コロナ禍で生活ががらりと変わったことや、30代という心身がゆらぎやすい年齢も重なり、最近、気分の落ち込みを感じている人が多数。巣ごもりうつになりつるある人は、医師の工藤孝文先生が教えてくれた15の予防策を実践してみて!
【自律神経】
生活リズムが乱れている人や、不安感やストレスを感じている人は自律神経が乱れて、巣ごもりうつに陥りやすい。心の状態を自分で変えるのは難しいけれど、体に働きかけることで心の状態は改善しやすいから、以下の方法を実践!
《To Do 1》朝一番のサンダル散歩
「軽い運動をしたり、起床後30分以内に朝日を浴びると、幸せホルモンとも呼ばれる神経伝達物質“セロトニン”の分泌が促され、うつが改善しやすくなります。おすすめはサンダル散歩。サンダルなら起き抜けでもすぐ履いて出かけられ、セロトニンの分泌を促すのに効果的です」
《To Do 2》胸鎖乳突筋をマッサージ
「ストレスからくる緊張や、デスクワークなどによって首にコリが生じると血液や神経の状態が悪化し、脳の働きや自律神経が乱れがちに。これを改善するため、耳の下から鎖骨にかけて走る“胸鎖乳突筋”をこまめにもみましょう。副交感神経が優位になってリラックスし、ストレスやイライラが解消」
《To Do 3》無理に湯船につからない
「疲れている日は無理に湯船につからず、シャワーですませましょう。特に夏の暑い時季は、室外と、冷房の効いた室内との温度差や、冷たい食べ物を食べることなどで体温調節が頻繁に行われ、自律神経への負担が増える時期。疲れた日は、シャワーですませて自律神経への負担を減らしましょう」
《To Do 4》体を冷やさない
「体温が低下したり、体に冷えを感じると、不安や悲しみをつかさどる脳の中の扁桃体という部分が暴走し、ネガティブ思考を生みやすくなります。特に夏は、そうめんなどの冷たい食べ物や冷房など体を冷やす生活習慣が多いので要注意。そうめんなどの糖質が多い食品は血糖値の乱高下を招き、これもうつの原因に。体の冷えを防ぎ、糖質をとりすぎないこと」
《To Do 5》手を洗うときは中指をもみながら
「手を洗うついでにするといいのが中指もみ。中指には触覚を感知する感覚神経が集まり、刺激すると脳に伝わって自律神経が整います。手の甲を上に向け、反対側の親指で、中指の爪の下からつけ根まで、痛気持ちよく感じる力でもみます。次に、手のひらを上にして同様に」
【ツボ・マスクの下】
漢方では、気分の落ち込みや、やる気が出ないなどの症状が出ることを“気うつ”と言い、この改善にはツボ押しがおすすめ。また、マスク生活で呼吸が浅くなっていることも自律神経を乱す原因。早口言葉やウイスキー体操で改善を。
《To Do 6》不安感、気うつに効く“百会”と“合谷”を押す
百会(ひゃくえ)
全身の気の流れをつかさどり、自律神経と直結するツボが百会。左右の耳の上端を頭のてっぺんで結び、眉間の延長線上と交わる部分。ここを指で5秒押したら、離して5秒休む。これを5回。
合谷(ごうこく)
うつやストレスのほか、頭痛、めまい、眼精疲労、冷え性、肩こりなど様々な不調に効くツボ。手の甲の親指と人さし指の間にある。指で5秒押したら離して5秒休む。これを5回。
《To Do 7》早口言葉を言ってみる
「巣ごもり生活で衰えているのが舌の筋肉。これを簡単に鍛えられるのが早口言葉です。早口言葉を言うと、舌の筋肉が鍛えられ、自然と口呼吸から鼻呼吸になって深く息を吸えるようになるので副交感神経が優位になり、自律神経が整います。口を大きく開けて口角が上がると、セロトニンの分泌も促進して心がポジティブに。上記の早口言葉が特におすすめ」
《To Do 8》ウイスキー体操
「マスクをしていると無表情になるので、舌筋だけでなく表情筋も衰えますが、すると顔全体のたるみやシワも招くので、気持ちがますますブルーに。早口言葉とともに、“ウイスキー体操”も実践して、表情筋を鍛えましょう。顔全体の表情筋をできるだけ大きく動かすのがコツ」
【食】
心の状態と食は深く関わっていて、普段の食べ方や、なにげなくとっている食べ物が、メンタルの不調の原因になっている場合も。巣ごもりうつっぽいなと感じている人は、以下のような食品や食べ方を取り入れてみるのもおすすめ。
《To Do 9》ヨーグルトファーストで腸内良好
