韓国文学×SFがおもしろい!『わたしたちが光の速さで進めないなら』【エディターズピックvol.275】

BAILAエディターがお気に入りを語る連載。発売中のBAILA11月号「本を読むっておもしろい」特集にちなみ、おすすめ本『わたしたちが光の速さで進めないなら』をご紹介します。

若い韓国文学とSFの古典的モチーフが出会っておきた素敵な化学反応

◆『わたしたちが光の速さで進めないなら』
キム・チョヨプ著 
カン・バンファ、ユン・ジヨン訳
早川書房

韓国文学とSF。意外な取り合わせに思えるかもしれませんが、このマリアージュが非常においしいのです。

表題作は、古い宇宙ステーションで宇宙船を待つ老人のお話。夫と息子が移住した第三惑星へ行く船を待つ彼女に、一人の若者が声をかける……。「館内紛失」では、死者のマインドデータを保存する図書館で母の情報が紛失したことをきっかけに、娘は母の痕跡を辿りはじめる。

どの短編もSFファン大好物の古典テーマを取り扱いながら、とても現代的な問題、例えば、社会的マイノリティへの眼差しだったり、母娘関係、分かり合えないものとの共存だったりを描いているのが新鮮。表題作では、大きな技術革新により社会から取り残されてしまった老人の切実な願いが、胸に響きます。
 
そう書くと堅苦しく思われそうですが、そんなことは全然なくて、可愛い表紙のイラストレーションから想像する通りの作品。相手を理解しようと手を伸ばす努力の切なく、エモーショナルな瞬間に共感するし、SFならではの空想世界に遊ぶ楽しさやユーモアがあって、洒落てる。エンターテイメントとして読みやすい。著者が93年生まれでBAILA読者と同世代なのもオススメの理由です。

BAILA11月号では韓国文学は今なぜ面白いのかを分かりやすく解説!

9月28日発売のBAILA11月号では「本を読むっておもしろい」というテーマで読書案内を大特集。そのなかの一つに「韓国文学とフェミニズム」と題して、書評家の江南亜美子さんと翻訳家のすんみさんによる対談を掲載しています。「なぜ今、韓国文学は面白い?」「フェミニズムが話題なのはなぜ」「おすすめ作品は?」と、最近の韓国文学の入門になっています。
 
読書家はもちろん、興味はあるけれどまだ読んだことがない人、『82年生まれ、キム・ジヨン』の後に何を読むか迷っている人など、できるだけ多くの人が手に取りやすい「やさしい韓国文学ブックガイド」になるように10冊を厳選してもらいました。

10冊の中にはSF小説も登場します。韓国では、SFの歴史が浅い分、特に若い世代の作家がSFに注目して、自由な表現の手法として取り入れて自作を発表しているそう。

 

江南さんとすんみさんならではの、韓国文学の「今」を捉えたリアルなトークは、必読です。ぜひチェックしてみてくださいね!

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