本誌連載「愛の処方箋」でもおなじみの長塚圭史さんが演出、台本を手掛ける(そして一部出演も)舞台「王将」へ。最初、「3部作」と聞いて、それほどの長時間、大丈夫かな?と多少の不安を感じながら下北沢の小劇場「楽園」へ向かいました。
中に入って驚いたのは、舞台と客席との近さ。一見して15畳ほどの小さな舞台を80席が取り囲むようなセッティング。こんな至近距離で舞台を鑑賞するのは初めてだったので、「一体何が始まるんだろう?」という高揚感を覚えました。『王将』は昭和の演劇界を代表する劇作家・北條秀司の代表作で、将棋界の鬼才、坂田三吉の半生を描いたもの。三度の飯より将棋が好きな三吉の輝ける出世への階段、挫折、葛藤、苦悩、家族への愛・・・一人の棋士の駆け抜けた人生をそばで目撃し、一緒にホロリとして、そして大笑いして・・・大阪弁のセリフのテンポのよさ、人情味あふれる脚本にぐいぐい引き付けられました。福田転球さんが演じる三吉に、まるで親戚のおじちゃん(?)のような親しみを覚えたのは舞台との近さからでしょうか。3部作は、もちろん一部を見るだけでも内容がわかる仕立てにはなっていましたが、本当に3部とも見てよかった。帰宅後もその余韻から冷めるのに時間がかかってしまいました。公演は昨日で終了しましたが、また上演があったら必ず観たい!と思わせる作品でした。(編集きっこ)