児童虐待からもう、目をそらすことはできない! その思いからSNSで意見を送受。現在は、里親制度や特別養子縁組の普及を目指すポータルサイト作成のクラウドファンディングを実施中の犬山紙子さんにお話しを伺いました。
犬山紙子さん
1981年生まれ。コラムニスト。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。2歳の娘を持つ母でもある。
GOOD HEALTH AND WELL-BEING
すべての人に健康と福祉を
SNSで集まった多くの声とともに牧原厚生労働副大臣(当時)に児童虐待防止対策を直訴。国を動かすきっかけにもなった
【きっかけ】
2018年に東京都目黒区で5歳の女の子が亡くなる幼児虐待事件が発生。ニュースを見たときの怒り、悲しみ、絶望感が発端に
【最初のアクション】
児童虐待事件に関する声を集めるために。「#こどものいのちはこどものもの」というハッシュタグをツイッターで拡散
【現在の活動】
里親制度や特別養子縁組の普及を目指すポータルサイト作成のクラウドファンディングを実施中。「#こどもギフト」で検索!
子どもの命を守るためSNSで意見を送受
後を絶つことのない痛ましい児童虐待事件。報道を目にするたびに胸が締めつけられる思いに駆られている人も少なくないはず。
「何度も繰り返される同じような事件に、悲しみと怒りの限界が超えようとしていたんです。トリガーとなったのは東京都目黒区の結愛ちゃんの事件。“大人の自分が小さな命を守れなかった”“アクションを何も起こせなかった”と、自分を責める思いがどんどんあふれてきて。つらいからと目を背け、耳をふさいでいる場合ではもうないと突き動かされました」
具体的な行動を起こさなければと考えた犬山さん。
「私自身、仕事と子育てで手一杯の状況でボランティアなどは行えない。そんな自分にできることは……と考えていると、手もとにあるスマホの画面に自分と同じように心を痛めている声がたくさん流れていることに気づいたんです。自分がツイッターでつぶやけば、もっと反応があるはず。集まった意見を国に届ければ、状況を変えることができるかもと」
思いついたら即行動。「#こどものいのちはこどものもの」というハッシュタグをつけてつぶやくと反応はまたたく間に広がった。
「意見はもちろんのこと、身近な友人からの賛同を得られたことも心強かったです」
寄せられた意見を集約し、事件から4カ月後には厚労省へ出向き、児童虐待の根絶に向けた提案書と要望書を提出。「自分に子どもがいるとかいないとか関係なく、子どもの命を守るのは大人としての義務。そして、選挙権を持つ大人は国にきちんと意見を伝え、国に働きかけることも大切な役割だと考えています」
その一方で、児童相談所や児童養護施設などに足を運び、子どもをとりまく環境を“知る”活動も。「児童福祉士の人数が足りていなかったり、虐待親のケアがなされていないなど問題は山積みです。そうした問題を把握し、多くの人に伝えることも今の私にできること。国を動かすことはハード面の支援。実情を知り、虐待親など孤立しがちな人に寄り添うことをソフト面の支援ととらえています」
犬山さん自身、親になったことで「虐待は他人事ではなく、地続きでつながっている」という実感も得るようになったそう。
「虐待を生む一因に母親の孤立が挙げられます。街で子どもを抱えて大変そうにしている方がいたら声をかけたり、笑顔を向けるだけでもいい。『一人じゃないよ』とアピールすることも重要だと思います。それから虐待が疑わしい状況に接したら、“189(いちはやく)”に電話するなど、気づいたときに行動することが大切だと思います」
取材・原文/堀 朋子 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2020年1月号掲載