必要なことや求められることに全力投球し、挑戦をかたちにする。活躍の場をますます広げる優木まおみさんの人生はその積み重ねの連続でした。そんな優木さんのポジティブ精神のルーツや仕事のポリシーに迫ります。
ロジカルに、戦略的に。 でもときに、大胆に挑戦
優木まおみさんが“身体美容家”というオリジナルの肩書を作ったのは、2021年。第2子出産後、なかなかリカバリーできない体を救ってくれたピラティスに心酔し、インストラクター資格を取得したことがきっかけだ。
「私の場合、運動をすることでダイエットや体調管理などのケアができることはもちろん、お肌や髪がきれいになる実感があるんです。美容家さんやフィットネスインストラクターは世の中にめちゃめちゃいるじゃないですか。でも、運動と美容の中間をうたった人はそれまでいなかったし、自分で肩書を作れば、他の人と差別化できるひとつのフックになると思ったんです」
今では、ピラティスをベースにしたオリジナルのメソッド“マオビクス”を確立。協会を立ち上げ、インストラクターの養成にも力を入れている。
「ピラティスは、仕事にしたいくらいのめり込んだけど、自分がいちインストラクターとして活動する画が見えなかった。それにやっぱり、インストラクターは世の中にたくさんいますしね。それなら、体をほぐしたり、心をケアしたり、ピラティスだけではまかないきれない要素を詰め込んだ、自宅やオンラインでも実践できるオリジナルのメソッドを作ろうと思ったんです」
なんとも戦略的。マオビクスでも、なぜその動きをするのか、どこにどう効くのか、ロジカルに伝えている。
「ただ運動すればいいわけじゃなく、戦略を立てて動いたほうが断然、時間も短くすむし効率的。“頑張った感”とかは、いらないんです(笑)」
緻密に計画は練るものの、一方で、大胆さも持ち合わせているのが優木さんのユニークさ。「石橋はたたかず渡るタイプ」だと、からりと笑う。
「うまくいかずに泡のように消えていったこともあるんです。過去にはチャイルドマインダーの資格を勉強したり、フードコーディネーターの資格を取ったことも。“数うちゃ当たる”的な挑戦をするなかで、偶然かつ完全にハマったのがピラティスでした。とりあえず挑戦してみることが自分の性に合っているし、そのおかげで、思いがけない身体美容家という未来もつかめた。失敗はいっぱいやらかしてるけど、『経験値アーップ!』って感じで、ゲームみたいにとらえているかもしれません」
人生のつらい時期に培った尊厳を失わないタフさ
気持ちいいほどのポジティブさを身につけたのは、「人生でいちばんつらかった時期」の経験が大きく関係している。
「中学の頃からアナウンサーを目指していた私にとって、採用試験に落ちたことは大きな挫折でした。今の事務所にフリーアナウンサーとして入りましたが、しゃべりの訓練を受けていないから、言ってみればただの22歳。オーディションを受けても、受けても、落ちてしまう時期がありました。でも、その経験があったからこそ、うまくいかなくても自分の尊厳を失わないタフさは培ったかもしれない。捨てる神あれば拾う神あり。たとえばレギュラー番組が終わっても、『ほかの人が拾ってくれるタイミング。新しい可能性が広がるチャンスだからラッキーなんだ!』と、常に切り替えられるようになりました」
仕事をする上で大切にしているポリシーは、「来た波に乗ってみる」こと。そして、「自分で波を起こす」こと。
「フリーアナウンサーとしてオーディションに受からないなら、局アナができないことをやってみようと歌に挑戦しました。これは自分で波を起こしたパターン。電器屋さんの駐車場など、年半くらいずっと営業回りをしました(笑)。おかげでお客さんを集めるトーク力と度胸は鍛えられましたね」
波が来たら乗る。ときには波を自分から起こす
イベントをすると300人くらいファンが集まるようになり、噂を聞きつけた出版社から写真集をリリース。それがきっかけでグラビアのオファーが舞い込み、“エロ賢い”というキャッチコピーで一躍注目されるようになった。
「グラビアは目指しているものとは違ったし、正直やりたくないという気持ちもありました。でも、来た波に乗ってみた結果、テレビ番組にも呼んでいただけるようになったんです」
多くの男性ファンを獲得したものの、長くグラビアができるわけではないと考え、女性ファンを獲得するために女性誌でのモデルの仕事にもチャレンジ。波に乗り、波を起こし、次々活躍の場を広げていった。ところが、明らかに流れが変わったのが出産後。
「人生における宝を得た反面、仕事に使える時間はどうしたって限られてしまう。以前のように22時からの収録には参加できないし、休みの日も子どもの世話に追われてコンディションはボロボロ。チャンスの波に乗れずにいたら、波自体がどんどん巡ってこなくなりました。30代の半ばは、第一線で活躍するキラキラした同年代の方がものすごくうらやましかったです」
そんななかでも腐らず、新たな波を起こそうと模索し続けた結果が、ピラティスとの出会いや、忙しいママでも自宅でできるマオビクスの考案に結びついた。しっかりと戦略を立てて歩んできた彼女が直面した、挫折や迷いや失敗。そのすべてが今につながっている。
「身体美容家として名乗っている以上、その言葉に責任を持ってこれからも活動していきたいですし、関わる人を育てて、波を大きくしたいです」
ただし、彼女の仕事の主軸はあくまでも、タレントだという。
「これまでいろんなことに挑戦してきたけれど、やっぱり、ひとつのことを続けることが実はいちばん難しいんです。今後も仕事のオファーが途切れないタレントであり続けたいという目標はあります。私のように、結婚や出産などライフステージの変化によって、仕事を続けられるかどうか悩む人はたくさんいると思うんです。けれど、情熱を注げることができる火種は、あきらめずに手放さないでいてほしいです」
最後に、優木さんにとって仕事とは何か聞くと、迷わず「趣味」と回答。
「『これをしてみたいな。こうしたら喜ばれるかな』と、準備をして戦略を立てる感じは、ずっと文化祭をしている感じ。常にワクワクしているし、楽しくてしょうがないです。これからもきっと、その感覚は変わらないと思います」
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優木まおみさん
ゆうき まおみ●1980年3月2日生まれ、佐賀県出身。バラエティ番組や情報番組のコメンテーターなどで活躍。2021年には一般社団法人「身体美容科認定協会」を設立し、エクササイズ“マオビクス”を考案。「今後は、体をほぐすマッサージ“マオロジー”の考案や、関連グッズの販売にも力を入れていく予定です」
撮影/木村 敦 ヘア&メイク/廣瀬浩介 スタイリスト/吉村友希 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2022年11月号掲載