案外、人のことって知っているようで知らない。

かなり前に読んだ本なのですが、ふと『花の鎖』のことを思い出して、久しぶりに読みました。
湊かなえさんの作品は、読んでいると「人間って面倒くさいな」と思うことがあります。
でも、その面倒くささが妙にリアルで、結局どんどん読んでしまう。
『花の鎖』も、そんな作品でした。
3人の女性の物語が、それぞれ別々に進んでいきます。
最初は、正直ちょっと混乱しました。
この人とこの人はどういう関係なのか。
なぜここでこの話が出てくるのか。
分からないことが多いまま読み進めることになります。
でも、その「よく分からない」が嫌ではない。
むしろ、分からないから気になってページをめくってしまう。
そして少しずつ、ばらばらに見えていたものがつながっていきます。
この感じがとても好きでした。
読んでいて一番思ったのは、
「人のことって、結局あんまり分からないよな」
ということ。
普段の生活でも、私たちは人の一部分しか見ていません。
職場では仕事をしている姿。
友達といるときは、そのときの姿。
SNSなら、本人が見せたいところ。
それなのに、私はときどき「この人はこういう人」と勝手に決めてしまう。
逆に、私自身も周りから勝手に「こういう人」と思われているんだろうなと思います。
実際の私は、そんなに分かりやすい人間ではありません。
機嫌が良い日もあれば、何もしたくない日もある。
人には偉そうなことを言っておきながら、自分ができていないことも普通にある。
そして、それを全部知っているのは自分だけ。
そう考えると、他人のことを分かったような顔をするのも、なかなか図々しい話です。
『花の鎖』に出てくる人たちも、それぞれ外からは見えない事情を抱えています。
その人の行動だけを見れば、「どうしてそんなことをするんだろう」と思う。
でも、背景を知ると、少し見え方が変わる。
私はこの部分がすごく人間らしいと思いました。
だからといって、全部を理解すれば人間関係がうまくいくわけでもない。
事情が分かったところで、「いや、それでもそれはどうなの?」と思うことだってあります。
人間って、そんなに簡単ではありません。
ここが、この作品を読んでいて面白かったところです。
そして、作品の構成も好きでした。
3人の女性の話が進んでいく中で、少しずつ「あれ?」と思うところが出てくる。
その違和感が最後につながっていく。
読み終わったあとに、「最初のあれはそういうことだったのか」と思い返せる作品です。
こういう小説を読むと、読書ってやっぱり面白いなと思います。
最初から全部説明されてしまうより、自分で「あれ?」と思いながら進んだ方が記憶に残る。
仕事でもそうですが、答えを最初から全部渡されるより、自分で考えてたどり着いた方が、その情報はずっと頭に残ります。
とはいえ、現実の人間関係については、できればもう少し分かりやすくしてほしい。
「実はこういう事情があって」と最後に伏線回収してくれる人がいたら、どれだけ楽だろう。
残念ながら現実にはそんな親切なシステムはありません。
だから今日も、人の態度を見て「なんだったんだろう」と考えながら帰る。
小説なら答えがあるのに、現実には答えがない。
そう考えると、現実の方がよっぽどミステリー。
『花の鎖』は、そんな人間の分からなさを楽しめる一冊でした。
誰かのことを完全に理解することなんてできない。
でも、分からないからといって、すぐに決めつける必要もない。
そのくらいの距離感で人と付き合えたら、もう少し楽なのかもしれません。
久しぶりに読んで、そんなことを考えました。
そして読み終わったあと、少しだけ周りの人を見る目が変わったというより、
「まあ、人にはいろいろあるよね」
そう思わないとやってられない。
でも、それくらいがちょうどいいのだと思います。






















































