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バイラ読者の気になる経済キーワード1位! 「インフレ」について大江麻理子キャスターと深堀り!【働く30代のニュースゼミナール vol.32】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第32回目は「インフレ」について大江さんと一緒に深堀りします。

今月のKeyword【インフレ】

いんふれ▶インフレーション(Inflation)の略で、世の中のものやサービスの価格(物価)が上昇すること。反対に物価が下落することをデフレという。日本ではデフレが長く続いていたが、コロナ禍やウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇や円安の影響などで、エネルギー・食品などの価格上昇が進行している。

今月のKeyword【インフレ】

関連ニュースTopic

2022年10月

日本政府は、物価高などに対応する支援を含んだ総合経済対策を決定
対策には電気・ガス料金やガソリン価格などの負担軽減策が盛り込まれ、1世帯総額4万5000円にあたる支援を実施。消費者物価上昇率を1.2%以上抑える効果を見込んでいる
2022年11月

アメリカの10月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比7.7%上昇 
消費者物価指数とは、国内の物価の変動を表す経済指数。米国では’22年6月の前年同月比9.1%上昇というインフレ水準のピーク後、鈍化傾向にあるがまだ高水準が続く
2022年11月
日本の10月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比3.6%上昇  
総務省が毎月発表している日本の消費者物価指数は10月、変動が大きい生鮮食品を除いた指数が前年同月比3.6%上昇。消費税増税時を上回る40年8カ月ぶりの水準に

バイラ読者にアンケート

 (回答数107名 2022年10月28日〜11月1日に実施)

Q 2023年に向けて、関心のある経済キーワードを3つ選んでください

インフレ 79%
マイナンバー制度 74%
日銀金融政策 53%
インバウンド消費 42%
インボイス制度 30%
G7サミット 17%
VUCA 8%

関心度1位は、身近な家計に直結するとの声が多かった「インフレ」。2位の「マイナンバー制度」は今後どう活用されるのかを知りたい人が多数。3位の「日銀金融政策」は円安やインフレからの関心が高かった

大江ʼs eyes

今回は、2023年に向けて関心のある経済キーワードをアンケートで選んでいただくかたちで決めました。最も関心が高かったのは「インフレ」でしたね。日本にとって物価が上がるのは久しぶりの状況なので、ものごころついてから初めて物価上昇を経験しているという方も。「マイナンバー制度」は、健康保険証との一体化をきっかけにより身近な問題として考える方が増えたのかもしれません。「日銀金融政策」は、物価上昇局面でいつ金融政策の修正が行われるのかに注目している方も。「VUCA」(変化が激しく将来の予測が困難な状態)は言葉としての認知度は高くなかったですが、状況として皆さんよく認識していて、先行きが見えにくい状態が今後も続くであろうなかで、自分がどうしていくかを考えている方が多そうだなと感じました

Q 最近の物価上昇が家計に及ぼす影響を感じますか?

Q 最近の物価上昇が家計に及ぼす影響を感じますか?

大半が影響あり。最も上昇を感じる物価を聞くと、1位食品(約6割)、2位光熱費(約2割)、3位ガソリン(約1割)との結果に。「スーパーのレジで合計金額を見るたびに驚く」「何もかも値上がりを感じる」との声も

大江ʼs eyes

物価上昇による実際の影響がよく表れていますね。ガソリンについてはすでに政府の補助金が出ていて、総合経済対策でも価格抑制が継続されます。光熱費も総合経済対策に負担軽減策が盛り込まれています。食品については、原材料高や円安の影響など上がる要素のほうが多い状態が続きそうです

大江さん

Q 過去3年にあなたの収入に変化はありましたか?

Q 過去3年にあなたの収入に変化はありましたか?

約6割が「変化なし」と回答。2021年3月号で同じ質問をした際は「増えた(38%)」「減った(36%)」「変わらない(26%)」との結果。約1年前より「変わらない人」が倍増。「増えた人」が減り、「減った人」が増加した

大江ʼs eyes

厚生労働省の9月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.3%減少。賃金上昇が物価上昇に追いついていない状況が続いているなかで「厳しい」という感覚を持っている方が多いと思います。だからこそ’23年の春闘でどれぐらいの賃上げが実現するかが非常に重要です

Q 2023年の景気は2022年よりよくなると思いますか?

Q 2023年の景気は2022年よりよくなると思いますか?

