学びって実は大人になるほど楽しめるもの。そう教えてくれるのは、一歩先をゆく同年代の女性たち。バービーさんは自分が本当に好きなものを見つめ直し、園芸の世界へ。仕事や結婚などに対する迷いから解放され、自分らしさを取り戻せたそう。
自分自身を見つめ直して心から好きな「植物のこと」を形にしたら、人生の迷いが晴れた
History
2016:日本園芸協会に資料請求
2017:「ガーデンデザイナー」資格取得
2018:4月渋谷公園通り ガーデニングコンテスト参加
2018:5月英国チェルシーフラワーショー ボランティア参加
バービーさん
ばーびー●1984年生まれ、北海道出身。'07年にお笑いコンビ・フォーリンラブを結成。'16年から地元・北海道夕張郡栗山町の町おこし、テレビのコメンテーターやラジオパーソナリティなど幅広く活躍。ピーチ・ジョンと協業で下着の開発も行う。
自信がない自分を武装すべく取得したいくつもの資格
チベット体操インストラクターやスパイス&ハーブコンサルタントなど、今までにいくつもの資格を取得。実は“資格マスター”であるバービーさん。
「知識や特技を身につけることで自信を持ちたい、自分の中にそんな気持ちがあったんでしょうね。特に20代後半は人生に迷っている時期で。私はどんな人間なのか、何が適しているのか、自分の可能性を探るべくいろんな学びに手を出しました。『大人の家庭教師トライ』で急にビジネスや社会学を学び始めたかと思えば、『宣伝会議』のコピーライター講座に申し込み、講義を数回受けただけで挫折。通関士の資格を取るために高額な教材を取り寄せたものの、あまりの難しさに3日であきらめたこともありました(笑)」
ガーデンデザイナーの資格を取ったのも、そんな迷いの渦中にいた頃。
「自分を見つめ直さなきゃと思ったとき、何が本当に好きなのか考えて。そこで、頭に浮かんだのが“植物”だったんです。私の本名は“笹森花菜”なんですけど。草木を表す漢字がそろった名前を授けられたせいか、子どもの頃から自然や植物が大好きで。普段は何かにハマるということがあまりないのですが、長崎のハウステンボスで開催されるガーデンショーだけは一人旅がてら何度も訪れていたんです」
人生の迷いの波がMAXに高まった30代前半には、イギリスの世界的な園芸の祭典「チェルシーフラワーショー」に庭園デザイナー・石原和幸さん率いるチームのボランティアスタッフとして参加。
「ありがたいことに仕事はとても忙しかったのですが、過激なスタイルで笑いを取ることに疲弊している自分も。実はテレビというフィールドに限界を感じていた時期でもあって。また、私生活では一人の女性としての未来も考えるように。結婚したら仕事と家庭の両立は難しいかもしれない。でも、この仕事を辞めたら私に何が残るのだろう……。先延ばしにしていた迷いの答えをそろそろ出さなくちゃいけないぞと。相当、追い詰められていたんでしょうか。ネットで“ボランティアスタッフ募集”のHPを見つけた瞬間、何かにせかされるように申し込みボタンを押していたという。事務所に相談する前に、完全に勢いだけで(笑)」
「人生に悩み迷った30代の入り口。もがき学んだから答えが見えた」(バービーさん)
自分自身を取り戻せた英国のボランティア期間
ガーデンデザイナーの資格を取ってよかったことは何かと尋ねたとき、バービーさんから返ってきたのが「ボランティアスタッフを経験できたこと」だった。
「イギリスには約1週間滞在したのですが。まず、この仕事を始めてから、自分の意志で長期休暇を取ったのはそれが初めてだったんですよ。忙しさを理由に置き去りにしてきた“自分と向き合う時間”を持つチャンスだと思い、ボランティア仲間には“バービー”ではなく本名で呼んでほしいとお願い。その期間は仕事を忘れ“笹森花菜”として過ごすことができたんです。そして、それが自分自身を取り戻すとてもいい機会になったんですよね」
それまでは自分の大半を“バービー”に注いで生きてきたけれど、“笹森花菜”もちゃんと満たしてあげなければいけない。学びを通してそこに気づいたとき、目の前をずっと覆っていたモヤモヤがふうっと晴れていくのを感じた。
「私を“花菜ちゃん”と呼ぶ仲間と出会えたことも私にとっては大きな財産。今も交流がずっと続いていて。ゴリゴリの造園のプロとして活躍する仲間たちと、イモトアヤコちゃん宅のお庭を一緒に造ったこともあるんですよ」
大人になればなるほど学びはきっと楽しくなる!!
以前は“自信がない自分を武装するため”そして“自分探しのため”に学んでいたバービーさん。しかし、今はそれが“自分を豊かにするため”のものに変わった。
「大学を卒業してから、今がいちばん豊かに学べている気がします。ラジオ、執筆、書評の連載など、これまで触れてこなかったジャンルのお仕事をいただき、学ぶ機会が増えたこともきっかけなのですが。年齢や経験を重ねて、理解する解像度がすごくクリアになったというか。若い頃はわからなかったことが今になって理解できるようになった、そういうことがとても多くて。大人の学びはとても刺激的。クラブでお酒を飲んだり踊ったりするよりも充分に刺激的(笑)。もしかしたら、感受性は弱まっているのかもしれないけれど、それをカバーするくらいの経験値と蓄積された感情がありますから。そこに学ぶこと一つひとつがビリビリと大きく響くんですよね。この先もきっと、そのビリビリは増していくはず。それを今の私は楽しみにしていたりもするんです」
渋谷公園通りの花壇を飾る国際ガーデニングコンテストにひそかに参加。チームを結成して取り組み、アイディア賞を受賞
チェルシーフラワーショーで。自分を取り戻しつつある“笹森花菜”さん。仲間とともに真剣に好きなことと向き合った!!
バービーさんが師と仰ぐ庭園デザイナーの石原和幸さん。長崎のガーデンショーにも発足から携わる、その道の第一人者
撮影/須藤敬一 ヘア&メイク/加藤志穂〈PEACE MONKEY〉 スタイリスト/谷口夏生〈TAKUTY PRODUCE&CREATE〉 取材・原文/石井美輪 ※BAILA2022年2月号掲載