18歳の私と今の私では、同じ本でも見えるものが違う。

先日、兵庫県の砥峰高原へ、すすきを見に行きました。
映画のロケ地としても知られている場所で、実際に数多くの作品に登場する景色です。
一面に広がるすすきを眺めながら、ふと18歳の頃に読んだこの本のことを思い出しました。
『ノルウェイの森』を初めて読んだのは18歳。
当時の感想は、とてもシンプルでした。
「暗い。そして、よく分からない。」
死や喪失が物語の中にずっと漂っていて、恋愛小説なのに、読んでいて明るい気持ちにはなれない。
登場人物たちが抱えているものも、当時の私にはうまく理解できませんでした。
直子とワタナベの関係も、どうしてこんなに難しいのだろうと思っていた。
好きなら一緒にいればいいのではないか。
大切なら、もっと相手のそばにいればいいのではないか。
18歳の私は、そんなふうに考えていたのだと思います。
それから何年も経って、今回、砥峰高原を訪れたことをきっかけに、久しぶりに本を開いてみました。
最初から読み直そうと思ったわけではなく、ページをぱらぱらとめくっただけでした。
でも、不思議なことに、以前とはまったく違うところが目に入ってきました。
「あれ、こんな話だったっけ?」
そう思いました。
そして、たぶん作品が変わったのではなく、私の方が変わったのだと思います。
18歳の私と今の私で、一番大きく変わったのは、「人はいなくなる」ということに対する捉え方です。
18歳の頃は、人が死ぬことをどこか遠いものとして読んでいました。
物語の中で起こる出来事として受け止めていた。
だから、登場人物たちがなぜそこまで過去に縛られているのか、なぜ失った人を抱えたまま前に進めないのか、よく分からなかったのだと思います。
今は、人はいつまでも同じ場所にいてくれるわけではない、ということを少しずつ実感するようになりました。
人は亡くなる。
離れていくこともある。
関係が変わってしまうこともある。
どれだけ大切に思っていても、それを自分の力だけで止めることはできません。
そして、いなくなったからといって、その人との時間までなくなるわけでもない。
記憶として残り続けるし、その人からもらった言葉や考え方が、自分の中に残ることもある。
だから「忘れること」と「前に進むこと」は、同じではないのだと思うようになりました。
『ノルウェイの森』を読み返して、そこが以前とは一番違って見えたところでした。
この作品に出てくる人たちは、誰かを失ったあとも、その人との記憶を抱えています。
18歳の私は、それを「過去に囚われている」と読んでいたのかもしれません。
でも今は、「大切な人を失ったあとも、その人とどう一緒に生きていくか」という話にも見えます。
忘れなくてもいい。
完全に乗り越えなくてもいい。
それでも、自分の時間は進んでいく。
そんなふうに感じました。
そして、今回改めて読むと、緑の存在も以前より印象に残りました。
直子が過去や喪失の側にいる人物だとすれば、緑はとても「今」を生きている。
よく笑って、自分の欲しいものを欲しいと言って、少しわがままで、でもとても生命力がある。
18歳の頃は、そんな緑をただ「変わった女の子」くらいに思っていた気がします。
今は、その生きる力がとてもまぶしく感じられます。
過去を抱えている人と、今を生きようとする人。
その間で揺れるワタナベ。
この構図も、以前よりずっと理解できるようになりました。
そして砥峰高原で実際にすすきを見たことで、作品の中の風景も少し変わりました。
風が吹くと、すすきが一面で揺れる。
写真で見るよりずっと広くて、静かで、少し寂しい。
18歳の頃に本の中で想像していた風景を、何年も経ってから実際に見ることになるとは思っていませんでした。
小説を読んだときには分からなかったことが、人生を少し経験してから読むと、違う意味を持って見えてくる。
今回、それを実感しました。
『ノルウェイの森』は、今読んでも決して明るい作品ではありません。
死や孤独、喪失が繰り返し描かれるので、読む人によっては重く感じると思います。
私自身、18歳の頃にはそれを「暗い」という一言で片付けてしまいました。
でも今は、少し違います。
人はいつかいなくなる。
その事実を変えることはできない。
だからこそ、いなくなった人をどう自分の中に残していくのか。
そして、自分自身はどうやってその先を生きていくのか。
『ノルウェイの森』を読み返して、私が受け取ったのは、そんな問いでした。
18歳の私には分からなかった。
でも今の私には、少しだけ分かる。
同じ本を読み返して、こんなにも感想が変わることに驚きました。
本は変わらないのに、自分が変わると、見える景色まで変わる。
だから、昔読んだ本を大人になってから読み返すのは、思っていた以上に面白いのかもしれません。























































