疎地域では、子どもにかけられる教育的投資や環境に大きな差があるなど、格差の広がりも問題として挙げられます」
コラージュ制作/花梨〈étrenne〉 取材・原文/国分美由紀 ※BAILA2024年8・9月合併号掲載