日が落ちるのが少し早くなり、夜にひとりで過ごす時間が心地よくなる秋。にぎやかな予定を入れるのもいいけれど、温かい飲み物をそばに置いて、物語の世界へ深く潜りたくなる夜があります。そんなときに手に取りたいのが、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』です。
舞台は、穏やかな海に囲まれた瀬戸内の島。そこで暮らす暁海と、母の恋愛に振り回されて島へ移り住んだ櫂は、それぞれに孤独や生きづらさを抱えています。二人は出会い、惹かれ合いながら、同じ未来だけを見ていられない現実にも向き合っていきます。
美しい島の景色を背景にしているのに、物語は決してきれいごとだけでは終わりません。家族のこと、進路のこと、周囲の目、自分らしく生きること。誰かを大切に思う気持ちと、自分の人生を自分で選ぶことは、ときに同じ方向を向かない。その苦しさが、登場人物の言葉や沈黙から静かに伝わってきます。

恋愛小説として胸を締めつけられるのはもちろんですが、この本の魅力は「人が自分の人生を引き受けていく姿」が丁寧に描かれていること。仕事や人間関係、これからの生き方について、ふと立ち止まりたくなる瞬間がある大人にこそ響く一冊です。物語の中の選択に心を揺らされながら、自分自身の気持ちまで見つめ直したくなります。
ページをめくる手が止まらなくなるのに、読み終えたあとはすぐに日常へ戻りたくなくなる。窓を少し開けて秋の夜風を感じながら、余韻に浸りたくなる小説です。休日にまとめて読むのもいいけれど、眠る前に少しずつ読み進めるのもおすすめ。物語の景色と感情が、静かな夜にゆっくり染み込んできます。
2023年本屋大賞を受賞し、2026年10月には実写映画の公開も予定されています。
映画の前に原作を読むなら、まさに今。秋の夜長を少し特別にしてくれる一冊を探しているなら、『汝、星のごとく』を選んでみてください。





















































