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【明日海りおさんインタビュー】 宝塚歌劇団退団後の“今”を語る

元宝塚歌劇団・花組トップスターの明日海りおさん。タカラジェンヌとして夢をかなえ、多くの人に夢を見せてくれた彼女が、新たに歩む夢の先とは――。

「この人なら」と思わせる実力を見せる。それが理想のトップ

【明日海りおさんインタビュー】 宝塚歌劇団退団後の“今”を語る_1

異動先である花組でトップとなってから、コンビを組んだトップ娘役は計4人。組替えによる二番手の交代も経験。組をまとめる立場は、試行錯誤の日々だった。


「花組で信頼してもらうために、まず大切にしたのは、実力を磨くこと。食事や会話でコミュニケーションをとるよりも、『この人の話なら聞いてみよう』と思ってもらえるような芝居、歌、ダンスを追求しました。トップ娘役さんとは、相手の性格や、組の状況によって接し方も変わっていったかな。意見を伝えたほうがうまくいく人もいれば、あまり言わず、相手にとって私が“安心できる存在”でいるほうが、のびのびした演技ができる人もいる。二番手さんには、いずれトップになったときに困らないように……と意見を伝えましたが、それだけだと溝が生まれちゃう。私は舞台の話になると神経質になりがちなので、オフではひたすらボケ〜ッと、ゆるゆるしてましたね(笑)。トップがキリキリしていると、みんなが気にしている空気が舞台で伝わってしまうので。とはいえ、実際はうまくいかないことも多かった。作品により、役のイライラを引きずることもあったし……。きっとそれすらもみんなわかっていて、大きな心で受け止めてくれていたんだな、と今では思います」

人生最高の舞台。退団を決意したのもそのときだった

【明日海りおさんインタビュー】 宝塚歌劇団退団後の“今”を語る_2

退団を考え始めたのは、伝説的な作品『ポーの一族』(2018年)の公演中。「そろそろ、かもしれない」と思える瞬間が訪れた。


「私が育った月組は、“芝居に重きを置く”特色がある組。花組はダンスにプライドを持つ組ですが、私がトップになったからには、芝居へのプライドも浸透させたいと思ったんです。薄い紙を積み上げるような作業でしたが、3年目くらいから私が何も言わなくても雰囲気で感じ取ってくれるように。私のエッセンスがしみてきたなぁとうれしかったです。組子みんなが“しみしみ”でいてくれて、公演中、組全体を自分自身と感じるまでになった。もう大丈夫、と、安心して退団を決めました。


退団については、自分に近い人にはなかなか打ち明けられなかった。組替えのときもそうでしたが、大事なことを伝えるときは、相手がどう反応していいか困るだろうなと思ってしまって。家族には結局伝えられなくて、ニュースで知ったと思います(笑)。宝塚の生徒で最初に伝えたのは、同期の望海(風斗さん)。出番前の化粧中でしたが、上を向いて泣いてましたね。彼女とは宝塚音楽学校時代、寮で同室でしたし、組替えからトップになった経験も同じ。小さな苦労も幸せも、全部わかり合えるんです。彼女の舞台は祈るような気持ちで観ますし、会えば『健康でいてくれ』と、なんともいえない気持ちになる。家族のような、特別な同期です。


技術面でもっと掘り下げられた、あんな役もやりたかった……と思いはつきませんが、見送ってくださるファンの方々も本当に温かく、やりきった気持ちで退団できました」

初仕事で出会えたのは運命的な男装のヒロイン

【明日海りおさんインタビュー】 宝塚歌劇団退団後の“今”を語る_3

退団後の進路として選んだ職業は、女優。表現者として変わらず活動を続けるという選択に、多くのファンが安堵したはず。


「在団中、宝塚をやめたあとはどうしようと考えていたら、体調をくずしそうになって……。“この生活がなくなっちゃうんだ”と思ったらものすごく怖かった。やっぱり私は表現する仕事が好きだし、芝居や自分を研究して進化していくことが楽しい。だから役者の道を選びました。ありがたいことに、私の芝居を求めて、楽しみにしてくださる方がいる。これからもその気持ちにこたえていきたいと思います」


退団後の記念すべき初仕事は、ディズニー最新作の実写版『ムーラン』の声優。男装して戦場で戦うヒロイン役は、明日海さんのキャリアを彷彿とさせ、どこか運命的だ。

「私、昔からディズニーが本当に大好きで。さらに男役の経験も生かせる!と、絶対にやりたかったんです。でも、オーディションではうまくいかず……。マネージャーさんに『次につながりますよ』と慰められていたところに、決定の連絡が!もう信じられなくて、思わず泣いてしまいました。アフレコで難しかったのは、役者さんの思いを日本語で滞りなく伝える作業。長年の男役で声も低くなっていたので、“女の子の声”を出すのも苦労しました。女性の声、これから研究していきます!」

今の自分に納得して一歩ずつ、進んでいく

退団後、ようやくひと息つけて、まずしたことは、宝塚時代の舞台小物の整理。


「海賊みたいなアクセサリーに大量のきものなどが山ほどあるので、これをなんとかするまでは遊びにも行かない!とひたすら整理整頓してました(笑)。本当に気に入っているものだけを残し、あとは手入れをして後輩にあげました。時間があったので、電車に乗って同期の子どもに会いに行くこともかないました」


男役の退団後といえば、やっぱり気になるのはプライベートでのスカート解禁事情。


「3年後くらいまではかない!と思ってましたが、髪が伸びてくると全身男役の服が似合わなくなってしまって。カッコ悪くなるくらいならスカートもはいてしまおう、と決心しました(笑)。女性役の体型は鍛える場所も違いますし、スカートをはいて過ごすことで鍛えられるというメリットもありそう。まだ人前ではく勇気は持てないので、今は誰にも会わない日や、私を知っている人がいない場所ではいたりしています(笑)」


同じバイラ世代にとって関心の高い結婚観や、理想の女性像も気になるところ。


「同期の子ども同士が遊ぶ姿を見て、『我々の娘たちがっ!』と大感動。退団してからは結婚式にも行けて、感激したんですが、今の私はまだ別のところにいる感じ。まずは仕事をしっかり、ペースをつかんでやっていくことが優先です。理想の女性像は……いちばんは、そのときそのときの自分にちゃんと納得している人。気分が乗らないとか、なんだかイヤだなと思っていると、見た目や健康面にも出てくると思うんです。外見の理想もありますが、今はまだ、すぐに素敵な女性にはなれない時期。女子でもなく男役でもない、今だけの“不思議感”を楽しんでもらえたらうれしいですね。そして、一日も早くまた表現することに挑戦して、皆さんと共有できたらと願っています」

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撮影/八木 淳〈 SIGNO〉 ヘア&メイク/平山直樹 スタイリスト/大沼こずえ〈eleven.〉 取材・原文/櫻木えみ 構成/斉藤壮一郎〈BAILA〉 ※BAILA2020年6・7月合併号掲載

【BAILA 6・7月合併号はこちらから】

【明日海りおさんインタビュー】 宝塚歌劇団退団後の“今”を語る_4
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