「糖質が多いものを最初に食べると血糖値が急上昇し、しばらくすると今度は急激に下がり、この乱高下が自律神経を乱す原因に。これを防ぐため食事の最初にヨーグルトを食べましょう。主成分のたんぱく質が胃腸の働きをゆるやかにし、その後に食べる糖質の吸収を抑えるので血糖値の上昇がゆるやかに」
《To Do 10》うつ予防にはイワシ缶
「青魚に含まれるEPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸には、脳を元気にしてうつを防ぐ効果があります。ただ、オメガ3系脂肪酸は熱に弱く、酸化しやすいので、調理に使うのは難しいのが難点。そこでおすすめは、オメガ3系脂肪酸を新鮮な状態でとれる青魚の缶詰。中でもEPAが豊富で、心の栄養になるビタミンB群や鉄、亜鉛も多いイワシの缶詰が最強」
《To Do 11》夕食後にルイボスティーを
「イライラしたときにいいのがルイボスティー。カルシウムなど多種類のミネラルが含まれ、リラックス効果が高いのが特徴。ノンカフェインなので、夜に副交感神経を優位にしてリラックスしたいときに最適。コーヒーや緑茶などはカフェインが多く、交感神経を優位にするので夜は避けましょう」
《To Do 12》お米抜きはNG
「在宅太りを解消しようと、糖質制限をしている人もいるかもしれませんが、極端に抜くのはNG。お米などの主食を減らしすぎると、脳や体がエネルギー不足になり、イライラや疲労感を招き、巣ごもりうつの要因にも。血糖値が急上昇しにくい玄米や雑穀米に切り替えて、適度にとるのが正解」
《To Do 13》食事の回数は減らさない
「次の食事までの間隔が長いと、血糖値は下がり続け、次に食べたとき大食いや早食いをしてしまい、血糖値の乱高下を招きます。これが肥満はもちろんうつの原因にも。一日の摂取カロリーは変えずに食事回数を一日3回以上、理想的には5回にすると血糖値が安定し、うつ予防に」
《To Do 14》ながら食べは避ける
「パソコンやスマホを見ながら食事をする人もいると思いますが、余裕がない食事は交感神経を高めて、その後、胃で消化が始まるとすぐ副交感神経が優位になるため、自律神経が振り回されてバランスが乱れます。食事は集中してゆっくりと余裕をもって食べることが大切」
【体】
巣ごもり生活で運動不足になっている人が多いと思うが、運動不足は、自律神経の乱れや、ホルモンバランスの乱れ、睡眠障害、集中力の低下を引き起こし、うつや情緒不安定の原因に。スクワットなど手軽にできる運動を取り入れて。
《To Do 15》スクワットで“デカ筋”をトレーニング
「適度な運動をすると筋肉から、免疫の活性化など様々な健康効果のある20種類以上のホルモン=マイオカインが分泌されます。マイオカインは運動によるうつ改善効果に関わっている可能性も大。マイオカインは筋肉量が多いほど多く分泌されます。スクワットなら、お尻や太ももなど下半身の大きな筋肉=デカ筋をまとめて鍛えられておすすめ」
基本のスクワット
両脚を肩幅の1.5倍に開いて立ち、左右の腕は胸の前で重ねる。つま先を少し開き、重心は両第四指に。
《1》骨盤を前に傾けながらお尻を垂直に下げる
骨盤を前に傾けながら、お尻を垂直に下げ、両ひざは足の小指のほうに向ける。背すじは丸めないこと。
《2》骨盤を後ろに傾けながらひざを伸ばしきらずに立つ
次に、骨盤を後ろに傾けながら、ひざを伸ばしきらずに立ち、お腹に力を入れて、お尻をギュッと締める。できる回数から始めて、徐々に回数を増やして。
座ったままできるスクワット
《1》お尻を後ろにプリッと突き出す
座ったままスクワットで、骨盤を前傾、後傾させるだけでもお尻や股関節の奥の筋肉を刺激できる。椅子に座り、両脚を肩幅の1.5倍に開き、骨盤を前に傾けてお尻を後ろに突き出す。
《2》背中と肩の力を抜いて腰を後ろに傾ける
次に背中と肩の力を抜き、骨盤を後ろに傾ける。できる回数から始めて、徐々に回数を増やして。
みやま市工藤内科
工藤孝文先生
ダイエットや、体と心のプチ不調の改善に効果的なセルフケアのアドバイスが人気で、メディアでひっぱりだこ。著書も多数。
『かからない大百科 女性専門の疲労外来 ドクターが教える本当に正しい予防対策61』
工藤孝文 ワニブックス 1430円
撮影/山崎ユミ モデル/臼居実優(スーパーバイラーズ) 取材・原文/和田美穂 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2021年8月号掲載