先行き不透明な世界経済に「悪くなる」が「よくなる」の約2倍。ただ2021年4・5月号で同じ質問をした際は「悪くなる(46%)」「変わらない(36%)」「よくなる(18%)」との結果。約1年前よりも少しだけ好転している

大江ʼs eyes

わずかではありますが、少し感覚として上向いているのが印象的でした。インバウンドの影響を受ける産業などに薄日が差してきている点や、久しぶりに賃金が上がる機運になっている点。そういったプラス要素と米経済やウクライナ情勢の先行きといったマイナス要素が天秤にかけられた結果なのかもしれませんね

「2022年の物価高はコストプッシュ要因が大。しかし日本経済の体温も少しずつ上昇している」

「皆さんの関心が高かったインフレ。海外では10%台の物価上昇に見舞われている国もあります。日本の物価高はそこまでではありませんが、世界情勢や他国の金融政策の影響を受け、日本だけで抑えられる問題ではないところにも不安感をお持ちの方がいらっしゃると思います」と大江さん。インフレはどのように起こるのですか?

「インフレとは、物価が上昇していく状況のこと。理想的な物価の上昇の仕方は、ものがよく売れて企業の業績がよく、企業で働いている人のお給料が増え、ものの値段を少し高めに設定しても人々はそれを買うことができるというかたちで、経済の好循環が生まれる状態だといわれています。

その理想的なインフレが、前年に比べてプラス2%ぐらいの物価上昇が続くことなのではと考えられ、ずっと日銀は『2%の物価目標』を掲げて金融政策を行っています」

’22年後半の現在、日本で起こっている物価上昇は理想的なインフレですか?

「今は、日銀が思い描いていた状況とは異なり、原材料やエネルギー価格の高騰、円安の影響など『コストプッシュ型』といわれる、コストが上がったことによる物価上昇の要因がけっこう大きいんです。

コストプッシュ要因を除いた計算の仕方をすると日本の10月の物価上昇率は1・5%程度。経済の基礎体温ともいえる部分が日銀の目指す2%に近づいてきているものの、コストプッシュ型要因が上乗せされているため、経済の実力以上の物価上昇になってしまっています」

アンケートでは「お給料が上がらないのに物価高が続き家計が厳しい」との声が。

「物価上昇に賃金の上がるペースが追いついていない方が多いでしょうから、どうしても皆さん生活防衛的になると思います。ただ、お財布のひもが固くなってものが売れなくなると、企業の業績に影響が出てお給料を上げられる状況ではなくなってしまいます。そのため、政府は大規模な物価高に対する総合経済対策を打ち出して、コストプッシュ型の物価高の部分を肩代わりしようとしているのです。望ましくない物価高の影響を取り除いて、人々の生活や消費マインドを落とさないようにしたいという思惑があるんですね。

そして政府、連合などの労働者側、経団連などの企業側の三者すべてが賃上げを目指しています。物価上昇に見合った3%以上の賃上げができれば経済の体温を下げずにすむのではないかと、’23年の春闘での賃上げの実現が注目されています。やっと経済の好循環が生まれるかもしれない局面に来ているので、ここでその腰を折りたくないのです」

「3期目の外交姿勢への警戒感も高まる。しかし中国は、重要な隣の国であり続ける」大江さん

「変動が大きく、先行きが見えにくい状態でもサバイブできる自分であることが重要」

読者の8割が「現在は、状況が変化し予測が困難なVUCAの時代だと思う」と回答。

「今、ニュースを伝えていて感じるのはこの言葉に尽きますし、変動が大きく先行きが見えにくい状態が’23年も続くと思います。

そんななか景気について考えてみますと、IMF(国際通貨基金)が10月に発表した世界経済見通しでは、’23年の実質成長率予測において先進国のなかで、実は日本がいちばん“まし”なんです。インフレ率が他国ほどではないこともあり、この世界経済の大波のなかでも変動が比較的少なく低位安定を保ち、“よい”わけではないのですが“まし”なんですね。

一方、アメリカの景気がほぼ悪くなるだろうと見通されているなかでその波を最も大きく受けるのが日本という見方もあります。また、ウクライナ情勢の膠着状態が続くと地政学的リスクを抱え続けていくことになります。それは物価高やエネルギー高が続くかもしれないといった負の要素を意味します。

雇用環境がダイナミックに変化するアメリカで、業績悪化を理由に大手IT企業が大量解雇をするといったニュースが相次ぐなか、日本は法律で雇用者が守られている面がありますが、様々な業界が世界経済の大きな波を受ける可能性は充分にあると感じます。今まであった産業がこれからも続いていく保障はないし、一方これまでなかったものが生まれてきてすごい勢いで成長していく可能性も大いにあるわけです。

だからどういう状況になってもサバイブ、生き延びていける自分であることがすごく重要で、そのためには常に自分を高めておく必要があると思います。リカレント教育ということもいわれていますが、自分がこれまでやってきた仕事の延長線上だけでなく、自分の興味がある分野や伸びそうな産業分野、世間の動きにアンテナを張り巡らせて、あらゆる状況に柔軟に対応できる自分でいることが大切なのかもしれません。そのために、経済ニュースをひとつのツールとして役立てていただけるといいなと思いながら日々お伝えしています」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/花村克彦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2023年2・3月合併号掲載

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