海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、アカデミー賞候補になった『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイク最新主演作品『パーフェクト・ケア』をご紹介。信頼も厚い法定後見人でありながら犯罪に手を染めた主人公のマーラ。「私には“負け”はない」と豪語する彼女の運命は果たして!?
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『パーフェクト・ケア』
よくないことだとわかっているけれど、人知れず楽しんでしまう。『パーフェクト・ケア』は、そんなギルティ・プレジャーを、観る人にたっぷりと感じさせてくれる映画だ。
主人公のマーラは、裁判所からの信頼も厚い法定後見人。だが、実際には判断力の衰えた高齢者の資産を合法的にしぼり取る悪徳後見人だった。そんなマーラの次の獲物は身寄りがない老女ジェニファー。いつもどおり、強引な手段でケアホームに入所させるが、その頃から不穏な出来事が起こり始める。ジェニファーの背後には、なぜかロシアン・マフィアがいるらしい。マーラと女性パートナー、フランの運命は……?
現実には絶対にあってはならない犯罪に手を染めたマーラは、野心的で冷酷で計算高く、ありえないほどのタフさを発揮して富に執着する。そんなマーラを怪演するのは、アカデミー賞候補になった『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクだ。
人を引きつける華やかさがありつつ、クールなポーカーフェイスはどこか人を食ったようなところがある。相当ひどいことをやっているのに、あっけらかんとした乾いたユーモアはおかしくもあるし、ぞっとする瞬間も。そしてどれほど追い詰められても、「人間は2種類しかいない。食う者か食われる者か」「私には“負け”はない」としぶとく立ち上がる。その痛快さといったら!
道徳的には完全にアウト。でも、これまで男性のキャラクターとして多く描かれてきたアンチヒーロー、ワルの魅力は、女性が体現するとまた格別なもの。色仕掛けなど一切使わず、命が狙われようとも一歩も引くことはない。わが道を貫く豪胆な生きざまに、心の中で思いっ切り拍手を送りたくなるはず。
監督/J・ブレイクソン
出演/ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ
公開/全国劇場(3週限定)&デジタル配信にて12/3より
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『ディア・エヴァン・ハンセン』
傑作ブロードウェイミュージカルの映画化。噓をついたことで、SNSで人気者になった孤独な高校生エヴァンの物語。『ラ・ラ・ランド』のコンビによる珠玉の楽曲を、エヴァン役のベン・プラットが熱唱。
監督/スティーヴン・チョボスキー
出演/ベン・プラット、ケイトリン・デヴァー
公開/全国にて11/26より
©AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020
『リトル・ガール』
体に違和を感じて、自分は女性であると訴える7歳のサシャのドキュメンタリー。トランスジェンダーの幼少期の“性別のゆらぎ”を、母親とサシャが直面する多くの問題を通して優しく伝える。
監督/セバスチャン・リフシッツ
出演/サシャ(本人)
公開/新宿武蔵野館ほかにて11/19より
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年12月号掲載