30代・40代の妊娠のお悩みや疑問に医師が回答! 今回は妊娠中の立ち仕事について。妊娠初期に立っていて赤ちゃんは大丈夫?お腹が大きくなって立ち続けていても早産にならない?そんな疑問にお答えします。
Q:妊婦だけど仕事で立ちっぱなし。続けていい? やめておいたほうがいい?
30代&40代女性の「リアルな妊娠悩み&疑問」!
・「最近初めての妊娠が判明した40代。販売員なので商品陳列や接客、レジ打ちなど仕事のほとんどが立ち仕事。現場の人数も少なく責任ある立場でもあるので、できれば産休まで穴を空けたくないけれど……。やはり40代という年齢のこともあるし、心配です」
・「イベント会社で働いています。先輩たちは妊娠中も『大丈夫だから』『全然元気だし気にしないで!』と産休に入る直前まで立って働いていたので『そんなものなのかな……』と楽観的に考え、積極的に立ち仕事も引き受けているのですが、ときどきお腹が張ったように感じるときもあり……。とはいえ出血しているわけではないし、先輩たちも普通に働いていたことを考えると立ち仕事を断るわけにもいかず、モヤモヤしながら働く毎日です」
・「30代後半で初の部署異動を経験、すぐに妊娠しました。産休・育休中に同僚に負けたくない気持ちもあって、『妊娠中も問題ないですよ〜』と残業も積極的に。売り場の見回りなども行くので立ち仕事多めなのですが、腰が痛いし、むくみも酷いしで正直つらい! でも人に任せるのも将来的に心配……」
医師が回答!
日本医科大学を卒業後、医局を経て1995年4月まで都立築地産院産婦人科医長として勤務する。1995年、東京都豊島区に『小川クリニック』を開業。婦人科、内科、不妊治療まで幅広く診療を行う。
【POINT】妊婦さんの立ち仕事…注意すべきは妊娠中期以降!
「これは難しい問題ですよね。事務職など、完全なデスクワーク以外は、多くの仕事には立ち仕事が含まれます。中には保育士や介護士、販売職など、ほぼ立ちっぱなしの職業もありますし、妊娠したからといって職場の配置換えができるところは少ないと思います」
「妊婦の皆さんの中には、『妊娠初期(16週未満)は特に身体を大事にしたほうがいいんですよね?』と心配する方が多く見受けられます。しかし、妊娠初期の流産は、母体が無理したかどうかはあまり関係ありません。この時期の流産率が10〜20%と高いのは、母体が無理をしたかどうかではなく、赤ちゃん側の異常が原因の流産がほとんどです」
「逆に、妊娠中期(16~28週未満)くらいからの子宮が大きくなってきた頃は立ち仕事が赤ちゃんに悪い影響を与える可能性が高いので注意が必要。悪阻も落ち着き、安定期と呼ばれる時期に入ったから……と安心して、仕事やプライベートでアクティブになる妊婦さんも多いと思いますが、無理をするとお腹が張ってきて入院したり、出血して早産につながる……といったトラブルも増えるんです。妊娠中期以降は特に気をつけてほしい時期ですね」
【ANSWER】仕事を休む前に、主治医に体調の相談を!
「いちばん大切なのは、自己判断しないこと! 体調に異変を感じたときは、すぐに産婦人科の主治医に診てもらうことが大事です。症状があって、“長時間の立ち作業”などの“身体的負担の大きい作業”は制限の必要があると認められた場合、医師によって“母性健康管理指導事項連絡カード”に症状を記入してもらえます。母子手帳に付いていますし、病院には必ずあるものです。このカードを会社に提出すれば、体調が悪くなる恐れのある立ち作業は休めるようになります」
「必ず会社を休む前には主治医に診てもらうこと。また病院では遡った時期の症状の診断はできないので注意が必要です」
「つらさは人によって違うので、心配だからと仕事を休む人もいれば、ギリギリまで我慢してようやく病院に来る人もいます。症状がつらくて休みたいのであれば、まずは病院に行って相談をしましょう。妊婦健診まで我慢しなくても病院には行っていいんです。診察を受けて、症状の証明をきちんとしてもらってから、職場に“母性健康管理指導事項連絡カード”を提出して休むか、仕事内容を変えてもらいましょう」
「相談者の方のように、年齢を気にしての相談も多いですよね。40代は確かに流産になる率や妊娠高血圧症になる率も高いので、ハイリスクといえます。普段の生活から安全の幅をとって早めの受診、相談を心がけましょう」
会社に症状を伝えづらい場合も、医師に“母性健康管理指導事項連絡カード”を書いてもらうという手が!
取材・文/櫻木えみ