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人のことなんて、案外何も知らない。湊かなえ/花の鎖

案外、人のことって知っているようで知らない。

人のことなんて、案外何も知らない。湊かなえ/花の鎖_1


かなり前に読んだ本なのですが、ふと『花の鎖』のことを思い出して、久しぶりに読みました。

湊かなえさんの作品は、読んでいると「人間って面倒くさいな」と思うことがあります。

でも、その面倒くささが妙にリアルで、結局どんどん読んでしまう。

『花の鎖』も、そんな作品でした。

3人の女性の物語が、それぞれ別々に進んでいきます。

最初は、正直ちょっと混乱しました。

この人とこの人はどういう関係なのか。

なぜここでこの話が出てくるのか。

分からないことが多いまま読み進めることになります。

でも、その「よく分からない」が嫌ではない。

むしろ、分からないから気になってページをめくってしまう。

そして少しずつ、ばらばらに見えていたものがつながっていきます。

この感じがとても好きでした。

読んでいて一番思ったのは、

「人のことって、結局あんまり分からないよな」

ということ。

普段の生活でも、私たちは人の一部分しか見ていません。

職場では仕事をしている姿。

友達といるときは、そのときの姿。

SNSなら、本人が見せたいところ。

それなのに、私はときどき「この人はこういう人」と勝手に決めてしまう。

逆に、私自身も周りから勝手に「こういう人」と思われているんだろうなと思います。

実際の私は、そんなに分かりやすい人間ではありません。

機嫌が良い日もあれば、何もしたくない日もある。

人には偉そうなことを言っておきながら、自分ができていないことも普通にある。

そして、それを全部知っているのは自分だけ。

そう考えると、他人のことを分かったような顔をするのも、なかなか図々しい話です。

『花の鎖』に出てくる人たちも、それぞれ外からは見えない事情を抱えています。

その人の行動だけを見れば、「どうしてそんなことをするんだろう」と思う。

でも、背景を知ると、少し見え方が変わる。

私はこの部分がすごく人間らしいと思いました。

だからといって、全部を理解すれば人間関係がうまくいくわけでもない。

事情が分かったところで、「いや、それでもそれはどうなの?」と思うことだってあります。

人間って、そんなに簡単ではありません。

ここが、この作品を読んでいて面白かったところです。

そして、作品の構成も好きでした。

3人の女性の話が進んでいく中で、少しずつ「あれ?」と思うところが出てくる。

その違和感が最後につながっていく。

読み終わったあとに、「最初のあれはそういうことだったのか」と思い返せる作品です。

こういう小説を読むと、読書ってやっぱり面白いなと思います。

最初から全部説明されてしまうより、自分で「あれ?」と思いながら進んだ方が記憶に残る。

仕事でもそうですが、答えを最初から全部渡されるより、自分で考えてたどり着いた方が、その情報はずっと頭に残ります。

とはいえ、現実の人間関係については、できればもう少し分かりやすくしてほしい。

「実はこういう事情があって」と最後に伏線回収してくれる人がいたら、どれだけ楽だろう。

残念ながら現実にはそんな親切なシステムはありません。

だから今日も、人の態度を見て「なんだったんだろう」と考えながら帰る。

小説なら答えがあるのに、現実には答えがない。

そう考えると、現実の方がよっぽどミステリー。

『花の鎖』は、そんな人間の分からなさを楽しめる一冊でした。

誰かのことを完全に理解することなんてできない。

でも、分からないからといって、すぐに決めつける必要もない。

そのくらいの距離感で人と付き合えたら、もう少し楽なのかもしれません。

久しぶりに読んで、そんなことを考えました。

そして読み終わったあと、少しだけ周りの人を見る目が変わったというより、

「まあ、人にはいろいろあるよね」

そう思わないとやってられない。

でも、それくらいがちょうどいいのだと思います。

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