戦前から2020年代まで、社会&ファッションはどう変わってきた?【ジャケットと働く女性の100年】

仕事中も週末も、私たちが当たり前のように着ているジャケット。その歴史をひもとくと、女性たちの“生き方”、“働き方”の変化が見えてきました。日本の働く女性たちの100年を、ジャケットの流行の変遷とともにご紹介。

ジャケットと働く女性の歴史上のできごと

1923年

 ガブリエル シャネルがツイード素材のスーツを制作。
 女性に向けた快適で実用的な洋服の礎を築く
 

1939年

 第二次世界大戦が勃発。
 本土空襲が開始されてからは、女性の日常服はもんぺに
 

1945年

 第二次世界大戦が終結。
 GHQの指令のもと男女普通選挙、男女共学などが実現
 

1947年

 クリスチャン・ディオールが初コレクション「ニュー・ルック」を発表。
 戦後日本の洋裁ブームにも影響を与えた
 

1955年

 日本は好景気に突入。
 高度成長期の幕開けとなる
 

1963年

 「OL」という言葉が誕生
 

1964年

 東京オリンピックが初開催され、家庭にテレビが普及。
 選手団が開会式で着用した赤いブレザーが話題に
 

1970年代

 ファッション雑誌の創刊ブーム。
 『an・an』や『non‐no』の影響で旅行が流行し、雑誌を
 片手に旅行する若い女性たちは「アンノン族」と呼ばれた
 

『non-no』1971年6月20日号

1985年

 男女雇用機会均等法が制定され、女性の働き方が多様化
 

1986年

 バブル景気に突入。
 株価や不動産価格が急上昇した
 

1991年

 バブルが崩壊。
 以後、日本経済は長期的な不況となる
 

1991年

 ドラマ「東京ラブストーリー」の人気がファッションにも影響。
 「紺ブレ」が流行語に
 

1999年

 男女共同参画社会基本法成立。
 社会活動全般において男女平等を目指す
 

2001年

 『BAILA』創刊。
 

BAILAでも甘めジャケットに注目

『BAILA』2006年5月号

『BAILA』2006年5月号

2005年

 環境省による一般公募で制定された「クールビズ」が流行語に。
 夏季はノージャケット・ノーネクタイの軽装が一般化した
 

2011年

 東日本大震災が発生
 

2020年

 コロナ禍に突入。
 感染を防ぐためにテレワークが拡大
 

BAILAでも軽やかなジャケットを特集

『BAILA』2023年7月号

ジャケットコーデに女性の社会進出の歴史が表れている

ファッション史を研究する井上さんによると、女性用のジャケットが歴史に登場するのは18世紀。

「ジャケットは西洋で上流階級向けの乗馬服として流行したものの、当時の女性のファッションはワンピース(ドレス)スタイルが基本でした。1920年代、働く女性のための服としてスーツを提案したのがガブリエル シャネルです。第一次世界大戦の影響で働き手が減り、女性も男性のように働かなければいけない時代になったことで、ワンピースよりも動きやすいツーピース(ジャケット+スカート)が定番に。中でもシャネルが発表したツイード生地のスーツは、そのデザインと機能性の高さで大流行します。日本でも大震災や戦争の影響を受けて女性の働き手が増え、ツーピースの洋服は徐々に浸透していきました」(井上さん、以下同)

日本においては1990年代頃まで、女性には制服の着用を義務づける企業も少なくなかった。そのため、ジャケットはあくまで通勤時のおしゃれ着として楽しむ人も多かったようだ。

「一方でアメリカでは1980年代、パワー・ドレッシングと呼ばれるスタイルが流行しました。これは女性が男性と肩を並べて働くための、いわば“圧のある”スーツスタイル。女性の社会進出が日本よりも早かった欧米では、おしゃれさ以上に“デキる女性”に見えるジャケットが必要とされたようです」

1990年代以降になると、不景気や男女雇用機会均等法の影響もあり、制服を廃止する企業が増加。通勤服のまま働く「オフィスカジュアル」が定番に。

「現代のストレスフリーなジャケットの流行は、女性が純粋に働きやすい服装で働けるようになってきた時代の変化をよく表していると思います」

イラスト/ユリコフ・カワヒロ 取材・原文/生湯葉シホこ  ※BAILA2024年11月号掲載

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