私たちのファッションにおいて、靴はどんな役割を持ち、どんなきっかけを連れてきてくれるのか。今回は社会学的視点から考察。WWDJAPAN編集長・村上 要さんが、今、女性靴に求められる役割について、トレンドの変遷から考えます。
今、靴に求められる役割をトレンドの変遷から捉える

WWDJAPAN編集長
村上 要さん
「WWDJAPAN」編集長。静岡新聞社の社会部記者を経て渡米。ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)でファッション・コミュニケーションを専攻。帰国後、INFASパブリケーションズに入社し、2021年4月より現職。新聞記者出身ならではの鋭い視点と多角的な分析で業界を牽引。
“モノ自体が主役になるのではなく、身につける人を主役にしてくれる靴を”
ファッショントレンドは、その時代の社会や女性の生き方・働き方と密に連動しており、シューズトレンドも当然ともにシフトしています。最近では、新型コロナによる社会の変化が大きく影響しました。コロナ禍は外出機会、特にパーティシーンが一気になくなったことで、ラグジュアリーブランドの、ドレスと合わせるハイヒールの需要が激減したんです。
この時期はSNSでのコミュニケーションが当たり前になり、ストリートなスタイルを象徴する派手なスニーカーも売れました。カラフルなスニーカーはスマートフォンを高速でスクロールしていても目に留まるほどキャッチーで、「いいね」を集めるとさらに多くの人に広がります。様々なブランドが“ダッドスニーカー”と呼ばれる、まるでお父さんが履いていたような大きなスニーカーを出したんです。
かつてはリーマンショックも、売れるシューズを大きく変えました。景気の後退で季節ごとに数万円のパンプスやブーツを買うより、安価かつ履き心地も格段にいい「ニューバランス」のようなスニーカーが選ばれ、急速に普及したのです。共働きなど、社会で忙しく活躍する女性が増えたことも影響しているでしょう。そして人間は、一度楽な思いをしたら、再び我慢をしてもとの不自由さに戻ることはありません。リーマンショックでスニーカーはすっかり定着し、女性の装いのカジュアル化を加速させました。
最近のコレクションを見ていると、ストリート一辺倒の流れは落ち着き、あらためて普遍的なエレガンスを志向するデザイナーが増えていることに気づきます。SNSで関心を集めたキャッチーなアイテムは、そのモノ自体が主役なだけであって、身につける人を主役にしてくれるとは限らない。だからこそベーシックなアイテムが再解釈され、履き心地も意識した3cm前後のキトゥンヒール、脱げにくいスリングバックなど、パンプス回帰が顕著になっています。
これは単なるファッションのトレンドのひとつではなく、主役をアイテムから「着る人」に再設定しようとする動きの一例です。どんな靴を提案したら、女性はワードローブの中の一足として、長く寄り添ってくれる定番として、自分らしく取り入れてくれるのか? 多くのブランドは今、そう考えた提案を最新コレクションとして発表・販売しています。

©Getty Images
新クリエイティブ・ディレクター、ルイーズ・トロッターによる「ボッテガ・ヴェネタ」2026年春夏コレクションのルック。「女性ディレクターになったことで、バックストラップやトングデザインなど、歩きやすさを意識したシューズデザインが印象的でした」(村上さん)

(上)彫刻のようなレースコサージュが優美。「ミミ」(5)¥157300/ジミー チュウ (下)憧れの名品。「サージ スリングバック」(2.5)¥137500/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス(セルジオ ロッシ)
※( )内の数字は編集部で計測したヒールの高さで単位はcmです ※BAILA2026年4月号掲載

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。


























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